遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級・示談
遷延性意識障害の条件
意識不明のまま長期間昏睡状態にある患者を、自発的に活動できないことから遷延性意識障害(植物状態)の患者ということがあります。医学上、次の全ての条件を満たすものが遷延性意識障害にあたるとされています。
(1)自力で移動できない
(2)自力で食事飲物の摂取ができない
(3)尿糞が失禁状態にある
(4)眼で物の動きを追ってもそれが何であるか確認できない
(5)「手を握れ」「口を開けろ」などの簡単な命令には応じることはあっても、それ以上の意思の疎通は不可能
(6)声は出しても意味のあることはいえない
(7)以上の状態が3ヶ月以上続いている
後遺障害等級
通常、遷延性意識障害(植物状態)の患者に対しては、通常は、別表第1、1級1号の後遺障害等級認定がなされます。
遷延性意識障害(植物状態)の認定作業においては、高次CT画像やMRI画像及び医師作成の後遺障害診断書、頭部外傷後の意識障害についての所見、脳外傷による精神症状等についての具体的な所見、日常生活状況報告表などの書面に基づき判断されます。
示談交渉
後遺障害等級が1級や2級の場合は、労働能力喪失率は100%とされているので、通常、逸失利益は高額になります。
また、後遺症慰謝料も高額となるため、一般的に裁判基準と保険会社の提示額に大きく開きが出ることになります。そのため、交渉による示談では解決がつかず、訴訟に持ち込まれることが多く見られます。
また、遷延性意識障害(植物状態)の患者は、感染症にかかりやすく平均余命まで生存できないケースもあります。
そして、交渉過程において被害者が亡くなってしまうと、死亡以後の将来介護費を請求することができなくなってしまいます。
そのため、交通事故により被害者が遷延性意識障害(植物状態)となってしまったときには、早急に成年後見申立の手続きを行うとともに、訴訟提起を前提に証拠収集を行う必要があるでしょう。