後遺症(後遺障害)が残ると、交通事故損害賠償はどうなるか

後遺症(後遺障害)が交通事故と相当因果関係にある場合には、その損害は、加害者側(自動車保有者、使用者等運転者以外で責任を負担する者を含む)が賠償責任を負担します。

後遺症(後遺障害)は、治らない状態ですから、その損害は、1.精神的な損害と、2.財産的な損害、に分類されます。精神的損害が「後遺障害慰謝料」というもので、財産的損害が「逸失利益」というものです。

1. 後遺障害慰謝料
第1級 2,800万円 第2級 2,370万円
第3級 1,990万円 第4級 1,670万円
第5級 1,400万円 第6級 1,180万円
第7級 1,000万円 第8級 830万円
第9級 690万円 第10級 550万円
第11級 420万円 第12級 290万円
第13級 180万円 第14級 110万円

後遺症が残った場合には、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)が自賠責保険における後遺障害等級認定を行います。後遺障害等級は、1級から14級まで分けられており、どの程度の重い後遺症が残ったかを判断する基準となるものです。具体的には、「自賠責損害調査事務所」が調査にあたります。

この調査の結果、後遺症(後遺障害)の等級が認定された場合には、入通院慰謝料とは別に後遺症(後遺障害)慰謝料が発生します。裁判基準では、右の基準が一応の基準とされています。

2. 逸失利益

後遺症(後遺障害)が残った場合には、精神的損害(慰謝料)だけで、損害を賄うことはできません。脳に障害が残ったり、指を欠損したり等後遺症(後遺障害)が残った場合には、労働能力が喪失し、「交通事故がなかったら、働いて稼げたであろう財産」を稼げなくなってしまいます。そこで、それが損害となり、損害賠償の項目になります。

逸失利益は、後遺障害が残った場合に、当該後遺障害が残ることにより減少した収入額のことです(「差額説」といいます)。この考え方によると、後遺障害が残ったにもかかわらず、減収がない場合には損害がないことになり、逸失利益は認められないことになります。しかし、判例では、減収がないことが「本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど」「特段の事情」がある場合には、現実の減収がなくても逸失利益を認める可能性を残しています。

逸失利益の計算方法は次のとおりです。

事故前の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息の控除、つまり、将来的に得られたであろう損害金を、今得ることになるので、将来にわたる利息を控除するのが公平であるという考え方です。)

<症状固定時に18歳未満の未就労者>

基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数 - 18歳に達するまでのライプニッツ係数)

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自賠責等級認定

自賠責の等級認定は、自賠責保険の適用のために認定されるものです。しかし、実際の裁判実務でも、自賠責等級認定が出ている場合には、 相手方からそれを覆す立証がなされない限り、その認定等級に従って認定されています。したがって、自賠責の等級認定は、 損害賠償額を大きく左右するものであり、まず、この等級認定に最大限の努力をしなければならないことになります。

自動車損害賠償保障法施行令では、後遺障害等級を次のように分類しています。身体の解剖学的な区分に従って系列に分類され、その上で、 身体の部位の機能、特徴によって、さらに系列が細分化されることになります。そして、障害の軽重によって序列が分類されています。

後遺障害別等級表・労働能力喪失率・平成18年4月1日以降発生の事故

<自賠法別表第1>

等級 後遺障害 自賠責

保険金額

労働能力

喪失率

第1級 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 4,000万円 100/100
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 3,000万円 100/100
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

<備考>
各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害となる。

(注)既に身体障害がのあった者がさらに同一部位について障害の程度を加重したときは、 加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった障害の等級に応ずる保険金額を控除した金額を保険金額とする。

<自賠法別表第2>

等級 後遺障害 自賠責

保険金額

労働能力

喪失率

第1級 1. 両眼が失明したもの 3,000万円 100/100
2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
4. 両上肢の用を全廃したもの
5. 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
6. 両下肢の用を全廃したもの
第2級 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 2,590万円 100/100
2. 両眼の視力が0.02以下になったもの
3. 両上肢を手関節以上で失ったもの
4. 両下肢を足関節以上で失ったもの
第3級 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 2,219万円 100/100
2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5. 両手の手指の全部を失ったもの
第4級 1. 両眼の視力が0.06以下になったもの 1,889万円 92/100
2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3. 両耳の聴力を全く失ったもの
4. 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5. 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
6. 両手の手指の全部の用を廃したもの
7. 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
第5級 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 1,574万円 79/100
2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4. 1上肢を手関節以上で失ったもの
5. 1下肢を足関節以上で失ったもの
6. 1上肢の用を全廃したもの
7. 1下肢の用を全廃したもの
8. 両足の足指の全部を失ったもの
第6級 1. 両眼の視力が0.1以下になったもの 1,296万円 67/100
2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4. 1耳の聴力を全く失い、 他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6. 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
7. 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8. 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
第7級 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 1,051万円 56/100
2. 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
3. 1耳の聴力を全く失い、 他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6. 1手のおや指を含み3指以上の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
7. 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
8. 1足をリスフラン関節以上で失ったもの
9. 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10. 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11. 両足の足指の全部の用を廃したもの
12. 女子の外貌に著しい醜状を残すもの
13. 両側の睾丸を失ったもの
第8級 1. 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの 819万円 45/100
2. 脊柱に運動障害を残すもの
3. 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
4. 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
5. 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
6. 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
7. 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
8. 1上肢に偽関節を残すもの
9. 1下肢に偽関節を残すもの
10. 1足の足指の全部を失ったもの
第9級 1. 両眼の視力が0.6以下になったもの 616万円 35/100
2. 1眼の視力が0.06以下になったもの
3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
8. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、 他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
9. 1耳の聴力を全く失ったもの
10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
13. 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
14. 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
15. 1足の足指の全部の用を廃したもの
16. 生殖器に著しい障害を残すもの
第10級 1. 1眼の視力が0.1以下になったもの 461万円 27/100
2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3.. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4. 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
6. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
7. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
8. 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
9. 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
10. 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
11. 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 331万円 20/100
2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3. 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4. 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6. 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7. 脊柱に変形を残すもの
8. 1手のなか指若しくはくすり指を失ったもの又は1手のひとさし指の用を廃したもの
9. 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
10. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第12級 1. 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 224万円 14/100
2. 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3. 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4. 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6. 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7. 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8. 長管骨に変形を残すもの
9. 1手のこ指を失ったもの
10. 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
11. 1足の第2の足指を失ったもの、 第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12. 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13. 局部に頑固な神経症状を残すもの
14. 男子の外貌に著しい醜状を残すもの
15. 女子の外貌に醜状を残すもの
第13級 1. 1眼の視力が0.6以下になったもの 139万円 9/100
2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3. 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5. 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6. 1手のこ指の用を廃したもの
7. 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
8. 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
9. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
10. 1足の第2の足指の用を廃したもの、 第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級 1. 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 75万円 5/100
2. 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3. 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6. 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
7. 1手のおや指以外の手指の遠位指節関節を屈伸することができなくなったもの
8. 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
9. 局部に神経症状を残すもの
10. 男子の外貌に醜状を残すもの

<備考>

  1. 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。
  2. 手指を失ったものとは、おや指は指関節、その他の手指は第一指関節以上を失ったものをいう。
  3. 手指を失ったものとは、おや指は指関節、その他の手指は第一指関節以上を失ったものをいう。
  4. 手指の用を廃したものとは、手指の末節の半分以上を失い、又は、中手指節関節もしくは第一指関節(おや指にあっては、指関節) に著しい運動障害を残すものをいう。
  5. 足指を失ったものとは、その全部を失ったものをいう。
  6. 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節の半分以上、 その他の足指は末関節以上を失ったもの又は中足指節関節もしくは第一指関節(第一の足指にあっては、指関節) に著しい運動障害を残すものをいう。
  7. 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

(注1):身体障害が2以上あるときは、重い方の身体障害の該当する等級による。しかし、 下記に掲げる場合においては等級を次の通り繰り上げる。

(1) 第13級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の身体障害1級を繰り上げる。ただし、 それぞれの後遺障害に該当する保険金額の合算額が繰り上げ後の後遺障害の保険金額を下回るときは全記合算額を採用する。

(2) 第8級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の身体障害2級を繰り上げる。

(3) 第5級以上に該当する身体障害が2以上あるときは、重い方の身体障害3級を繰り上げる。

(注2):既に身体障害がのあった者がさらに同一部位について障害の程度を加重したときは、 加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった障害の等級に応ずる保険金額を控除した金額を保険金額とする。

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異議申立

認定された後遺症(後遺障害)等級認定に不服があるときは、損害保険料率算出機構に対し、何度でも異議申立をすることができます。 一旦後遺症(後遺障害)等級認定がなされている場合には、それを覆す立証ができない限り、 裁判になっても認定どおりの等級が認定されてしまいます。したがって、認定等級に不服があり、それを覆す資料があるのであれば、 訴訟提起の前の段階で、異議申立をすべきです。訴訟になると、自賠責の手続が止めてしまうのが通常なので、 訴訟前に異議申立をしておくことが必要です。

後遺症(後遺障害)等級認定結果は、被害者請求の場合は自賠責保険会社から直接送られてきますし、一括払事前認定の場合には、 任意保険会社を経由して送られてきます。等級の結果の他に、「認定の理由」が必ず送られてきますので、それをよく読み、間違いがないか、 誤った判断がなされていないかどうかを検討し、異議申立をするかどうかを判断することになります。

被害者請求の場合には、異議申立書を自賠責保険会社に提出することになります。一括払い事前認定の場合には、 任意保険会社宛に異議申立書を提出します。ただし、一括払い事前認定の手続を取っていても、 異議申立の段階で被害者請求に切り換えて異議申立をすることもできますので、その方が直接やり取りができるので良いでしょう。

後遺症(後遺障害)等級認定に異議申立がされると、自賠責保険審査会において審査が行われ、結果は改めて通知されます。

なお、損害保険料率算出機構に対する異議申立の他、自賠責保険紛争処理機構に対する紛争処理申請(異議申立)をすることもできます。 ただし、これは最後にした方が良いと思われます。なぜなら、損害保険料率算出機構は、事実上、 紛争処理機構の出した判断に従う扱いをしていますので、 再度損害保険料率算出機構に異議申立をしても同じ結論になってしまう可能性が高いこと、紛争処理機構は、 一度出した判断に対する異議申立は受け付けないからです。したがって、まずは、異議を損害保険料率算出機構に出し続けることになります。

もちろん、異議申立をする際には、更に有効な資料を収集した上で行うことはもちろんです。

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後遺症と症状固定

交通事故で傷害を負い、入通院を続けていると、治療が完了し、完治するときがきます。 この時点で損害額が確定し、示談ないし訴訟の手続に入っていくことになります。ところが、治療もむなしく完治せず、 後遺障害が残ってしまうことがあります。この場合は、どういう手続になるのでしょうか。

 

後遺障害とは、 自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令2条によると、「傷害がなおったとき身体に存する傷害をいう」と規定されています。 「なおったとき」と言っても、実際にはなおらないから後遺障害というのです。したがって、一般には、この「なおったとき」というのを 「症状固定」と言います。そして、この認定は、労災基準に準拠しておいます。

 

労災基準には、 もう少し詳しく後遺障害について説明がなされています。労災基準では、「症状固定」について 「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても、その効果が期待し得ない状態 (療養の終了)で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう。」 と規定されています。簡単に言うと、「これ以上治療を継続しても、治療効果が上がらなくなった状態」のことです。

 

主治医と相談し、 このような状態になったと判断されれば、「症状固定」とします。症状固定となると、それ以上治療を継続しても、 治療効果が上がらないわけですから、その後治療を継続したとしても、原則として治療費は損害賠償の範囲に含まれません (もちろん症状が固定しても医学上治療が必要な場合は含まれます。)。

 

また、 症状固定後の休業損害は、後で説明する後遺障害逸失利益に含まれて計算されるので、休業損害は発生しないことになります。つまり、 症状固定により、交通事故によって被った損害が確定し、示談ないし訴訟手続に移行することになるのです。

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ライプニッツ係数表(0歳~30歳)

 

就労可能年数とライプニッツ係数表(0歳~30歳)

 

 

年令

()

幼児・児童・生徒・学生・

右欄以外の働く意思と

能力を有する者

有職者

就労可能

年数()

係数

就労可能

年数()

係数

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

49

49

49

49

49

49

49

49

49

49

49

7.549

7.927

8.323

8.739

9.176

9.635

10.117

10.623

11.154

11.712

12.297

67

66

65

64

63

62

61

60

59

58

57

19.239

19.201

19.161

19.119

19.075

19.029

18.980

18.929

18.876

18.820

18.761

 

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

49

49

49

49

49

49

49

49

48

47

12.912

13.558

14.236

14.947

15.695

16.480

17.304

18.169

18.077

17.981

56

55

54

53

52

51

50

8.699

18.633

18.565

18.493

18.418

18.339

18.256

 

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

46

45

44

43

42

41

40

39

38

37

17.880

17.774

17.663

17.546

17.423

17.294

17.159

17.017

16.868

16.711

 

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ライプニッツ係数表(31歳~60歳)

 就労可能年数とライプニッツ係数表

 

年令

()

就労可能

年数()

係数

 

31

32

33

34

35

36

37

38

39

40

36

35

34

33

32

31

30

29

28

27

16.547

16.374

16.193

16.003

15.803

15.593

15.372

15.141

14.898

14.643

 

41

42

43

44

45

46

47

48

49

50

26

25

24

23

22

21

20

19

18

17

14.375

14.094

13.799

13.489

13.163

12.821

12.462

12.085

11.690

11.274

 

51

52

53

54

55

56

57

58

59

60

16

15

14

13

13

12

12

11

11

11

10.838

10.380

9.899

9.394

9.394

8.863

8.863

8.306

8.306

8.306

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ライプニッツ係数表(61歳~100歳)

 就労可能年数とライプニッツ係数表

 

年令

()

就労可能

年数()

係数

 

 

61

62

63

64

65

66

67

68

69

70

10

10

9

9

9

8

8

8

7

7

7.722

7.722

7.108

7.108

7.108

6.463

6.463

6.463

5.786

5.786

  

71

72

73

74

75

76

77

78

79

80

7

6

6

6

5

5

5

5

4

4

5.786

5.076

5.076

5.076

4.329

4.329

4.329

4.329

3.546

3.546

 

81

82

83

84

85

86

87

88

89

90

4

4

3

3

3

3

3

3

2

2

3.546

3.546

2.723

2.723

2.723

2.723

2.723

2.723

1.859

1.859

  

91

92

93

94

95

96

97

98

99

100

2

2

2

2

2

2

2

2

2

1

1.859

1.859

1.859

1.859

1.859

1.859

1.859

1.859

1.859

0.952

 

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RSDとは

 1 RSD(CRPS type)とは

 

() 定義・ 概念の理解

CRPS=complex regional pain syndrome、 「複合性局所疼痛症候群」

・ typeⅠ 神経損傷のないもの→従来のRSD=reflex sympathetic dystrophy 「反射性交感神経性ジストロフィー」

交感神経の異常な反射亢進を基盤とする疼痛、膨張、関節拘縮、 皮膚変化を主徴(4主徴)とする病態

・ typeⅡ 神経損傷に起因するもの→ 従来のカウザルギー(灼熱痛)

 

() 発生機序

<正常>

交通事故→疼痛→交感神経節刺激→血管収縮→急性期を過ぎると交感神経反射消退

<異常>

交通事故→疼痛→交感神経節刺激→血管収縮→急性期を過ぎても交感神経反射消退しない、 異常な緊張状態→血管収縮→虚血→疼痛→交感神経節刺激… の悪循環

⇒・これにより、より強い持続的な疼痛刺激が生じます

 ・循環不全により浮腫が起きたり、皮膚温変化、不動による拘縮が生じます

 

2 診断方法(IASP、 Kozin Gibbonsの診断基準)  

 

・現在は、Gibbons(ギボンズ)の診断基準がよく用いられているとされています。

 

3 後遺障害等級(自賠責)

 

12

通常の労務に服することができるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの

9

軽易な労務に服することができるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、 就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの

7

軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるもの

 

 

※ 症状固定時に()関節拘縮()骨の萎縮()皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3つのいずれの症状(以下 「3要件」 という)健側と比較して明らかに認められる場合に限り、 3要件にかかる所見の程度および関節拘縮の程度を参考にして認定されます。

 

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せき柱及びその他の体幹骨の障害と後遺障害等級

 第1節 せき柱及びその他の体幹骨
 第1  せき柱及びその他の体幹骨の障害と障害等級
 1  せき柱及びその他の体幹骨の障害については、障害等級表上、せき柱の障害に関してはその変形障害及び運動障害について、 また、その他の体幹骨の障害に関しては鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨、骨盤骨の変形障害について、それぞれ次のとおり等級が定められている。
(1) せき柱の障害
  ア 変形障害
 せき柱に著しい変形を残すもの 第6級の4
 せき柱に変形を残すもの 第11級の5
  イ 運動障害
 せき柱に著しい運動障害を残すもの 第6級の4
 せき柱に運動障害を残すもの 第8級の2
(2) その他の体幹骨の障害
 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 第12級の5
2  せき柱を形成する頸椎、胸椎及び腰椎並びに鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨(仙骨を含む。)以外の変形については、 障害等級表上定めがないので、上記の各部位について定められている器質的障害又は機能的障害に係る等級により認定すること。

 注  解剖学上、仙骨及び尾骨はせき柱の一部であるとともに、骨盤骨の一部をなしている。ただし、障害等級表上の 「せき柱」の障害とは、頸部及び体幹の支持機能ないし保持機能及びその運動機能に着目したものであることから、 これらの機能を有していない仙骨及び尾骨については、「せき柱」には含まないものであること。なお、せき柱の運動障害については、 腰仙関節の動きを含めて等級を認定すること。

3  せき柱の運動機能の評価及び測定については、以下によるほか、別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」 (以下「別添」という。)によること。
 

 第2 障害等級認定の基準
 1 せき柱の障害 (1)  せき柱の障害認定の原則
 せき柱のうち、頸椎(頸部)と胸腰椎(胸腰部)とでは主たる機能が異なっている(頸椎は主として頭部の支持機能を、また、 胸腰椎は主として体幹の支持機能を担っている。)ことから、障害等級の認定に当たっては、 原則として頸椎と胸腰椎は異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定すること。
(2) 変形障害
  ア  せき柱の変形障害については、「せき柱に著しい変形を残すもの」、「せき柱に変形を残すもの」に加え、 新たに第8級に準ずる障害として取り扱う「せき柱に中程度の変形を残すもの」の3段階で認定すること。
  イ  「せき柱に著しい変形を残すもの」及び「せき柱に中程度の変形を残すもの」は、 せき柱の後彎又は側彎の程度等により等級を認定すること。この場合、せき柱の後彎の程度は、せき椎圧迫骨折、脱臼等(以下、 「せき椎圧迫骨折等」という。)により前方椎体高が減少した場合に、 減少した前方椎体高と当該椎体の後方椎体高の高さを比較することにより判定すること。また、せき柱の側彎は、 コブ法による側彎度で判定すること。
 なお、後彎又は側彎が頸椎から胸腰部にまたがって生じている場合には、上記(1)にかかわらず、後彎については、 前方椎体高が減少したすべてのせき椎の前方椎体高の減少の程度により、また、側彎については、その全体の角度により判定すること。
  
注  コブ法とは、下図のとおり、エックス線写真により、 せき柱のカーブの頭側及び尾側においてそれぞれ水平面から最も傾いているせき椎を求め、 頭側で最も傾いているせき椎の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いているせき椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度) を測定する方法である。

図


  ウ  「せき柱に著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真、CT画像又はMRI画像(以下「エックス線写真等」という。)により、 せき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  せき椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。この場合、 「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、 減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上であるものをいうこと。
 
例  3個の椎体の前方椎体高が減少した場合で、この3個の椎体の後方椎体高の合計が12センチメートル、 減少後の前方椎体高の合計が7センチメートルであるときは、両者の差である5センチメートルが、 3個の椎体の後方椎体高の1個当たりの高さである4センチメートル以上となっているので、第6級の4に該当する。
 
  (イ)  せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、 コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。この場合、「前方椎体高が減少」したとは、 減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50% 以上であるものをいうこと。
 
 例  2個の椎体の前方椎体高が減少した場合で、この2個の椎体の後方椎体高の合計が8センチメートル、 減少後の前方椎体高の合計が5.5センチメートルであるときは、両者の差である2.5センチメートルが、 2個の椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%である2センチメートル以上となっているので、 コブ法による側彎度が50度以上の側彎を伴うものは、第6級の4に該当する。
 
  エ  「せき柱に中程度の変形を残すもの」とは、エックス線写真等によりせき椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、 次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  上記ウの(イ)に該当する後彎が生じているもの
  (イ)  コブ法による側彎度が50度以上であるもの
  (ウ)  環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む。)により、次のいずれかに該当するもの。このうち、 a及びbについては、軸椎以下のせき柱を可動させずに(当該被災者にとっての自然な肢位で)、回旋位又は屈曲・伸展位の角度を測定すること。
   a  60度以上の回旋位となっているもの
   b  50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
   c  側屈位となっており、エックス線写真等により、 矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
 
 注  環椎又は軸椎は、頸椎全体による可動範囲の相当の割合を担っている。そのため、 環椎又は軸椎がせき椎圧迫骨折等により変形して固定となり、又は環椎と軸椎との固定術が行われたために、 環椎又は軸椎の可動性がほとんど失われると、頸椎全体の可動範囲も大きく制限され、上記に該当する変形・固定となると、「せき柱の運動障害 (第8級の2)」にも該当するケースがほとんどである。
 なお、環椎又は軸椎が変形・固定していることについては、最大矯正位のエックス線写真等で最もよく確認できる。
 
  オ  「せき柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  (イ)  せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く。)
  (ウ)  3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
(3) 運動障害
  ア  エックス線写真等では、せき椎圧迫骨折等又はせき椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、 疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状として等級を認定すること。
  イ  「せき柱に著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいう。
  (ア)  頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  (イ)  頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎固定術が行われたもの
  (ウ)  項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  ウ  「せき柱に運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
   a  頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
   b  頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの
   c  項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  (イ)  頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの
2 その他の体幹骨の変形障害
(1)  「鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形障害を残すもの」とは、裸体となったとき、変形(欠損を含む) が明らかにわかる程度のものをいう。
 したがって、その変形がエックス線写真によって、はじめて発見し得る程度のものは、これに該当しないものであること。
(2)  ろく骨の変形は、その本数、程度、部位等に関係なく、ろく骨全体を一括して1つの障害として取り扱うこととし、 ろく軟骨についても、ろく骨に準じて取り扱うこと。
 また、骨盤骨には、仙骨を含め、尾骨は除くものと取り扱うこと。
 

 第3 併合、準用、加重
 1  併合
 せき柱及びその他の体幹骨の障害で次のごとく系列を異にする2以上の障害が存する場合は、 労災則第14条第2項及び第3項により併合し等級を認定すること。
 ただし、骨盤骨の変形とこれに伴う下肢の短縮が存する場合は、いずれか上位の等級により認定すること。
  ア  せき柱の変形障害又は運動障害とその他の体幹骨の変形が存する場合
  イ  骨盤骨の高度の変形(転位)によって股関節の運動障害(例えば中心性脱臼)が生じた場合
  ウ  鎖骨の著しい変形と肩関節の運動障害が存する場合
2  準用
 障害等級表上に、その属する系列はあるが、該当する障害がない場合は、次により等級を認定すること。
(1) 併合の方法を用いて準用等級を定めるもの
  ア  せき柱の頸部と胸腰部のそれぞれに障害がある場合は、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

 例1  頸椎(環軸椎)が60度回旋位(準用第8級)で、胸腰椎にせき椎固定術が行われた(第11級の5)場合は、 準用第7級とする。
2  頸部の可動域が1/2以下に制限され、胸腰椎にコブ法による側彎度が50度以上の側彎又は準用第8級の後彎を残す場合は、 併合の方法を用いると第6級となるが、第6級には達しないので準用第7級とする。
3  頸部及び胸腰部の可動域がそれぞれ1/2以下に制限された場合についても、併合の方法を用いると第6級となるが、 第6級には達しないので、準用第7級とする。
4  頸部の可動域が1/2以下に制限され、胸腰椎に第6級の4に該当する後彎を残す場合は、準用第6級とする。
 
 なお、頸椎及び胸腰椎にまたがる準用第8級の側彎又は後彎を残し、さらに頸部又は胸腰部に第8級又は第11級の障害を残す場合は、 準用第7級とする。
 また、せき柱の頸部に複数の障害がある場合は、いずれか上位の等級で認定する。胸腰部に複数の障害がある場合も同様とする。
 
 例  腰椎に圧迫骨折による変形を残す(第11級の5)とともに腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限された (第8級の2)場合は、第8級の2とする。

  イ  その他の体幹骨の2以上の骨にそれぞれ著しい変形が存する場合は、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

 例  鎖骨及び肩こう骨に著しい変形を残すものは、準用第11級とする。
 
(2)  他の障害の等級を準用するもの
 荷重機能の障害については、その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、 常に硬性補装具を必要とするものを第6級、頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、 常に硬性補装具を必要とするものを第8級に準ずる運動障害としてそれぞれ取り扱うこと。

 注  荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合とは、せき椎圧迫骨折・脱臼、 せき柱を支える筋肉の麻痺又は項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存し、 それらがエックス線写真等により確認できる場合をいうものであること。
 
 
3  加重
 せき柱について障害の程度を加重した場合は、その限度で障害補償を行うこと。

 例  胸腰椎にせき椎圧迫骨折を残していた(第11級の5)者が、さらに頸椎のせき椎固定術を行った(第11級の5) もの
 
 
4  その他
 せき髄損傷による神経系統の障害を伴うせき柱の障害については、神経系統の障害として総合的に認定することとし、また、 圧迫骨折等によるせき柱の変形に伴う受傷部位の疼痛については、そのいずれか上位の等級により認定すること。
 
以上、厚生労働省労働基準局長「平成16年6月4日付基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨、 上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」別紙より

 

 

 

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上肢及び手指に関する後遺障害等級

第1 上肢及び手指の障害と障害等級
 1  上肢及び手指の障害については、障害等級表上、上肢の障害として欠損障害、機能障害及び変形障害について、また、 手指の障害として欠損障害及び機能障害について、それぞれ次のとおり等級が定められている。
(1) 上肢の障害
  ア 欠損障害
 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 第1級の6
 両上肢を手関節以上で失ったもの 第2級の3
 1上肢をひじ関節以上で失ったもの 第4級の4
 1上肢を手関節以上で失ったもの 第5級の2
  イ 機能障害
 両上肢の用を全廃したもの 第1級の7
 1上肢の用を全廃したもの 第5級の4
 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 第6級の5
 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 第8級の6
 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 第10級の9
 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 第12級の6
  ウ 変形障害
 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 第7級の9
 1上肢に偽関節を残すもの 第8級の8
 長管骨に変形を残すもの 第12級の8
(2) 手指の障害
  ア 欠損障害
 両手の手指の全部を失ったもの 第3級の5
 1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの 第6級の7
 1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの 第7級の6
 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの 第8級の3
 1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの 第9級の8
 1手の示指、中指又は環指を失ったもの 第11級の6
 1手の小指を失ったもの 第12級の8の2
 1手の母指の指骨の一部を失ったもの 第13級の5
 1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 第14級の6
  イ 機能障害
 両手の手指の全部の用を廃したもの 第4級の6
 1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの 第7級の7
 1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの 第8級の4
 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの 第9級の9
 1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの 第10級の6
 1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの 第12級の9
 1手の小指の用を廃したもの 第13級の4
 1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 第14級の7
2  骨折部にキュンチャーを装着し、あるいは金属釘を用いたため、それが機能障害の原因となる場合は、 当該キュンチャー等の除去を待って等級の認定を行うこと。
 なお、当該キュンチャー等が機能障害の原因とならない場合は、創面治ゆをもって等級の認定を行うこと。
 また、廃用性の機能障害(たとえば、ギプスによって患部を固定していたために、治ゆ後に関節に機能障害を存するもの)については、 将来における障害の程度の軽減を考慮し等級の認定を行うこと。
3  上肢及び手指の運動機能の評価及び測定については、以下によるほか、別添によること。
 

 第2 障害等級認定の基準
 1 上肢の障害
(1) 欠損障害
  ア  「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
  (イ)  肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
  (ウ)  ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの
  イ  「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
  (イ)  手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの
(2) 機能障害
  ア  「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節及び手関節)のすべてが強直し、かつ、 手指の全部の用を廃したものをいう。
 上腕神経叢の完全麻痺もこれに含まれる。
  イ  「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  関節が強直したもの
 ただし、肩関節にあっては、肩甲上腕関節がゆ合し骨性強直していることがエックス線写真により確認できるものを含む。
  
 注  肩関節は、肩甲上腕関節が強直しても、肩甲骨が胸郭の上を動くことによりある程度屈曲又は外転が可能であるため、 別添に基づく肩関節の可動域の測定結果にかかわらず、上記のとおり取り扱うものであること。
 
  (イ)  関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
 「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいう。 この場合の「10%程度以下」とは、別添の第1の2の(1)の「関節の強直」の場合と同様に判断すること。
  (ウ)  人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/ 2以下に制限されているもの
  ウ  「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
  (イ)  人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、上記イの(ウ)以外のもの
  エ  「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいう。
(3) 変形障害
  ア  「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいう。
  (ア)  上腕骨の骨幹部又は骨幹端部(以下「骨幹部等」という。)にゆ合不全を残すもの
  (イ)  橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
  イ  「偽関節を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記アの(ア)以外のもの
  (イ)  橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記アの(イ)以外のもの
  (ウ)  橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの
  
注  偽関節とは、一般に、骨折等による骨片間のゆ合機転が止まって異常可動を示すものをいう。
 しかしながら、近年においては、例えば、回内・回外運動の改善や手関節の安定を図るため、尺骨の一部を切り離し、 尺骨の遠位端を橈骨に固定したり、切離した骨を尺骨の遠位端及び橈骨に固定する「カパンジー法」と呼ばれる手術が行われており、 これらについても、従来の認定基準では、障害の改善を図る手術であるにもかかわらず、手術後は、より重度の障害である「偽関節を残すもの」 に該当するものとなっていた。このため、本認定基準においては、カパンジー法による尺骨の一部離断を含め、 骨片間のゆ合機転が止まって異常可動を示す状態を「ゆ合不全」とした上で、 長管骨の保持性や支持性への影響の程度に応じて等級を認定することとしたものである。
 
  ウ  上肢の「長管骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
 なお、同一の長管骨に以下の(ア)から(カ)の障害を複数残す場合でも、第12級の8と認定すること。
  (ア)  次のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正ゆ合したもの) 以上のもの
   a  上腕骨に変形を残すもの
   b  橈骨及び尺骨の両方に変形を残すもの(ただし、橈骨又は尺骨のいずれか一方のみの変形であっても、 その程度が著しいものはこれに該当する。)
  (イ)  上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部にゆ合不全を残すもの
  (ウ)  橈骨又は尺骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、硬性補装具を必要としないもの
  (エ)  上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
  (オ)  上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に、又は橈骨若しくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/ 2以下に減少したもの
  (カ)  上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形ゆ合しているもの
 この場合、50度以上回旋変形ゆ合していることは、次のいずれにも該当することを確認することによって判定すること。
   a  外旋変形ゆ合にあっては肩関節の内旋が50度を超えて可動できないこと、また、 内旋変形ゆ合にあっては肩関節の外旋が10度を超えて可動できないこと
   b  エックス線写真等により、上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形ゆ合が明らかに認められること
   
 注  上腕骨に一定以上の回旋変形ゆ合が存する場合には、自然肢位からひじ関節90度で、正面から両上肢(両上腕骨の全長) を撮影したエックス線写真等により、左右の上腕骨の骨頭及び頸部が異なる形状となっていることが確認できる。
 
  なお、長管骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえ、 その部位に肥厚が生じていても長管骨の変形としては取り扱わないこと。
2 手指の障害
(1) 欠損障害
  ア  「手指を失ったものとは、母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったもの」(障害等級表の備考第2号) とされており、具体的には、次の場合がこれに該当するものであること。
  (ア)  手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
  (イ)  近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)において、基節骨と中節骨とを離断したもの
  イ  「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む) ことがエックス線写真等により確認できるものをいう(後記(2)のアに該当するものを除く。)。
(2) 機能障害
  ア  「手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節 (母指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すもの」(障害等級表の備考第3号)とされており、具体的には、 次の場合がこれに該当するものであること。
  (ア)  手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの。
  (イ)  中手指節関節又は近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの。
  (ウ)  母指については、橈側外転又は掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているものも、「著しい運動障害を残すもの」 に準じて取り扱うこと。
  (エ)  手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」に準じて取り扱うこと。
 このことは、医学的に当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外傷を負った事実を確認するとともに、 筋電計を用いた感覚神経伝道速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認することによって認定すること。
  
 注  感覚の完全脱失とは、表在感覚のみならず深部感覚をも消失したものをいう。
 表在感覚のみならず、深部感覚をも完全に脱失するのは、外傷により感覚神経が断裂した場合に限られる。
 
  イ  「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  遠位指節間関節が強直したもの
  (イ)  屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの
 

 第3 併合、準用、加重、その他
 1 併合
(1)  系列を異にする障害が2以上ある場合には、労災則第14条第2項及び第3項により併合して等級を認定すること。

 例1  右上肢を手関節以上で失い(第5級の2)、かつ、左上肢の1関節の用を廃した(第8級の6)場合には、 併合第3級とする。
2  右手の示指を失い(第11級の6)、かつ、左手の示指を失った(第11級の6)場合は、併合第10級とする。
 
  ただし、併合した結果序列を乱すこととなる場合は、直近上位又は直近下位の等級で認定すること。

 例  1上肢を手関節以上で失い(第5級の2)、かつ、同一上肢の上腕骨に第7級の9のゆ合不全を残した場合には、 併合すると第3級となるが、ひじ関節以上の亡失(第4級の4)には達しないので、併合第5級とする。
 
  このように、同一上肢に手関節以上又はひじ関節以上の亡失(第5級の2又は第4級の4)と長管骨の変形障害を残す場合は、 変形障害の程度にかかわらず、前者については併合第5級、後者については併合第4級となるものであること。
(2)  次の場合には、併合によることなく、それぞれに示すところにより等級を定めること。
  ア  組合せ等級が定められている場合
  
 例  左右の上肢の用をともに全廃した場合、右上肢の用を全廃したもの(第5級の4)と左上肢の用を全廃したもの(同前) とを併合するのではなく、障害等級表に定められた「両上肢の用を全廃したもの」(第1級の7)とする。

  イ  通常派生する関係にある場合
  
 例1  橈骨の遠位骨端部のゆ合不全又は欠損(第12級の8)と手関節の著しい機能障害(第10級の9)を残す場合には、 上位の等級である第10級の9と認定する。
2  上腕骨若しくは橈骨及び尺骨の骨折部にゆ合不全又は変形を残すとともに、その部位に疼痛を残す場合には、 いずれか上位の等級によることとなる。
 
2  準用
 障害等級表上に、その属する系列はあるが、該当する障害がない場合は、次により等級を認定すること。
(1)  併合の方法を用いて準用等級を定めるもの
 次の場合には、労災則第14条第4項により、併合の方法を用いて準用等級を定めること。

 例  1上肢の上腕骨に第7級の9のゆ合不全を残し、かつ、同一上肢の橈骨及び尺骨に変形を残した(第12級の8) 場合は、準用第6級とする。
 
  また、1上肢の機能障害と同一上肢の手指の欠損又は機能障害を残す場合、これらはみなし系列であるので、上肢、 手指それぞれ別個に等級を定め、さらにこれらを併合の方法を用いて準用等級を定めること。

例1  1上肢の手関節の機能に障害を残す(第12級の6)とともに、同一上肢の母指の用を廃し(10級の6)、かつ、 中指を亡失した(第11級の6)場合は、手指について併合の方法を用いて準用第9級を定め、さらに、 これと手関節の機能障害とについて併合の方法を用いて準用第8級と認定する。
 
  ただし、併合の方法を用いた結果序列を乱すこととなる場合は、直近上位又は直近下位の等級に認定すること。
  ア  直近下位の等級に認定するもの
 
例1  1上肢の肩関節及びひじ関節の用を廃し(第6級の5)、かつ、同一上肢の母指及び示指の用を廃した(第9級の9)場合は、 併合の方法を用いると第5級となるが、1上肢の用を全廃したもの(第5級の4)には達しないので、準用第6級とする。
 
  イ  直近上位の等級に認定するもの
  
 例  1手の小指を亡失し(第12級の8の2)、かつ、同一手の環指の用を廃した(第12級の9)場合は、 併合の方法を用いると第11級となるが、1手の母指以外の2の手指の用を廃したもの(第10級の6)よりは重く、 1手の母指以外の2の手指を失ったもの(第9級の8)には達しないので、準用第10級とする。
 
  ウ  3大関節のすべてに同一の機能障害を残す場合の取扱い
 1上肢の3大関節の全ての関節の機能に著しい障害を残すものは第8級、 1上肢のすべての関節の機能に障害を残すものは第10級に準ずる障害としてそれぞれ取り扱うこと。
  エ  手関節又はひじ関節以上で亡失した場合の取扱い手関節以上の亡失又はひじ関節以上の亡失と関節の機能障害を残す場合は、 機能障害の程度に関係なく、前者については準用第5級、後者については準用第4級と取り扱うこと。
  
 例1  1上肢を手関節以上で失い(第5級の2)、かつ、同一上肢の肩関節の用を廃した(第8級の6)場合は、 準用第5級とする。
2  1上肢をひじ関節以上で失い(第4級の4)、かつ、同一上肢の肩関節の用を廃した(第8級の8)場合は、準用第4級とする。
 
(2)  他の障害の等級を準用するもの
  ア  前腕の回内・回外については、その可動域が健側の1/4以下に制限されているものを第10級、1/ 2以下に制限されているものを第12級に準ずる関節の機能障害としてそれぞれ取り扱うこと。
 なお、回内・回外の可動域制限と同一上肢の関節の機能障害を残す場合は、併合の方法を用いて準用等級を定めること。ただし、 手関節部又はひじ関節部の骨折等により、手関節又はひじ関節の機能障害と回内・回外の可動域制限を残す場合は、 いずれか上位の等級で認定すること。
  
 注  手関節部の骨折等の場合には手関節と回内・回外が、ひじ関節部の骨折等の場合にはひじ関節と回内・ 回外に障害を残すことが一般的である。
 
  イ  上肢の動揺関節については、それが他動的なものであると、自動的なものであるとにかかわらず、 次の基準によってその等級を認定すること。
   a  常に硬性補装具を必要とするものは、第10級に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
   b  時々硬性補装具を必要とするものは、第12級に準ずる関節の関節の機能障害として取り扱う。
  ウ  習慣性脱臼は、第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うこと。
3 加重
(1)  次に掲げる場合においては、障害の程度を加重した限度で障害補償を行うこと。
  ア  上肢に障害を残す者が、同一系列内において新たな障害を残した場合
 
 例1  1上肢を手関節以上で失っていた者が、さらに同一上肢をひじ関節以上で失った場合
2  1上肢の手関節の機能に障害を残す者が、さらに当該手関節の機能に著しい障害を残した場合
3  1上肢の橈骨及び尺骨に変形を残す者が、さらに同一上肢の上腕骨に偽関節を残した場合
 
  イ  上肢に障害を残す者が、既存の障害の部位以上を失った場合(上記アに該当する場合を除く。)
  
 例1  1上肢の橈骨及び尺骨に変形を残す者が、さらに同一上肢をひじ関節以上で失った場合
2  1手の手指を失い又はその機能に障害を残す者が、さらに同一上肢を手関節以上で失った場合
 
 ウ  1手の手指に障害を残す者が、さらに同手指又は同一手の他の手指に新たな障害を残した場合
  
 例1  1手の小指の用を廃した者が、さらに同一手の中指の用を廃した場合
2  1手の母指の指骨の一部を失っていた者が、さらに同指を失った場合
 
  エ  左右両上肢(両手指を含む。)の組合せ等級に該当する場合
 1上肢に障害を残す者が、新たに他の上肢に障害を残したとき、又は同一上肢(手指を含む。) に新たな障害を残すとともに他の上肢にも障害を残した結果、次に掲げる組合せ等級に該当するに至ったときの障害補償の額についても、 加重として取り扱うこと。
  (ア)  両上肢をひじ関節以上で失ったもの(第1級の6)
  (イ)  両上肢を手関節以上で失ったもの(第2級の3)
  (ウ)  両上肢の用を全廃したもの(第1級の7)
  (エ)  両手指の全部を失ったもの(第3級の5)
  (オ)  両手指の全部の用を廃したもの(第4級の6)
(2)  手指の障害のうち、加重後の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償の額(日数)から、 既存の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償の額(日数)を差し引いた額(日数)が、新たな障害のみを残した場合の障害補償(日数) を下回る場合には、新たな障害のみを残したものとみなして取り扱うこと。
  
例1  1手の示指及び中指を亡失していた(第9級の8、給付基礎日額の391日分)者が新たに環指を失った場合、 加重後の障害は第8級の3(給付基礎日額の503日分)に該当するが、第8級の3の障害補償の額(503日分) から第9級の8の障害補償の額(391日分)を差し引いた額(日数)は、環指のみを失った場合の障害補償の額(第11級の6、223日分) を下回るので、障害補償の額は、環指のみを失ったものとみなして算定する。
 2  1上肢の手関節及びひじ関節の用を廃していた(第6級の5)が、新たに中指の指骨の一部を失った場合、加重後の障害は準用第6級で、 加重前と同等級であるから、障害補償の額は、新たな障害のみを残したものとみなして算定する。
 
 
4 その他
(1)  母指延長術(血管、神経付遊離植皮を伴う造母指術を含む)を行った場合にあっては、 術後の母指は切断時に比べて延長されることとなるが、その後遺障害については、原則として「1手の母指を失ったもの」(第9級の8) として取り扱うこと。
 ただし、術後の母指の延長の程度が、健側母指と比べて明らかに指節間関節を超えていると認められる場合には、 「1手の母指の用を廃したもの」(第10級の6)とすること。
(2)  手指又は足指の移植により母指の機能再建化手術を行った場合にあっては、 術後の母指に残存する機能障害と当該手術により失うこととなった手又は足の指の欠損障害とを同時に生じた障害とみなし、 準用又は併合の方法により障害等級を認定すること。
 

以上、厚生労働省労働基準局長「平成16年6月4日付基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨、 上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」別紙より

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下肢及び足指に関する後遺障害等級

 第1 下肢及び足指の障害と障害等級
 1  下肢及び足指の障害については、障害等級表上、下肢の障害として欠損障害、機能障害、変形障害及び短縮障害について、 また、足指の障害として欠損障害及び機能障害について、それぞれ次のとおり等級が定められている。
(1) 下肢の障害
   a 欠損障害
 両下肢をひざ関節以上で失ったもの 第1級の8
 両下肢を足関節以上で失ったもの 第2級の4
 1下肢をひざ関節以上で失ったもの 第4級の5
 両足をリスフラン関節以上で失ったもの 第4級の7
 1下肢を足関節以上で失ったもの 第5級の3
 1足をリスフラン関節以上で失ったもの 第7級の10
   b 機能障害
 両下肢の用を全廃したもの 第1級の9
 1下肢の用を全廃したもの 第5級の5
 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 第6級の6
 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 第8級の7
 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 第10級の10
 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 第12級の7
   c 変形障害
 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 第7級の10
 1下肢に偽関節を残すもの 第8級の9
 長管骨に変形を残すもの 第12級の8
   d 短縮障害
 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの 第8級の5
 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの 第10級の7
 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの 第13級の8
(2) 足指の障害
   a 欠損障害
 両足の足指の全部を失ったもの 第5級の6
 1足の足指の全部を失ったもの 第8級の10
 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの 第9級の10
 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの 第10級の8
 1足の第2の足指を失ったもの、 第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの第12級の10
 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの 第13級の9
   b 機能障害
 両足の足指の全部の用を廃したもの 第7級の11
 1足の足指の全部の用を廃したもの 第9級の11
 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの 第11級の8
 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの 第12級の11
 1足の第2の足指の用を廃したもの、 第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの第13級の10
 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの 第14級の8
2  「廃用性の機能障害」に係る治ゆ認定及び「キュンチャー等の除去」に係る取扱いについては、上肢及び手指における場合と同様とする。
3  下肢及び足指の運動機能の評価及び測定については、以下によるほか、別添によること。
 

 第2 障害等級認定の基準
 1 下肢の障害
(1) 欠損障害
  ア  「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの
  (イ)  股関節とひざ関節との間において切断したもの
  (ウ)  ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの
  イ  「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  ひざ関節と足関節との間において切断したもの
  (イ)  足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの
  ウ  「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨からなる。)において切断したもの
  (イ)  リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの
(2) 機能障害
  ア  「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)のすべてが強直したものをいう。
 なお、3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直したものもこれに含まれる。
  イ  「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  関節が強直したもの
  (イ)  関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
 なお、「これに近い状態」については、上肢と同様であること。
  (ウ)  人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/ 2以下に制限されているもの
  ウ  「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
  (イ)  人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、上記イの(ウ)以外のもの
  エ  「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいう。
(3) 変形障害
  ア  「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいう。
 なお、ゆ合不全の意義は、上肢と同様であること。
  (ア)  大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
  (イ)  脛骨及び腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
  (ウ)  脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
  イ  「偽関節を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア)  大腿骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記アの(ア)以外のもの
  (イ)  脛骨及び腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記アの(イ)以外のもの
  (ウ)  脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記アの(ウ)以外のもの
  ウ  下肢の「長管骨に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。 これらの変形が同一の長管骨に複数存する場合もこれに含まれる。
  (ア)  次のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正ゆ合したもの)以上のもの。
   a  大腿骨に変形を残すもの
   b  脛骨に変形を残すもの
  なお、腓骨のみの変形であっても、その程度が著しい場合にはこれに該当する。
  (イ)  大腿骨若しくは脛骨の骨端部にゆ合不全を残すもの又は腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
  (ウ)  大腿骨又は脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
  (エ)  大腿骨又は脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの
  (オ)  大腿骨が外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形ゆ合しているもの
 この場合、外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形ゆ合していることは、 次のいずれにも該当することを確認することによって判定すること。
   a  外旋変形ゆ合にあっては股関節の内旋が0度を超えて可動できないこと、内旋変形ゆ合にあっては、 股関節の外旋が15度を超えて可動できないこと
   b  エックス線写真等により、明らかに大腿骨の回旋変形ゆ合が認められること
  
注  大腿骨に一定以上の回旋変形ゆ合が認められる場合には、両ひざを揃え、膝蓋骨を左右同様に前方に向けた肢位で、正面から両下肢 (両大腿骨の全長)を撮影したエックス線写真等により、左右の大腿骨の骨頭及び頸部が異なる形状となっていることが確認できる。
 
  なお、長管骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえ、 その部位に肥厚が生じていても長管骨の変形としては取り扱わないこと。
(4)  短縮障害
 「下肢の短縮」については、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって等級を認定すること。
 測定に当たっては、事前に両端部に印をつけ、巻尺は屈曲しないように注意すること。
2 足指の障害
(1)  欠損障害
 「足指を失ったものとは、その全部を失ったもの」(障害等級表の備考第4号)とされており、具体的には、 中足指節関節から失ったものがこれに該当するものであること。
(2)  機能障害
 「足指の用を廃したものとは 第1の足指は末節骨の半分以上、 その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第1の足指にあっては指節間関節) に著しい運動障害を残すもの」(障害等級表の備考第5号)とされており、具体的には、次の場合がこれに該当するものであること。
  ア  第1の足指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの
  イ 第1の足指以外の足指を中節骨若しくは基節骨を切断したもの又は遠位指節間関節若しくは近位指節間関節において離断したもの
  ウ  中足指節関節又は近位指節間関節(第1の足指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の1/ 2以下に制限されるもの
 

 第3 併合、準用、加重、その他
 1 併合
 (1)  系列を異にする障害が2以上ある場合には、労災則第14条第2項及び第3項により併合して等級を認定すること。
 
例1  両下肢に長管骨の変形を残す(それぞれ第12級の8)場合は、併合第11級とする。
2  右下肢を3センチメートル以上短縮し(第10級の7)、左下肢を5センチメートル以上短縮した(第8級の5)場合は、 併合第7級とする。
3  右下肢に偽関節を残し(第8級の9)、左下肢を5センチメートル以上短縮した(第8級の5)場合は、併合第6級とする。
4  踵骨骨折治ゆ後に疼痛を残し(第12級の12)、同一下肢の足関節の機能に障害を残す(12級の7)場合は、併合第11級とする。
 注  足関節は、脛骨・腓骨と距骨とにより構成され、一方、踵骨は、距骨との間で距骨下関節を構成し、舟状骨、 距骨及び立方骨との間でショパール関節を構成している。このように、足関節と踵骨とは別の部位である。
 

  ただし、併合した結果序列を乱すこととなる場合には、直近上位又は直近下位の等級で認定すること。
 
 例  1下肢をリスフラン関節以上で失い(第7級の8)、脛骨に偽関節を残す(第8級の9)場合、 これらを併合すれば第5級となるが、1下肢を足関節以上で失ったもの(第5級の3)には達しないので、併合第6級とする。
 
 また、同一下肢の足関節以上又はひざ関節以上の亡失(第5級の3又は第4級の5)と変形障害を残す場合は、変形障害の程度にかかわらず、 前者については併合第5級、後者については、併合第4級とする。
 (2)  次の場合には、併合によることなく、それぞれに示すところにより等級を定めること。
  ア  組合せ等級が定められている場合
 
例  右左の足をリスフラン関節以上で失った場合、右足をリスフラン関節以上で失ったもの(第7級の8) と左足をリスフラン関節以上で失ったもの(同前)とを併合するのではなく、障害等級表に定められた「両足をリスフラン関節以上で失ったもの」 (第4級の7)となる。
 
 イ  通常派生する関係にある場合
 
例1  脛骨の遠位骨端部の欠損(第12級の8)と同一下肢の足関節の著しい機能障害(第10級の10)を残した場合は、 上位の等級である第10級の10と認定する。
2  大腿骨又は下腿骨の骨折部にゆ合不全又は長管骨の変形を残すとともに、その部位に疼痛を残す場合には、いずれか上位の等級によること。
 
2  準用
 障害等級表上に、その属する系列はあるが、該当する障害がない場合は、次により等級を認定すること。
 (1)  併合の方法を用いて準用等級を定めるもの次の場合は、労災則第14条第4項により、併合の方法を用いて準用等級を定めること。
 
 例  大腿骨に第7級の10のゆ合不全を残し、同一下肢の脛骨に変形を残した(第12級の8)場合は、準用第6級とする。
 
 また、1下肢の機能障害と同一下肢の足指の欠損又は機能障害がある場合については、これらを同一系列の障害とみなし、 併合の方法を用いて準用等級を定めること。
 
例  1下肢の足関節の機能に障害を残し(第12級の7)、かつ、同一下肢の第1の足指の用を廃した(第12級の11)場合は、 準用第11級とする。
 
  ただし、併合の方法を用いた結果序列を乱すこととなる場合は、直近上位又は直近下位の等級に認定すること。
  ア  直近下位の等級に認定するもの
  
例  1下肢の足関節の用を廃し(第8級の7)、かつ、同一下肢をリスフラン関節以上で失った(第7級の8)場合、 併合の方法を用いると第5級となるが、1下肢を足関節以上で失ったもの(第5級の3)には達しないので、準用第6級とする。
 また、同一下肢に足関節以上又はひざ関節以上の亡失(第5級の3又は第4級の5)と機能障害が存する場合は、機能障害の程度にかかわらず、 前者については準用第5級、後者については準用第4級となるものであること。
 
  イ  3大関節のすべてに同一の機能障害を残す場合の取扱い
 1下肢の3大関節のすべての関節の機能に著しい障害を残すものは第8級、1下肢の3大関節のすべての関節の機能に障害を残すものは、 第10級に準ずる障害として取り扱うこと。
  ウ  1足の足指に、障害等級表上組合せのない欠損障害が存する場合
  
 例1  1足の第2の足指を含め3の足指を失ったものは、「1足の第1の足指以外の4の足指を失ったもの」(第10級の8)と 「1足の第2の足指を含み2の足指を失ったもの」(第12級の10)との中間に位し、第10級の8には達しないので、準用第11級とする。
2  1足の第2の足指を含めた3の足指の用を廃したものは、「1足の第1の足指以外の4の足指の用を廃したもの」(第12級の11)と 「1足の第1の足指を含み2の足指の用を廃したもの」(第13級の10)との中間に位し、第12級の11には達しないので、 準用第13級とする。
 
 (2)  他の障害の等級を準用するもの
  ア  下肢の動揺関節については、それが他動的なものであると、自動的なものであるとにかかわらず、 次の基準によってその等級を認定すること。
  (ア)  常に硬性補装具を必要とするものは、第8級に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
  (イ)  時々硬性補装具を必要とするものは、第10級に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
  (ウ)  重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないものは、第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
  イ  習慣性脱臼及び弾発ひざは第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うこと。
  ウ  足指を基部(足指の付け根)から失った場合は、「足指を失ったもの」に準じて取り扱うこと。
3 加重
 (1)  次に掲げる場合においては、障害の程度を加重した限度で障害補償を行うこと。
  ア  下肢に障害を残す者が、同一系列内において新たな障害を残した場合
  
 例1  1下肢をリスフラン関節以上で失った者が、さらに同一下肢を足関節以上で失った場合
2  1下肢の足関節の機能に著しい障害を残し又はひざ関節の用を廃した者が、さらに同一下肢を足関節以上で失った場合
3  1下肢の足関節の機能に障害を残す者が、さらに同一下肢の足関節の機能に著しい障害を残した場合
 
  イ  下肢に障害を残す者が、さらに既存の障害の部位以上を失った場合(上記アに該当する場合を除く。)
  
 例1  1下肢の脛骨に変形を残す者が、同一下肢をひざ関節以上で失った場合
2  1下肢を1センチメートル以上短縮した者が、同一下肢を足関節以上で失った場合
3  1下肢の下腿部に手掌大のケロイド瘢痕を残していた者が、同一下肢をひざ関節以上で失った場合
 
  ウ  1足の足指に障害を残す者が、さらに同一足指又は同一足の他指に新たな障害を残した場合
  
 例  1足の第5の足指の用を廃した者が、さらに同一足の第1の足指の用を廃した場合
 
 エ  左右両下肢(両足指を含む。)の組合せ等級に該当する場合
 1下肢に障害を残す者が、新たに他の下肢に障害を残し、又は同一下肢(足指を含む。) に新たな障害を残すとともに他の下肢にも障害を残した結果、次に掲げる組合せ等級に該当するに至ったときの障害補償の額についても、 加重として取り扱うこと。
   a  両下肢をひざ関節以上で失ったもの(第1級の8)
   b  両下肢を足関節以上で失ったもの(第2級の4)
   c  両足をリスフラン関節以上で失ったもの(第4級の7)
   d  両下肢の用を廃したもの(第1級の9)
   e  両足指の全部を失ったもの(第5級の6)
   f  両足指の全部の用を廃したもの(第7級の11)
 (2)  足指の障害のうち、加重後の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償の額(日数)から、 既存の障害の該当する障害等級に応ずる障害補償の額(日数)を差し引いた額(日数)が、新たな障害のみを残した場合の障害補償の額(日数) を下回る場合には、新たな障害のみを残したものとみなして取り扱うこと。
 
 例  1足の第2及び第3の足指を亡失していた(第12級の10、給付基礎日額の156日分)者が、 新たに第4の足指を失った場合、加重後の障害も準用第12級に該当する(上記(2)のウの(エ)の例2参照)こととなり、 加重後の障害補償の額から既存の障害補償の額を差し引くと0となり、第4の足指を失った場合の障害補償の額を下回るので、 第4の足指のみを失ったものとみなして取り扱う。
 
 
以上、厚生労働省労働基準局長「平成16年6月4日付基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨、 上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」別紙より

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他覚所見とは

自賠責後遺障害診断書を見ると、「自覚症状」という欄と「他覚症状および検査結果・精神・神経の障害」という欄があります。

「自覚症状」というのは、被害者が自分で自覚する症状のことです。

「他覚症状」というのは、自覚症状に対して、医者や他人が見ることのできる症状のことです。

そして、「他覚所見」というのは、 医師が視診、触診や画像診断などによって症状を裏付けることができるものをいいます。

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(会社役員)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

会社役員の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

会社役員の報酬については、
①労務提供の対価
②利益配当
の2つの要素を持っており、
①労務提供の対価部分のみが基礎収入になる。


◆空調設備業会社の代表者(男・症状固定時45歳)の第七胸椎圧迫骨折後の脊柱変形(11級7号)につき、 妻とその母が取締役となっているが、実際に会社の業務に従事しているのは被害者と妻の2人のみであること、交通事故後、 会社に対する比較的規模の大きい工事の発注が続いたことによって、会社の売上は従前に比して増え、 そのために税理士の指導もあって被害者の役員報酬も増額されたが、今後もそのような売上が見込めるものとまでは考えにくいこと、 会社の業務はほとんど全てを被害者の労務提供に依存しており、仮に被害者による労務提供が停止されれば会社の業務も停止せざるを得ないこと、 将来被害者が就職したり転職したりする際において、本件後遺障害が被害者にとって不利益な影響を及ぼすおそれがあることが明らかであること、 から、本件交通事故前年の収入である900万円を基礎収入として、67歳まで労働能力喪失率20%を認めた事例 (名古屋地裁平19.10.26、交民40・5・1386)

◆土木工事の施工管理会社代表者(男・症状固定時39歳)の左膝関節の用を廃した後遺障害(8級7号)につき、 会社は被害者のほかはその妻がいるのみで他に従業員はおらず、実質的に被害者がすべての業務を行っていたといえること、 被害者自ら施工管理業務を遂行し、あるいは外注している技術者に対して指導・助言を行っていたこと、から、 月額100万円の役員報酬全額について労務提供部分であると認め、67歳まで労働能力喪失率45%を認めた事例(大阪地裁平18.7.10、 交民39・4・944)

◆鳶工事業有限会社代表者(男・症状固定時38歳)の右膝動揺関節(10級11号)、右股関節の機能障害(12級7) の併合9級につき、会社は同族会社であること、被害者は交通事故前は職人の差配、現場監督を行う外、 自ら鳶職として現場作業にも従事しており、本件交通事故により休業したため、 平成14年9月から平成15年6月までは給与の支給を受けておらず、復職後も、 交通事故により現場監督及び鳶職としての稼働が不可能になったため、給与が年額1,128万から780万円に減額していること、会社の売上、 営業利益、当期利益などは事故前後を通じて大差なく、人件費も増加もたいした金額ではないこと、から、交通事故前の給与年額1, 128万円の65%の年額733万2000円を労働の対価部分と認め、67歳まで労働能力喪失率40%を認めた事例 (東京地裁平18.5.26、交民39・3・698)

◆工務店会社代表者(男・症状固定時52歳)の右膝痛、右膝屈曲困難及び跛行による機能障害(10級11号)につき、 従業員はパートタイムの事務員1人だけで、被害者が営業を担当する外、設計図書の作成、 施主や下請け業者との打ち合わせ及び建築現場における大工仕事のすべてを担当していたが、交通事故により建築現場での打ち合わせや監督、 大工仕事ができなくなり、臨時大工を雇わなければならなくなって、交通事故前の工事支出原価は売上高に対して55%であったのに対し、 事故後は72%に増大したこと、から交通事故前の役員報酬1,080万円全額を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率27%を認めた事例 (東京地裁八王子支部平16.3.25、交民37・2・415)

◆会社の監査役(主婦・女・症状固定時54歳)の第五腰椎圧迫骨折による腰椎部運動障害(8級2号)、両下肢筋力低下(12級7号)、 左大腿骨・左脛骨の変形(12級8号)、左下肢1センチメートル短縮(13級9号)、両変形性膝関節症、左膝神経症状 (14級10号の併合7級につき、 交通事故の前後を通じて会社の監査役として年間100万円程度の役員報酬及び同社の株主として年間40万円程度の利益配当を得ていたが、 これらの収入は労働の対価とはいえないので、逸失利益の算出に際して考慮しないと判断した事例(大阪地裁平12.8.29、交民33・4・ 1366)


 

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(個人事業主)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

事業所得者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

①原則として申告所得額とする。
②申告額と実収入額が異なる場合は実収入額を立証できれば実収入額とする。
③所得が資本利得や家族の労働などの総体のうえで獲得された場合には、所得に対する本人の寄与部分の割合による。
④現実収入が平均賃金以下であっても、平均賃金が得られる蓋然性があれば男女別の賃金センサスによる。
⑤現実収入が証明困難なときは、各種の統計資料によることもある。


◆事故の三ヶ月前に開店した居酒屋経営(男・症状固定時56歳)の人工骨頭を挿入置換 (自賠責では一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したものとして8級7号、左下肢短縮として13級9号で8級7号適用であったが、 裁判所は一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの、と認めた)につき、 居酒屋を開店する前はスナックを20年近く営業しており、月30万円程度の収入を得ていたこと、居酒屋の売り上げは、 3ヶ月間で434万4971円であったが、従業員の給料等を支払うと利益が出るまでの状態にはなかったことから、平均賃金は適用できず、 基礎収入は従前の収入に基づき年360万円とし、平均余命の2分の1である12年間にわたり労働能力喪失率27%を認めた事例 (東京地裁平20.2.4、交民41・1・148)

◆ペットショップ経営者(男・症状固定時44歳)の解離性健忘、特定不能の認知障害(9級10号)につき、 大学を卒業しているが大学卒業男性の平均賃金を得ていた蓋然性はないこと、経営者であること、16年以上経営が続いていたことから、 基礎収入を症状が固定した平成14年の賃金センサス男子全労働者の平均賃金555万4600円とし、67歳まで労働能力喪失率35% を認めた事例(神戸地裁平20.1.29、交民40・1・102)

◆建設自営業(男・症状固定時37歳)の精神および神経系統に著しい障害(5級2号)、一上肢の三大関節中の一関節に著しい機能障害 (10級10号)、聴力障害(14級3号)、嗅覚脱失(12級)の併合4級につき、交通事故前年の申告所得は307万9795円、 前々年は196万2159円と低かったが、32歳時は賃金センサス男子年齢別(30~34歳) の平均額516万9200円を上回る574万1496円であったものの、34歳、35歳時にいは賃金センサスの統計値に収入であったこと、 ただしこれらの年の営業収入は7000万円を超えるものであったこと、平成12年(33歳時)以降、 被害者の事業環境が特別悪化した事情はないこと、原価や経費計上された金額の一部に個人使用分が含まれていたであろうこと、から、 基礎収入を平成15年(事故時)の賃金センサス男子年齢別(35歳~39歳)平均賃金の576万8600円とし、 67歳まで労働能力喪失率92%を認めた事例(神戸地裁平18.11.17、交民39・6・1620)

◆画家(男・症状固定時61歳)の右手指の神経症状(12級12号)、右肩関節に14級10号)の併合12級につき、 交通事故前年の売上が851万円、申告所得額は275万円であったこと、事故前は絵の売上は年間600万円程度であったこと、 画家としてはまだ無名であって、売上も継続的な購入が期待できる顧客は少ない上、特定の顧客への依存度が高く、 今後も同様の売上を確保できるかははっきりしていないこと、より売上の60%にあたる年収510万6000円を基礎収入とし、 平均余命の2分の1にあたる9年間にわたり、労働能力喪失率50%を認めた事例(大阪地裁平18.6.16、交民39・3・786)

◆米穀・LPガス・灯油の販売業者(男・症状固定時56歳)の右第三、四趾欠損(13級10号)につき、 確定申告上は交通事故以前から大幅な赤字であり、所得はないこととなること、実際の所得も明らかでないこと、 本件交通事故により現実に労働能力の一部を喪失し、そのことと被害者の事業縮小とが無関係であるとまでもいないこと、 家族が営業に寄与している面もあること、により、 基礎収入を平成14年各種商品小売業者全労働者平均賃金である459万1200円の7割である321万3840円とし、 67歳まで労働能力喪失率9%を認めた事例(大阪地裁平18.6.14、交民39・3・764)

◆花屋自営業(女・症状固定時30歳)の嗅覚脱失(12級相当)、頭部外傷後の神経系統の障害(12級12号)の併合11級につき、 交通事故の前々年に花屋を開店した直後の売上は少額であり、交通事故前年分の確定申告上の売上は認められないこと、 花屋の売り上げが顧客の増加によって前年よりも大幅に増えたと認められること、被害者は、25歳から26歳時には、 平成14年賃金センサスの女子高専・短大卒年齢別(25歳~29歳) 平均賃金である351万6800円よりも高額である年収387万円を得ていたこと、被害者が当該会社でアルバイトとして稼働しているところ、 仮に花屋の営業による所得が低額であるならば、当該会社に正社員として復帰できる蓋然性もあると認められること、より、 基礎収入を平成14年賃金センサス女子高専・短大卒全年齢平均賃金である383万3400円とし、10年間は労働能力喪失率20%、 その後67歳までは14%と認めた事例(東京地裁平18.3.14、交民39・2・326)

◆材木の仕入れ販売業(男・症状固定時72歳)の右膝の痛み、可動域のわずかな制限(14級10号)につき、 交通事故前年の申告所得額は170万円であるものの、年額260万円あまりを借金返済していること、 交通事故当時妻と孫2人の4人で生活していたこと、より基礎収入を男子年齢別平均賃金の385万3800円とし、5年間労働能力喪失率5% を認めた事例(大阪地裁平18.2.10、交民39・1・156)

◆競艇選手兼会社役員(男・症状固定時45歳)の高次脳機能障害(2級3号)につき、交通事故当時最上級のA1クラスに属し、 交通事故前の3年間の申告所得額は、全競艇選手の年齢別(40歳~44歳)の平均年収の約1.5倍である3455万円3502万円、 3276万円であったこと、症状固定後10年間は選手として稼働可能であること、 から選手としての基礎収入を症状固定後3年間は事故前の平均年収2204万9878円、その後7年間は選手の平均年収の1. 5倍である1642万円、56歳から67歳までは、 平成14年賃金センサスによる男子労働者の対応年齢の平均年収により算出すべきであるとし、会社役員部分については、 競艇選手として稼働できたであろう10年間につき、交通事故前の平均報酬93万円を認めた事例(広島地裁平17.9.20、 判例時報1926・117)

◆日給制で雇用されている塗装工(男・症状固定時63歳)の右肩可動域制限(10級10号)につき、 交通事故の前年の申告所得額は187万4060円であるが、経費としては通信費及び消耗品費程度であり、経費率は収入額の5% 程度と認められることから、所得しては収入額である603万4500円から5%の経費を控除した573万2775円を基礎収入とし、 9年間にわたり労働能力喪失率27%を認めた事例(大阪地裁平15.12.24、交民36・6・1671)
※なお、判決では、「納税義務を果たさず、不当に利得を得た上で、損害賠償請求訴訟においては、これに反する主張をすることは不誠実である」 と糾弾している。

◆無免許運送業者(男・症状固定時29歳)の逸失利益の算定に際し、 違法な運送事業による収入をもって算定することは許されないとして、平均賃金を基礎収入とした事例(和歌山地裁御坊支部昭和50.9.11、 交民8・5・1348)

 

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(学生・幼児等)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

学生・生徒・幼児等の無職者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

①原則として、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別の全年齢平均の賃金額
②女子年少者の場合は、男女を含む全年齢平均賃金。
③大学生になっていない者でも、大卒の賃金センサスが適用される場合がある。
④大卒の賃金センサスの場合、就労の始期が遅れるため、学歴計を適用するときより損害額が減る場合がある。


◆大学生(女・事故時22歳・症状固定時25歳)の高次脳機能障害(2級)、右鎖骨変形(12級)、複視(12級)の併合1級につき、 幼いころから書道に才能を有し、大学での課程をを通じ更に高めて特別な技能として修得するに至っていたこと、 から平成14年賃金センサス女子大卒全年齢平均年収額である446万5000円に1割を加算した446万5000円を基礎収入とし、 67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例(東京地裁平19.9.25、交民40・5・1228)

◆専門学校生(女・死亡時19歳)の死亡事故について、義務教育を終了した後は、一般に将来の進路、 職業選択についての希望や予定がある程度具体化するであろうから、 あらゆる職種に就く可能性を前提にした全労働者の平均賃金を用いる根拠が薄弱化すること、未就労であったことのみをもって、 現在の女性の賃金水準を反映したものではない全労働者の賃金水準で算定すると、 既に就業した同年代の若年労働者の逸失利益の算定方法との均衡を失することになりかねないこと、から、専門学校一年生の被害者について、 平成14年の賃金センサス女子高専・短大卒の全年齢平均年収額である383万3400円を基礎収入とし、生活費控除率を3割とした事例 (東京地裁平16.10.18、交民37・5・1384)

◆大手製薬会社への就職が内定していた大学院博士課程1年在学中の学生(男・症状固定時27歳)の高次脳機能障害(1級3号)につき、 被害者は大学院1年在学中に製薬会社の内定を得、同社に入社するまでの3年間、同社から月10万円の奨学金を受けていたこと、 同奨学金は厳しい審査を経てごく一部の学業優秀な者のみに与えられるのであって、大学院研究科においても、 年間3~4名しか対象とならないものであること、製薬会社の賃金は、賃金センサスの当該年齢に対応する年収額の約1.4倍であること、から、 平成14年賃金センサス男子大学卒全年齢平均年収額である674万4700円の1.4倍にあたる944万2580円を基礎収入とし、 大学院を卒業する28歳から60歳まで労働能力喪失率100%を認め、60歳から67歳までは平成14年賃金センサス男子大卒年齢別 (60歳~64歳)年収額の747万5400円を基礎収入とした事例(東京地裁平16.6.29、交民37・3・848)

◆小学校1年生(女・症状固定時7歳)の右足第四、五趾喪失、右足第一ないし第三趾機能障害、右足底部痛、右足加重困難、 歩行時疼痛等(8級)につき、被害者は就労を開始するものと見込まれる18歳までに約11年間を要し、現在の社会状況等の変化を踏まえれば、 被害者が将来男性並みに働き、男性並みの収入を得られる蓋然性は相当程度認められ、 女子平均賃金をもって基礎収入とするのは損害の公平な分担という見地からして相当でないこと、年少者の職域や就労形態が多様であること、 から、平成11年賃金センサス全労働者全年齢平均年収額である496万7100円を基礎収入とし、18歳から67歳まで労働能力喪失率45% を認めた事例(大阪地裁平14.5.31、交民35・3・738)

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(家事従事者)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

家事従事者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

①原則として、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額 (最高裁昭和49.7.19、判例時報748・23)
②兼業主婦の場合には、次のとおり。
(1)実収入が平均賃金以上→実収入
(2)実収入が平均賃金以下→平均賃金


◆親族経営の米穀店に勤務する兼業主婦(女・症状固定時41歳)の右足疼痛、歩行時痛(12級12号)、右下肢醜状傷害(14級5号) の併合12級につき、米穀店で月額20万2000円の収入を得ていたこと、就学中の2人の子を被害者1人で養育し、 家事労働を行っていたものであること、から平成17年賃金センサス女子全年齢平均年収額である343万4400円を基礎収入とし、10年間、 労働能力喪失率14%を認めた事例(名古屋地裁平20.2.22、交民41・1・207)

◆主婦(女・症状固定時58歳)の頸髄不全損傷による神経症状(12級12号)につき、 交通事故発生時である平成11年9月2日時点では息子と同居し、家事労働に従事していたが、 平成16年11月に結婚予定の女性と同居するようになったことに伴い、その後は1人暮らしをしているが、本件交通事故当時、 息子の別居が客観的に予定されていたわけではないこと、から家事労働につき逸失利益を認めるのが相当であるとし、 平成12年女子労働者全年齢平均年収額の349万8200円を基礎収入とし、平均余命年数の約半分である14年間、労働能力喪失率14% を認めた事例(東京地裁平19.12.20、交民40・6・1666)

◆家事を分担するかたわら、記事を雑誌に寄稿したり、講演活動をしていた女性(女・症状固定時73歳)の右下肢の知覚鈍麻、 膝関節の機能障害の後遺障害につき、娘家族と同居し、娘夫婦には3人の子がおり、被害者は、娘と家事を分担していたこと、 女性の生き方や生活の知恵に関する記事を雑誌に寄稿したり、講演活動をしていたこと、から、 平成16年賃金センサス女子労働者65歳以上の年収額306万8600円を基礎収入とし、平均余命の半分である約8年間、 労働能力喪失率10%を認めた事例(東京地裁平19.5.15、交民40・3・644)

◆主婦(女・症状固定時65歳)の高次脳機能障害(1級3号)、外貌醜状(12級)の併合1級につき、夫と同居中は炊事、洗濯、 掃除等の家事を行っていたが、夫が入院後はほとんど見舞いにも行っておらず、交通事故時に家事を行っていたとは言い難い面があるが、他方、 夫が入院してから交通事故まで2ヶ月余の期間しかなく、 本件事故がなければ夫の見舞いに行って身の回りの世話をするなど家事労働に従事していた可能性もあながち否定できないとして、 症状が固定した平成14年の賃金センサス女性全年齢平均年収額351万8200円の30%を基礎収入とし、8年間、労働能力喪失率100% を認めた事例(大阪地裁平18.6.26、交民39・3・859)

◆兼業主婦(女・症状固定時47歳)の頚部挫傷後の頚背部痛及び右肩から上肢の疼痛としびれ等の神経症状(12級12号)につき、 被害者は、夫と子供2人の4人世帯の主婦として家事労働に従事するとともに、 夫の経営する音楽教室でピアノ講師として週3日の割合で時間割の講座を持つ形で就労し、月10万円の給与を得ていたことから、 基礎収入については、ピアノ教室での就労は1回あたり半日分とみることとして、1週間のうち1.5日分は家事労働に従事できないこととし、 これに相当する分は賃金センサスに基づく基礎収入から減算することとした上で、ピアノ教室での給与を加算することとし、平均賃金については、 平成13年賃金センサス女子年齢別(45歳~49歳)の年収額386万1000円を採用し、10年間、労働能力喪失率14%を認めた事例 (名古屋地裁平18.12.15、交民39・6・1763)

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(無職者)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

無職者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

<原則>
労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があれば認められる。
その場合の基礎収入は、再就職によって得られるであろう収入
①原則として失業前の年収
②失業前の年収が平均賃金以下の場合で、再就職の場合に平均賃金が得られる可能性があれば、平均賃金
③平均賃金を得られる蓋然性がなければ平均賃金を減額した額


◆専門学校を卒業し就職活動中の無職者(男・症状固定時28歳)のうつ状態(9級10号)につき、高校卒業後就職し、平成10年(23歳時) には297万1377円の給与収入があったこと、その後専門学校ホテル学科に通い、ホテルでアルバイトをしたりし、 平成13年4月には卒業し、就職活動中であったことから、就職の可能性があると認め、 平成13年賃金センサス男子全年齢平均年収額である547万8100円を基礎収入とし、10年間は労働能力喪失率35%、 その後67歳までは14%と認めた事例(東京地裁平19.11.7、交民40・6・1499)

◆無職者(男・症状固定時59歳)の脊柱変形(11級7号)、右肩関節可動域制限(12級6号)の併合10級につき、 溶接工の資格を有し、以前は溶接工として稼働しており、交通事故当時も身体的には稼働できない事情はないこと、から、 平成16年賃金センサス男子全年齢平均年収額である485万4000円平均余命の半分である11年間、労働能力喪失率27%を認めた事例 (神戸地裁平18.11.1、交民39・6・1525)

◆無職者(男・症状固定時28歳)の高次脳機能障害(3級)につき、交通事故当時は無職であり、就職先も決まっていなかったが、 症状固定時は28歳と比較的若年であること、大検に合格し、交通事故前は正職員として勤務していたほか、介護士となる希望を持ち、 平成13年4月から介護福祉専門学校への進学が決まっていたこと、前期会社を退職後、複数のアルバイトに従事し、 月額10万円程度の収入を得ていたこと、から労働能力及び労働意欲があり、専門学校卒業後に就労先を得る蓋然性が高いとし、 平成14年賃金センサス男子全年齢平均年収額である555万4600円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例 (福岡地裁平18.9.29、判例時報1964・127)

◆再就職内定の無職者(男・年齢不明)の頸椎捻挫による神経症状(14級)につき、従前の勤務先である大手証券会社の経営破綻のため、 交通事故当時は無職であったが、著名な私立大学経済学部を卒業して大手証券会社に就職し、留学してMBAの資格を取得し、 勤務先破綻前には大卒男子平均(30歳~34歳)の年収額598万2900万円の1.18倍n給与を得ていたことから、 交通事故後別会社に再就職するにあたり年収1500万円と成果報酬ボーナス・ ストックオプションの付与を条件として内定していたと主張することも、あながちあり得ないとはいえないこと、 症状固定5年後である平成16年12月以降は1ヶ月平均149万0476円(年収1788万5712円の年収を現実に得ていたこと、から、 年収1500万円を基礎収入とし、5年間労働能力喪失率5%を認めた事例(大阪地裁平17.10.12、交民38・5・1406)

◆無職者(男・症状固定時52歳)の脊柱運動障害(8級2号)、右下肢脱力感、右下肢知覚障害、 右上肢から左手の痺れ等の残存は9級10と認め、既往症として12級12号に該当する障害を有していたことから後遺障害併合7級につき、 本件事故当時に働いていたとまでは認められず、また、症状固定日までに就労した蓋然性も認められないが、本人の証言から、 就労の意思や機会はあるものと認め、平成13年賃金センサス男性年齢別(50歳~54歳) の平均年収額である706万0300円の約7割である494万2210円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率42%を認めた事例 (東京地裁平17.1.27、交民38・1・163)

◆フリーター(男・症状固定時29歳)の左大腿骨転子骨折に伴う左下肢の鈍痛(14級10号)につき、症状固定時(事故約2年後) までに就労し収入を得た蓋然性が高いとは言えないとして休業損害を認めなかったが、症状固定後就労の意思が認められること、 症状固定時に29歳であること、から、平成14年賃金センサス男性学歴計年齢別(25歳~29歳) の平均年収額である404万7000円の8割である323万7600円を基礎収入とし、5年間労働能力喪失率5%を認めた事例 (東京地裁平17.1.25、交民38・1・130)

◆無職者(男・症状固定時58歳)の頸髄損傷による後遺障害(1級3号)につき、交通事故の10ヶ月前に56歳で定年退職した後、 無職であったが、高齢の母、大学進学を控えた二男など扶養すべき家族を抱えていたことから当然求職していたものと認められること、 被害者の労働能力に格別問題とすべき点も見あたらないこと、交通事故当時無職だったのは、 年齢や地域性等の事情によって就労機会に恵まれなかったと解されること、 少なくとも症状固定時の1年半の求職活動があれば前職と同程度の収入を得られる蓋然性は高かったと解されること、から、 前職の年収額である328万0192円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例(岡山地裁平16.5.7、交民37・ 3・600)

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(給与所得者)

交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

給与所得者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

1 原則 交通事故前年の現実収入を基礎収入とする。
2 現実の収入が賃金センサスの平均額以下であっても、将来平均賃金が得られる蓋然性があれば、平均賃金をもって基礎収入とする。
3 事故時概ね30歳未満の若年労働者の場合、原則として全年齢平均賃金をもって基礎収入とする。


◆会社員(男・症状固定時28歳)の四肢の運動知覚の麻痺(1級)につき、交通事故時27歳で年収が430万円程度あり、 平成17年の症状固定時で28歳と若年であることから、基礎収入を平成17年賃金センサス男子全年齢平均賃金552万3000円とし、 67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例(名古屋地裁平20.1.29、交民41・1・114)

◆消防士(男・症状固定時32歳)の脊柱変形(11級7号)につき、最終学歴は高卒であったが、救急救命士の資格も取得しており、 交通事故前年の年収が570万円余であり、大卒男子年齢別平均賃金を6%上回っていたことから、 基礎収入を賃金センサス男性大卒全年齢平均賃金の6%増である696万9288円とし、67歳まで労働能力喪失率20%を認めた事例 (名古屋地裁平19.2.23、交民40・3・782)

◆パッカー車の運転及びゴミの積み込み作業に従事する地方公務員(男・症状固定時30歳)の左膝十字靱帯損傷等による左膝の不安定感、 可動域制限等(12級7号)、左膝痛(14級10号)の併合12級につき、交通事故当時の年収582万3436円を基礎収入とし、 67歳まで労働能力喪失率14%を認めた事例(神戸地裁平18.12.22、交民39・6・1775)

◆兼業主婦(女・症状固定時47歳)の頚部挫傷後の頚背部痛及び右肩から上肢の疼痛としびれ等の神経症状(12級12号)につき、 被害者は、夫と子供2人の4人世帯の主婦として家事労働に従事するとともに、 夫の経営する音楽教室でピアノ講師として週3日の割合で時間割の講座を持つ形で就労し、月10万円の給与を得ていたことから、 基礎収入については、ピアノ教室での就労は1回あたり半日分とみることとして、1週間のうち1.5日分は家事労働に従事できないこととし、 これに相当する分は賃金センサスに基づく基礎収入から減算することとした上で、ピアノ教室での給与を加算することとし、平均賃金については、 平成13年賃金センサス女子年齢別(45歳~49歳)の年収額386万1000円を採用し、10年間、労働能力喪失率14%を認めた事例 (名古屋地裁平18.12.15、交民39・6・1763)

◆郵便局員(男・症状固定時38歳)の四肢麻痺・四肢関節拘縮・遷延性意識障害(1級3号)につき、 交通事故直前に郵便局に就職して試用期間中時給790円の収入を得ていたが、29歳時には349万3576円、 30歳時には353万1459円、31歳時には351万5835円の年収を得ており、 当時の賃金センサス男子学齢計年齢別平均賃金の約7割弱ないし8割程度の収入を得ていたが、 その後5年間は就労していた証拠がなく事故直前に就職し、以後も継続して就労する蓋然性があり、 かつ将来的には昇給も見込むことができることから、 賃金センサス男子年齢別平均賃金598万0600円の8割程度の収入を得る蓋然性があるとし、基礎収入を4,784,480円とし、 67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例(千葉地裁佐倉支部平18.9.27、判例時報1967・108、NBL865・62)

◆料理人(男・症状固定時31歳)の右膝関節機能障害(12級7号)、右大腿部痛(14級10号)の併合12級につき、交通事故前年 (当時27歳)の年収が424万円余であり、賃金センサス男子年齢別(25歳~29歳)平均賃金411万800円を上回っていたことから、 被害者は、本件事故に遭わなければ、少なくとも賃金センサスによる平均年収額程度の収入を得ていた可能性が高いとして、 賃金センサス平成16年男子学歴計全年齢別平均年収額542万7000円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率14%を認めた事例 (東京地裁平18.8.28、交民39・4・1199)

◆会社員(男・症状固定医j31歳)の高次脳機能障害(5級2号)、嗅覚障害(12級)、味覚障害(14級)の併合4級につき、 交通事故前年の年収(28歳)は、その年の6月1日に就職したために588万円にとどまるものの、26歳当時が622万9480円、 27歳当時が645万円であり、いずれも賃金センサス男子大卒年齢別(25歳~29歳)を上回っていたことから、 賃金センサス平成15年男子大卒全年齢平均年収額658万7500円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率79%を認めた事例 (東京地裁平18.4.24、交民39・2・556)

◆ラーメン店の住み込み店員(男・症状固定時49歳)の左足関節の機能障害(10級11号)につき、 交通事故前年の給与収入は月額10万円程度であるが、ラーメン店経営者所有の住居の一部を廉価で借り受け、食事などの提供を受けていること、 将来は独立する予定であり2,000万円以上の貯蓄をしていたこと、 以前そば屋勤務時には月額30万円程度の収入を得ていたことなどを考慮し、賃金センサス男子中卒年齢別(45歳~49歳) 平均年収額の6割程度(308万280円)を基礎年収とし、67歳まで労働能力喪失率27%を認めた事例(東京地裁平17・10・17、 交民38・5・1424)

◆精肉店勤務(男・事故時22歳・症状固定時25歳)の高次脳機能障害(3級3号)、左声帯麻痺(12級)の併合2級につき、 交通事故直前ころは月給23万円と賞与を夏・冬23万円ずつであったが、高等学校卒業後職業訓練学校電気科2年を修了していること、 勤務状況も良好であったこと、事故時若干22歳であったことから、賃金センサス男子高専短大卒全年齢平均年収額を基礎とし、 67歳まで労働能力喪失率100%を認めた事例(大阪地裁平17.7.28、交民38・4・1093)

◆銀行員(男・事故時32歳・症状固定時34歳)の運動機能障害、外傷性てんかん、高次脳機能障害(1級3号)につき、 交通事故前年の年収は639万710円であるが、同期入社社員の給与収入は、毎年5%上昇していたことから、 症状固定時の年収を740万円5450円と推定した上で基礎収入とし、定年である60歳まで労働能力喪失率100%を認め、 定年後である60歳~67歳まで平成12年賃金センサス男子大卒年齢別(60歳~64歳) 平均年収額である699万0900円を基礎収入とし、労働能力喪失率100%を認めた事例(東京地裁平16.12.21、交民37・6・ 1721)

 

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後遺症(後遺障害)逸失利益の基礎収入(高齢者)

 交通事故における逸失利益の算定(基礎収入)

高齢者の後遺症逸失利益算定のための基礎収入は、以下のとおり。

①就労していれば、事故前年度の年収額
②家事労働をしていれば、学歴計女子労働者全年齢の平均賃金
③無職で就労の蓋然性があれば、男女別学歴計年齢別平均の年収額
④無職で就労の蓋然性がなければ、ゼロ。


◆長男が経営する医院で日常清掃業務に従事していた被害者(男・症状固定時80歳)の脳挫傷等による後遺障害(1級1号)につき、 毎日3時間程度、医院の玄関先や駐車場の清掃等業務を行い、年間240万円の給与収入を得ていたが、同業務を外注した場合には、 一ヶ月あたり11万8800円であること、経営者との親子関係、原告の年齢を併せて勘案すると、就労の対価と考えられるのは、 給与の5割の月額10万円であり、これを超える部分は生活費の援助等の贈与であるとし、年間120万円を基礎収入とし、就労可能年数4年、 労働能力喪失率100%を認めた事例(名古屋地裁平17.8.26、交民38・4・1147)

◆無職の被害者(男・症状固定時69歳)の右頸部痛、肩の痛み、右前腕尺側のしびれによる神経症状(12級)につき、 交通事故当時は無職であったが、図面を引くなどの技術を有し、就職予定も存したなど、就労蓋然性は通常の同年齢の者より高いこと、から、 平成12年68歳男子の平均年収額である385万3800円を基礎年収とし、平均余命の半分である7年間、労働能力喪失率14% を認めた事例(大阪地裁平16.8.25、交民37・4・1101)

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神経症状における12級と14級の判断基準

 むち打ち症や腰椎捻挫の後遺障害は、 12級13号又は14級9号に該当します。

12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」であり、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」です。このように、両者は「頑固な」 という文言のみ異なるのですが、これは痛みが激しいか否かということによって分けられているのではありません。

後遺障害等級認定実務上、12級13号は「他覚的所見により神経系統の障害が証明されるもの」であるとされています。つまり、手が痺れる、 首が痛くて動かせないという自覚症状と、それを裏付ける外傷性の画像所見(MRI画像上の異常状態等)及び神経学的検査所見 (スパーリングテストなどにおける異常所見)が認められ、医学的に証明されていると判断されれば、12級の後遺障害として認められるのです。

これに対して、14級9号は「神経系統の障害が医学的に推定されるもの」であるとされています。例えば、手の痺れの自覚症状がある場合、 画像所見として、神経圧迫はあるが、原因は加齢性によるものと判断されるなどで、神経学的異常所見が認められ、 神経系統の障害が医学的に推定されれば、14級の後遺障害と認定されるのです。

このように、神経障害における12級と14級の差異は、症状が交通事故の外傷によるものと医学的に証明できるかどうか、 にかかっていると言えます。

そのため、頸椎捻挫、腰椎捻挫などの神経障害について医師に後遺障害診断書を作成してもらう際には、 必ず症状固定時においてMRIの撮影を行わなければなりません。そして、 その画像上の異常所見が本件交通事故によるものであると判断された場合には、その旨、後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。また、 スパーリングテストや徒手筋力テスト、知覚検査などを実施し、その結果をもれなく後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

なお、事故当初からのMRI画像も、神経根圧迫状態等の経緯を観察するうえで、重要な役割を果たします。 そのため、できる限り早い内からMRIの撮影装置を常備した病院に通院した方が良いでしょう。

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神経障害における労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は原則として症状固定時から67歳までとされています。しかしながら、 頸椎捻挫や腰椎捻挫による神経障害の後遺障害において、67歳までの労働能力喪失期間を認める例は、極めてまれです。

 

神経障害における労働能力喪失期間について、多くの裁判例は、12級13号で5年から10年程度、 14級9号で5年以下と限定的に認定を行っています。これは、むち打ち症などの神経障害は、 この程度の時が経過すれば治癒していくことが一般的であるという医学的判断に基づいています。

 

そのため、保険会社との交渉レベルでは、14級9号における労働能力喪失期間を2~3年として和解案が提示されることが一般的です。しかし、 交渉次第では、5年の労働能力喪失期間を認めるケースもありますので、諦めずに交渉を続けることも大切でしょう。この場合、 判例等を調べる余裕がある方は、なるべく長期の労働能力喪失期間を認定した判例を保険会社に示して交渉を行うと良いでしょう。

なお、労働能力喪失期間を一定期間に制限することは、一般的な実務的取り扱いであり、 10年を超えて労働能力が喪失するという事実を立証することができれば、長期の労働労力喪失期間が認定されることもあります。

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脊髄損傷の後遺障害等級認定

 脊髄損傷とは

脊髄とは脊椎(背骨)の中にある中枢神経であり、脳から送られる神経の信号を末梢神経に伝え、 また抹消神経からの信号を脳に伝える重要な役割をしています。脊髄損傷というのは、脊髄が損傷することですが、脊髄は、 脳と同じく中枢神経ですから、一度傷つくと二度と再生しません。脊髄損傷による障害(麻痺)は、治らない、ということです。麻痺に伴い、 尿路障害などの腹部臓器の障害が認められます。

毎年約5,000人もの脊髄損傷が発生しており、交通事故に起因するものは、その半数近くに及ぶとのことです。

症状固定となった場合には、以下の手続を行い、損害の拡大を防ぐ必要があります。

・福祉事務所に対する身体障害者手帳の申請
・独立行政法人に対する介護料援助申請
・労働基準監督署に対する労災の障害補償年金の申請(労災の場合)
・厚生年金の場合は社会保険事務所に障害厚生年金、国民年金の場合は市町村役場に、障害基礎年金の申請


脊髄損傷の種類

脊髄損傷は、損傷の程度により、「完全麻痺」と「不完全麻痺」に分かれます。以下のとおりです。

完全麻痺-上肢又は下肢が完全強直又は完全に弛緩する

不完全麻痺-上肢又は下肢を運動させることができても可動範囲等に問題がある場合

合併症
脊髄損傷による麻痺以外に、色々な全身の合併症が発生します。呼吸器合併症、 循環器合併症、消化器合併症、泌尿器合併症、褥瘡などがあります。


麻痺の種類

四肢麻痺-両側の四肢の麻痺

片麻痺-一側上下肢の麻痺

単麻痺-上肢または下肢の一肢の麻痺

対麻痺-両上肢または両上肢の麻痺

損傷脊髄高位により異なり、中下位頸髄損傷では四肢麻痺、胸腰髄損傷では対麻痺、上位頸髄損傷では四肢麻痺に呼吸麻痺を伴います。

第2腰椎以下の脊柱内の馬尾神経が損傷された場合においても、脊髄の損傷による障害である下肢の運動麻痺(運動障害)、感覚麻痺 (感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)等を生じることから、脊髄損傷に含めます。

麻痺の程度

麻痺の程度については、高度、中等度、軽度の3つに分けられます。

高度の麻痺
障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、 障害のある上肢または下肢の基本動作(上肢においては物を持ち上げて移動させること、下肢においては歩行や立位をとること) ができない程度の麻痺。

完全強直またはこれに近い状態にあるもの。
・上肢においては、 三大関節および5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの。
・下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの。
・上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの。
・下肢においては、随意運動の顕著な障害により、一下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの。

 
中等度の麻痺
障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるもの。

・上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500グラム) を持ち上げることができないもの又は障害を残した一上肢では文字を書くことができないもの。
・下肢においては、 障害を残した一下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの。


軽度の麻痺
障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、 障害のある上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度失われているもの。

・上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに困難を伴うもの。
・下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を有するため不安定で転倒しやすく、 速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの。

後遺障害等級認定

判断要素
脊髄損傷による後遺障害等級の認定は、原則として、 次の判断要素を考慮します。

・麻痺の範囲(四肢麻痺、片麻痺、対麻痺、単麻痺)
・麻痺の程度(高度、中等度、軽度)
・介護の要否、程度
・運動障害の程度(運動性、支持性、巧緻性、速度)
・麻痺には、運動障害と感覚障害があり、運動障害があれば、通常感覚障害があります。
・MRI、CT等によって裏付ける。
・胸腹部臓器、脊柱障害
・後遺障害等級認定基準


【別表第1、1級1号】
「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、 常に介護を要するもの」
以下の症状が該当します。

・高度の四肢麻痺
・高度の対麻痺
・中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(例)
第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、 脊柱の変形等が認められるもの。

【別表第1、2級1号】
「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
以下の症状が該当します。

・中等度の四肢麻痺が認められるもの
・軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
(例)
第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中等度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、 軽度の神経因性膀胱障害および脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、脊柱の変形が認められるもの。

【別表第2、3級3号】
「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
以下の症状が該当します。

・軽度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの
・中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの


【別表第2、5級2号】
「神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
以下の症状が該当します。

軽度の対麻痺
一下肢の高度の単麻痺

【別表第2、7級4号】
「神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの。一応労働することはできるが、 労働能力に支障が生じ、軽易な労務にしか服することができないもの。」
以下の症状が該当します。

一下肢の中等度の単麻痺
(例)
第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の中等度の単麻痺が生じたために、 杖又は硬性装具なしには階段をのぼることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの

【別表第2、9級10号】
「神経系統の機能または精神に障害を残し、 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの。通常の労働を行うことはできるが、就労可能な職種が相当程度に制限されるもの。」
以下の症状が該当します。

一下肢の軽度の単麻痺
(例)
第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、 速度の遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの

【別表第2、12級13号】
「局部に頑固な神経症状を残すもの。」
以下の症状が該当します。

・運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの
・運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
(例)
軽微な筋緊張の亢進
運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの

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被害者請求と一括払事前認定

 後遺障害とは、自賠法施行令2条によれば「傷害がなおったとき身体に存する傷害」を意味するとされています。 治療してもこれ以上良くはならず、病気や弊害が半永久的に続く状態を意味します。

 

医師に、「これ以上は、現代医学ではどうしょうもないですね。」とか「後は時間が解決してくれるのを待つしかないですね。」 と言われたときには、後遺障害が残ったと思っていいでしょう。もっとも、これら全ての後遺障害が、 交通事故における後遺障害に該当するわけではありません。交通事故における後遺障害に該当するためには、 原則として損害保険料率算出機構において、後遺障害等級が認定されなければなりません。もちろん後遺障害等級認定がされなくても、 裁判所はその判断に拘束されませんので、後遺障害が認められる場合があります。しかし、後遺障害等級認定は裁判所も尊重していますので、 まずは後遺障害等級認定を取ることに力を入れてゆくことになります。

 

後遺障害等級には、別表第1の第1~2級と、別表第2の第1~14級が認められています。

 

 それでは、具体的に後遺障害等級認定を行うためにはどうすればよいのでしょうか。

 

  後遺障害等級認定の手続は、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構) というところが行います。 この損保料率機構というのは、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき昭和23年に設立された損害保険料率算定会(損算会)から、昭和39年に自動車保険料率算定会 (自算会)が独立し、平成14年に、両会が統合して、現在の「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)になったものです。 さらに、具体的な調査は、都道府県庁所在地等に「自賠責損害調査事務所」をおいて、同事務所に損害調査をさせています。

 

後遺障害等級認定を行う方法としては、 いわゆる事前認定と被害者請求という方法があります。

 

被害者請求(16条請求)とは、被害者が、加害者の自賠責保険会社に対して、直接損害賠償額の請求をしてゆく方法です。これに対し、 事前認定とは、任意保険会社を通じて後遺障害等級認定を行う方法です。

 

 保険会社から請求するのを「事前認定」という理由を説明します。

 

 この場合、 任意保険会社は、自賠責保険分の支払も、 上澄みの任意保険分の支払も一括して任意保険会社が支払い、 後で自賠責保険分の支払分を自賠責保険に請求することになります。 この時、自賠責保険が認定する後遺障害がわからなければ、 後で自賠責保険が認定する後遺障害と任意保険会社が認定する後遺障害が食い違ったときに、 任意保険会社が自賠責保険より受け取ることができる金額が少なくなってしまう可能性があるからです。そのために、 任意保険会社が被害者に一括で支払うよりも「事前に認定」してもらう手続を定めているのです。

 

被害者請求には、以下のようなメリットがあります。

 

 被害者請求のメリット

 

1 事前にまとまったお金を受け取ることができる

2 提出した資料を自ら把握することができる

3 任意保険会社との後日の交渉が有利に展開できる

4 後で訴訟を起こす時、印紙代が安くなる

5 被害者の過失が大きい時には金額的に有利になる可能性がある( P参照)

 

1 事前にまとまったお金を受け取ることができる

被害者請求を行い、後遺障害等級が認定されたときは、その等級に応じて損害賠償額を受領することができます。この場合の損害賠償額は、 左の図のとおりですが、一番軽い後遺障害である14級の場合でも75万円と規定されています。そのため、被害者請求を行えば、 最終的な示談を行う前に、ある程度まとまったお金を手にすることができるため、経済的な余裕が生まれることになります。

 特に、任意保険会社から治療費の打ち切りや休業損害の支払いの打ち切りを行われた後には、被害者請求が必須となる場合もあります。また、 弁護士に依頼して訴訟を行おうと考えた際の弁護士費用や、訴訟提起の際に必要となる印紙代を用意することも可能となります。

 そのため、経済的に逼迫しているようでしたら、被害者請求を行うことをおすすめします。

 

2 提出した資料を自ら把握することができる

 事前認定の方法を用いて後遺障害等級認定が行われると、被害者としては、 一体どのような資料が任意保険会社から損保料率機構に対して提出されたのかを通常知ることができなくなります。 これはあってはならないことですが、任意保険会社が後遺障害等級認定に必要な資料を提出し忘れていることがあります。この場合には、 再度必要な資料を添付したうえ異議申立を行わなければならなくなります。これでは、二度手間です。

また、任意保険会社から損保料率機構に資料を提出する際に、任意保険会社の顧問医の意見書が添付されることもあります。この意見書で、 本件の障害は交通事故によって生じた後遺障害ではない旨の意見が記されたりしたら、それだけ不利になります。

 

3 任意保険会社との後日の交渉が有利に展開できる

任意保険は、自賠責保険によってまかなわれない損害を填補するために存在します。ということは、被害者と示談を締結する際に、 自賠責保険額で示談が成立することになれば、任意保険会社は全く自腹を切らなくて良いことになります。そのため、任意保険会社としては、 「これが後遺障害分の賠償額になります。」などと言って、 自賠責保険の範囲内で示談を成立させようと迫られたというような話を被害者が聞くことがあります。 私たち弁護士にこのようなセリフを言うことはありませんので真偽のほどはわかりませんが、あってはならないことです。

 しかしながら、交通事故の被害者として相談に来る方の中には、自賠責保険と任意保険の区別がついていない方も大勢いらっしゃいます。 そのような方は、任意保険会社から上記のようなセリフを言われて、腑に落ちないながらも「保険金を受け取れるのだから…」 として示談に応じてしまいかねません。

 しかし、事前に被害者請求を行っておき、自賠責保険から損害賠償額を獲得しておけば、任意保険会社としても、後遺障害分で「0円」 というような示談書は提示しにくいでしょう。

 また、被害者請求を行っていれば、任意保険会社の担当者に、ある程度交通事故保険について知識がある、 手強い相手であることを示せるでしょう。

 

4 後で訴訟を起こす時、印紙代が安くなる

  訴訟を起こす時の印紙代は、訴訟で請求する額が大きくなればなるほど高額になっていきます。したがって、 被害者請求で事前にいくらかもらっておけば、訴訟の時に請求する金額が少なくなり、印紙代も節約できます。

 

事前認定のメリット

 

では、被害者請求ではなく、任意保険会社を通す事前認定のメリットを説明します。

 

1 手続が楽である。

事前認定は、任意保険会社が資料を収集し、不足資料は、指示をしてくれます。そして、資料をまとめて後遺障害認定に出してくれます。 したがって、自分で全ての手続を行われなければならない被害者請求に比べて手続的に楽だというメリットがあります。

 

2 遅延損害金が多くなる。

保険会社との話がまとまらないときは、裁判になります。裁判では、損害賠償金に対する事故日からの遅延損害金(年5%)を請求します。 この遅延損害金は、損害額が多ければ多いほど、多額になります。しかし、被害者請求で事前にまとまったお金をもらっておくと、 その分だけ総額が少なくなるので、遅延損害金も少なくなります。この遅延損害金を狙って訴訟を引き延ばしたりするのはお勧めしませんが、 最後の判決までいく場合には、一応のメリットとして説明しておきます。


被害者請求により、自賠責保険会社から後遺障害分として受け取れる金額

 

 

自賠法別表第1

等級

保険金額

第1級

4,000万円

第2級

3,000万円

 

 

 

 

自賠法別表第2

等級

保険金額

第1級

3,000万円

第2級

2,590万円

第3級

2,219万円

第4級

1,889万円

第5級

1,574万円

第6級

1,296万円

第7級

1,051万円

第8級

819万円

第9級

616万円

第10級

461万円

第11級

331万円

第12級

224万円

第13条

139万円

第14条

75万円

 

 

 

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逸失利益で問題となる後遺症

 逸失利益とは、 後遺障害を負ったことにより、事故前の労働を行うことができなくなり、収入が減少するために失われる利益を意味します。

そのため、以下の後遺障害については、後遺障害と認定されたとしても労働能力が喪失していないのではないかという点で問題になります。

     外貌醜状、歯牙障害

     嗅覚・味覚障害

     脾臓摘出

     骨盤骨・鎖骨・脊柱変形

 

 

外貌醜状・歯牙障害について

 

外貌醜状や歯牙障害は、それ自体では肉体的な労働能力に影響を与えません。

しかしながら、就職や対人折衝において不利益が生じることは容易に推測できるため、労働能力が全く喪失していないと考えることも困難です。 そのため、判例上も逸失利益を認めるものと、認めないものに分かれています。

もっとも、外貌醜状や歯牙障害といえども、その部位や程度又は職種や年齢という要素は、人それぞれ異なるため、 具体的な事情に沿って個別的に労働能力が喪失したといえるのかを判断すべきでしょう。

たとえば、女優の顔面醜状が労働能力を喪失させたと認められることには、さほど異論が無いと思われます。これに対して、 背部など日常露出しない箇所の醜状痕については、労働能力が喪失していないと判断されることが多いでしょう。

外貌醜状や歯牙障害について逸失利益が認められた判例として、以下のような判例があります。

 

     18歳客室乗務員専門学校生の顔面醜状(7級)について、18歳から67歳までの48年間20%の労働能力喪失を認めた事例 (広島高裁岡山支部平成10.3.26)

     顔面醜状(12級)と歯牙障害(12級)で併合11級の男児について、18歳から67歳まで10%の労働能力喪失を認めた事例 (大阪地裁平成6.4.25)

     6歳の女児の顔面醜状(7級)につき、18歳から67歳まで40%の労働能力喪失を認めた事例(浦和地裁昭和57.9.27)

 

もっとも、仮に労働能力が喪失していないとされたとしても、後遺症慰謝料を増額する判例も少なくありません。そのため、保険会社に 「顔面醜状では逸失利益は出ませんよ」と言われても、直ちに引き下がってしまうことはないでしょう。

顔面醜状について慰謝料増額を行った判例を参考までにあげておきます。ちなみに、7級の後遺症慰謝料の裁判基準は1000万円です。

 

     46歳の女性(スナック経営者)の顔面醜状(7級)につき、逸失利益を認められなかったことなどを考慮して2500万円の慰謝料 (入通院慰謝料を含む)を認めた(広島地裁福山支部昭和61.1.24)

     30歳の女性(主婦)の顔面醜状(7級)につき、逸失利益は否定されたが、1200万円の慰謝料が認められた(仙台地裁平成7.2.6)

 

 

嗅覚・味覚障害について

 

いかなる障害の系列にも属さず、神経障害ではなくても、全体として神経障害に近い障害とみなされる場合には、 12級ないし14級が準用される場合があります。この例としては、嗅覚障害と味覚障害があります。

嗅覚障害の後遺障害等級は、嗅覚の減退で14級相当、嗅覚の脱失で12級相当とされています。また、味覚障害の後遺障害等級も同様に、 味覚の減退で14級相当、味覚の脱失で12級相当とされています。12級の労働能力喪失率は14%です。

味覚や嗅覚が減退または脱失してしまうと、日常生活が味気ないものとなってしまい、大変な苦痛を味わうこととなります。しかしながら、 嗅覚や味覚が減退または脱失したからといって、直ちに労働能力が喪失するかは疑問です。そのため、 これらについて労働能力が喪失したとして逸失利益が認められるか否かについて、判例上肯定するものと否定するものに分かれています。

具体的には、調理師や寿司職人、主婦などについては、労働能力の喪失を認められる傾向が強く、 嗅覚や味覚が職業を遂行する上で特に重視されない職業については、否定される可能性が高いといえます。

 

 

脾臓摘出について

 

脾臓摘出の後遺障害等級は、8級11号です。8級の労働能力喪失率は、45%とされています。しかし、 脾臓の機能について医学上未解明なこともあり、脾臓の喪失が労働能力を喪失するのか否かについては、 判例上否定するものと肯定するものに分かれています。また、肯定した際に認められる労働能力喪失率についても、45%~15% というように幅があります。

しなしながら、脾臓には血球を生産する機能や、細胞や異物の破壊処分、血球成分の貯留という役割が認められ、 また脾臓の摘出により感染防御能力が低下するという医学的な研究結果がある以上、労働能力が全く喪失しないとは言えないと思われます。

そのため、脾臓摘出の後遺障害を被った際に、保険会社が逸失利益を否定してきたとしても、直ちに諦めてはいけません。

 

 

骨盤骨・鎖骨・脊柱の変形について

 

腸骨からの採骨術が行われた場合に生じる骨盤骨変形については、12級5号が認められます。12級の労働能力喪失率は14%です。そして、 鎖骨変形についても同じく12級5号が認められます。

しかし、骨盤骨変形又は鎖骨変形について、労働能力喪失を認めることに判例は消極的です。これは、 採骨によって生じた骨盤骨の変形や鎖骨変形によっては、労働能力の喪失に直接結びつかないとの判断によるものです。

もっとも、具体的事情に照らし、労働能力が喪失したことを立証することができれば、これらの場合でも逸失利益は認められます。また、 変形によって生じた痛みによる労働能力に対する影響を立証できれば、神経症状に関する後遺症が残存したとして、 14級9号の認定を受けることができます。このように、骨盤骨変形や鎖骨変形では逸失利益が否定されたとしても、 神経症状の14級9号をもとに逸失利益を請求する方法がありますので、直ちに諦めてしまうことはないでしょう。

 

これらに対して、脊柱変形について労働能力喪失を認めることに判例は積極的な立場を示しています。 脊椎の骨折により脊椎の支持性と運動性の機能を減少させ、局所等に痛みを生じさせることがあるからです。

脊柱変形には、6級5号の「脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの」と11級7号の「脊柱に変形を残すもの」 という後遺障害等級が設けられています。6級の労働能力喪失率は67%であり、11級の労働能力喪失率は20%です。

これらの労働能力喪失率がそのまま適用される場合もありますが、被害者の年齢や骨折の程度などの事情次第では、 それ以下の労働能力喪失率が適用されることもあります。

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高次脳機能障害で自賠責等級より高い労働能力喪失率を認定した判例

 高次脳機能障害において自賠責等級より高い労働能力喪失率を認定した判例

高次脳機能障害は、外部から障害の有無・程度が認識し難いため、例え自賠責保険手続において後遺障害等級認定を受けていても、 等級評価の妥当性及び労働能力喪失率について、訴訟で争われることが多い点に特徴があります。

ここでは、裁判例において、自賠責後遺障害等級認定よりも高い労働能力喪失率を認定した事例を紹介します。

なお、裁判例において、高次脳機能障害における労働能力喪失率の認定にあたり、 主に考慮していた事情は以下のとおりです。

①就業について

・現在就業しているかどうか

・就業し始めたが辞めることとなった事情

・就業意欲の有無・程度

・周囲の協力その他の状況によっては就業可能か

・現在の就業の様子

 

 ②改善可能性について

 ・ 医証上の回復傾向

・リハビリ状況

 

③コミュニケーション能力

・コミュニケーション能力

・人格障害、易怒性、易興奮性の程度

・他人との会話が成り立つかどうか

・本人尋問の応答

 

④その他

・1人暮らし、金銭のやりくりできるか

・車を運転できるか

・ 本人尋問の不出頭

 

①自賠責認定5級の事案 

京都地判平成17年12月15日

(自保ジャーナル第1632号)

年齢

43歳 (事故時)

性別

男性

職業

嘱託勤務

傷害内容

左頭頂骨骨折、 脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、急性硬膜外血腫、外傷性てんかん、頚椎椎間板ヘルニア、 聴力障害

自賠責等級

高次脳5級2号、 嗅覚障害12級相当、味覚障害12級相当(併合4級)

自賠責基準喪失率92%

本判例等級

高次脳機能障害5級2号

喪失率

85%

概要

高次脳機能障害等併合4級後遺障害を残す原告の逸失利益算定において、勤務会社は、人格変化に困惑していたが、 デザイン能力を評価し解雇しなかった等の事情もあるため就労不能とはいえず、嗅覚・味覚障害は労働能力に影響しないとして、 労働能力喪失率は85%と認定した。

 

東京地判平成18年3月2日 (自保ジャーナル第1650号)

年齢

25歳 (事故時)

性別

女性

職業

ガラス工房勤務 (事故時)

傷害内容

左前頭骨骨折、 両側前頭葉脳挫傷、脳内出血、後頭部挫創、左肩甲骨骨折等

自賠責等級

高次脳機能障害5級2号、 嗅覚障害12級、醜状障害7級12号(併合3級)

自賠責基準喪失率79% (5級の場合)

本判例等級

同上

喪失率

92%

概要

25歳女子について、 自賠責の認定と同様の等級を認定したが、労働能力喪失率については、人格障害や易怒性・易興奮性等が認められ、 てんかん発作等のため現在も就業できていないことを重視し5級相当の79%ではなく、4級相当の92%を認定した。 (なお、嗅覚障害、醜状障害については労働能力への影響を否定し、後遺障害慰謝料で考慮した。)

 ②自賠責認定7級の事案

名古屋地判平成18年1月20日

(自保ジャーナル第1649号)

年齢

26歳 (事故時)

性別

女性

職業

会社員

傷害内容

脳挫傷、 肺挫傷、下顎骨骨折、右股関節脱臼骨折、両鎖骨骨折、肋骨骨折、右動眼神経麻痺

自賠責等級

高次脳機能障害7級4号、 右動眼神経麻痺併合11級(併合6級)

自賠責基準喪失率67%

本判例等級

高次脳機能障害7級4号、 右動眼神経麻痺併合11級(併合6級)

喪失率

75%

概要

26歳女子大卒会社員が自賠責認定高次脳機能障害7級等併合6級後遺障害を残した事案につき、法廷での尋問結果等をふまえ、 自賠責同様高次脳機能障害は7級、併合6級が相当と認定したが、就労を維持するためには非常な困難が伴うとし、 労働能力喪失率は5級との中間値に近い75%と認定した

 

横浜地判平成12年8月24日

(自保ジャーナル第1370号)

年齢

53歳 (事故時)

性別

男性

職業

やきとり屋・大人のおもちゃの店の経営

傷害内容

脳挫傷、外傷性てんかん、左前腕骨骨折、左尺骨偽関節、左膝複雑靱帯損傷、左腓骨神経麻痺、 歯牙欠損

自賠責等級

高次脳機能障害7級

自賠責基準喪失率56%

本判例等級

高次脳機能障害5級2号、左尺骨偽関節・左膝同様関節及び左腓骨神経麻痺12級7号(併合4級)

喪失率

92%

概要

自賠責では、高次脳機能障害7級の後遺障害を残した53歳男子について、 知的労働は不可能であるなどとする鑑定結果を重視し、「原告の労働能力は、 本件事故による後遺障害により高度に喪失したと認められるが、軽作業程度の労働をする能力は残存しているものと認められる」 として、高次脳機能障害は5級2号(併合4級)とし、労働能力喪失率92%を認めた

 

 

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高次脳機能障害における常時介護と随時介護

1 介護には、どんな種類があるか

 

介護には一般的に、身体介護として、食事介助、排泄介助、衣類の脱着介助、身体整容、入浴介助・清拭、洗面、 体位交換、移乗・移動介助、通院・外出介助、就寝・起床介助、生活援助として、掃除、洗濯、衣類の整理・補修、一般的な調理、 配膳・下膳、買い物、薬の受け取りなどがあります。

 

高次脳機能障害者に、同時に身体の麻痺等が場合には、 その障害の程度に応じて上記一般的な介護が必要となることもあります。しかし、上記介護以外にも、看視、 声掛けのような従来の介護とは異なった態様の介護も必要となっています。

 

2 介護の要否と後遺障害等級

 

自賠責保険の後遺障害等級については、 第3級までの高次脳機能障害の等級認定は以下のような基準に従って判断されます。   

 

 

別表第1

第1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの

別表第1

第2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。 身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、 家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの

別表第2

第3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、 介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、 円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、 困難なもの

 

別表第2第3級3号が、「終身労務に服することができないもの」とされているように、 上記3つのいずれの等級も、労働能力喪失率は100%とされています。ところが、保険金額は、別表第1第1級1号が4000万円、 別表第1第2級1号が3000万円、別表第2第3級3号が2219万円と異なった金額となっています。

従来、自賠責保険では、後遺障害者に対する介護に要する費用が保険金支払いの対象外とされていました。 そのため、たとえ介護が必要な後遺障害があっても、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」であれば、 第1級3号として3000万円の保険金額、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」であれば、 第2級3号として2590万円の保険金額が定められているのみでした。

しかし、平成12年6月28日の自賠責保険審議会答申において、「重度の後遺障害者の状況を踏まえれば、 今後は介護に要する費用を保険金としても支払の対象とすべきである。」「また、その際には、介護を要する重度の後遺障害者に対し、 逸失利益等については現行の保険金限度額を適用した上で、それとは別枠で介護に要する費用を支給することとし、 それに係る限度額を設定すべきである。」などと指摘されていたことからも分かるように、 遷延性意識障害のように介護が必要な障害が残存した場合には、従来の保険金額では到底自賠法の目的である「被害者の保護」 を図ることができないと考えられるようになりました。

そこで、平成14年4月1日から施行された平成13年政令519号によって、 介護を必要とする後遺障害に適用される別表1が新設され、後遺障害等級の表は、別表1と別表2の二つにわかれることとなりました。 このように別表1が新設されたことによって、介護が必要な場合の自賠責保険金額を、常時介護の場合には4000万円、 随時介護の場合には3000万円とそれぞれ引き上げられることとなったのです。

このように、 高次脳機能障害において適用される別表第1第1級1号及び別表第1第2級1号と別表第2第3級3号との基本的な違いは、 介護を要する後遺障害であるか否かということになります。

3 1級1号と2級1号の違い

上述のように、平成12年認定システムにおける報告書に示された「等級認定にあたっての考え方」によって、 各等級の認定基準の補足説明はなされているものの、そもそも介護という言葉自体の曖昧さもあり、 どのような介護態様によって第1級1号と第2級2号に分類されるかは慎重に検討されなければなりません。

ここで、重要な役割を果たすのは、自賠責保険が準拠する労災保険の基準ということになります。

平成15年8月8日基発第0808002号

 

等級

高次脳機能障害における障害等級認定の基準

第1級

の3

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、 常に他人の介護を要するもの

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・ 更衣等に常時介護を要するもの

又は

b 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、 常時監視を要するもの

第2級

の2の2

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・ 更衣等に随時介護を要するもの

又は

b 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、 頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

又は

c 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、 外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

 

上記のように、労災保険の基準によるとある程度詳細ないくつかの例示がなされている。 生命維持に必要な身のまわりの動作、ADL(Activities of Daily Life)である、食事・入浴・用便・ 更衣等に必要な介護が常時介護か随時介護かによって1級と2級が分かれることもあるし、高度の痴ほうや情意(感情と意志) が荒廃しており常時の監視が必要なのか、そこまでいかず障害にとどまるため随時の監視で足りるとして2級になることもある。 自宅内の日常生活動作が一応できれば常時介護は必要でないため1級とはならず、 1人での外出が困難で介護が必要となる場合には2級となることが分かる。

 もっとも、このような常時介護と随時介護の違いはあくまで程度の問題であり、 明確に区別することはできない。高次脳機能障害においては、身体の麻痺が併存することが多く、 そのような状態であれば介護の必要性がより増し、高い等級が認定される可能性が高くなることは当然であるが、結局、 精神症状等についての具体的所見や日常生活動作検査表、日常生活状況報告書、神経心理学的検査結果等を総合考慮して、 常時介護かあるいは随時介護で足りるのか判断することとなると思われる。

 

4 介護保険制度における要介護認定と自賠責等級との関係

 

介護保険制度においても、その介護状態に応じて以下のような仕組みで要介護度認定がなされます。

 

 

(介護保険制度における要介護認定の仕組み)

 

1 要介護認定とは

 

○介護保険制度では、寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、 家事や身支度等の日常生活に支援が必要になった状態(要支援状態)になった場合に、介護サービスを受けることができる。

○この要介護状態や要支援状態にあるかどうか、要介護状態にあるとすればどの程度かの判定を行うのが要介護認定であり、 保険者である市町村に設置される介護認定審査会で判定される。

○要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める。

 

2 要介護認定の流れ(介護保険法27条)

 

○介護認定審査会は、保険・医療・福祉の学識経験者より構成され、 高齢者の心身の状況調査及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定の結果(一次判定) と主治医の意見書等に基づき審査判定を行う。

 

 

 

3 要介護認定基準について

 

  要介護認定は、「介護の手間」を表す「ものさし」としての時間である「要介護認定等基準時間」を下記基準にあてはめ、 さらに痴呆性高齢者の指標を加味して実施するもので、 「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11430日厚生省令第58号) 」として定められている。

 

 要介護認定等基準時間の分類

 

直接生活介助

入浴、排せつ、食事等の介護

間接生活介助

洗濯、掃除等の家事援助等

問題行動関連行為

徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等

機能訓練関連行為

歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練

医療関連行為

輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助

 

 要介護認定等基準

 

要支援1

上記5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満

またはこれに相当する状態

要支援2

要支援状態の継続見込期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減または悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態、 またはこれに相当する状態

要介護1

上記5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満

またはこれに相当する状態(要支援2の状態を除く。)

要介護2

上記5分野の要介護認定等基準時間が50分以上70分未満

またはこれに相当する状態

要介護3

上記5分野の要介護認定等基準時間が70分以上90分未満

またはこれに相当する状態

要介護4

上記5分野の要介護認定等基準時間が90分以上110分未満

またはこれに相当する状態

要介護5

上記5分野の要介護認定等基準時間が110

またはこれに相当する状態

 

 

介護保険制度は、年齢及び障害の原因によって給付対象者を制限しているため、 交通事故による後遺症によって上記基準に当てはまる要介護状態となった者が必ず要介護認定を受けられるわけではありません。 仮に交通事故の被害者が上記基準によって要介護認定を受けられる場合にも、 要介護度と自賠責等級との間には直接の関係はありません。

ただ、要介護度5と自賠1級とはだいたい対応し、また、要介護度5、4、3だと自賠責等級の1, 2級のどれかに当たる可能性はあります。しかし、要介護度の2と1では、自賠法上の1, 2級とはなりにくいという意見があります(日本交通法学会編『交通法研究』第30号103頁)。

 

実際に、介護保険制度の要介護認定の申請がなされたが市町村の判断で非該当とされた事案において、 自賠責等級は1級の認定がなされ、裁判においても自賠法上の基準に則った損害賠償が認められた

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高次脳機能障害の後遺障害等級

1 高次脳機能障害の自賠責後遺障害等級

 

最近、「高次脳機能障害」という言葉がマスコミで使われるようになりました。高次脳機能というのは、高レベルの脳の働きのことです。つまり、 過去の物事を記憶し、その記憶を基に判断し、物事に注意を向け、また人格などを作り出している機能のことです。

 

脳の障害には、脳が器質的に損傷したことによる「器質性の障害」と脳の器質的損傷が認められない「非器質性の障害」とに分類されますが、 一般的に交通事故の高次脳機能障害という場合には、脳が器質的に損傷した「器質性の障害」の場合を指します。

 

交通事故によって頭部外傷を受け、意識障害を起こし、脳質拡大や縮小等の過程を経て、その回復後に認知障害(記憶力障害、集中力低下など) や人格変性(攻撃性、幼稚性など)が生じた状態を高次脳機能障害といいます。

 

高次脳機能障害はその症状から、「神経系統の機能又は精神に著しい障害」にあたるものとして、それぞれ、別表第1・1級1号、同・2級1号、 別表第2(以下同)・3級3号、5級2号、7級4号、9級10号に分類されています。そして、そのいずれの等級に該当するかについては、 従来の等級表に加えて、高次脳機能障害認定システム確立検討委員会の平成12年12月18日付報告書 「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」によって「補足的な考え方」が付されました。

 

高次脳機能障害については、その程度に応じて以下のとおり後遺障害等級が認められています。

 

別表第1、1級1号

 

<認定基準>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

 

<補足的な考え方>

身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介助を要するもの

※生活維持に必要な身の回り動作=食事・入浴・ 用便・更衣等

 

別表第1、2級1号

 

<認定基準>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」

<補足的な考え方>

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって1人で外出することができず、日常の生活範囲な自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、 食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、 家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの

 

別表第2、3級3号

 

<認定基準>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」

<補足的な考え方>
自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、 介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、 円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの


別表第、5級2号

 

<認定基準>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

<補足的な考え方>
単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、 環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、 職場の理解と援助を欠かすことができないもの


別表第2、7級4号

 

<認定基準>

「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

<補足的な考え方>
一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、 ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの