RSDの判例

 () 労働能力喪失率について

 ア 総論
   RSDは、強い持続的な疼痛刺激が生じますが、
「痛みの程度」を客観的にはかることは困難です。したがって、基本的には客観的所見が重視されます。

(例)骨萎縮   X線、骨シンチグラフィー

筋萎縮   MRI

神経障害  筋電図

皮膚変化  サーモグラフィー etc

 

・上記客観的所見を前提としつつ、具体的な症状や労働への影響を踏まえて喪失率が判断されます。

 

・RSDの該当性の有無は、必ずしも喪失率に直接影響するわけではありません(RSDに該当せずとも、 等級判断しないで30%の喪失率を認定した高裁判例(高松H13.3.23)も存在する)

しかし、近時の裁判例では、RSD該当性を判断して、 後遺障害の程度を決めるものが多く、 RSD該当性の有無は重要といえます。

該当する場合の喪失率は、5%~90%(静岡地裁浜松支部H12.12.26、 等級認定なし、素因65%)と様々ですが、 等級通りの喪失率が認定されるのが一般的(減収ない場合は別。 大高H18.8.30参照)

 

イ 各論

 

  判例の中には、自賠責で認定された後遺障害等級よりも高い労働能力喪失率を認定した事例があります。

 

<自賠9級で35% より高い喪失率を認定した裁判例>

・56%  横浜H20.6.13 

RSDについては、 その症状程度、疼痛の程度、これに基づく関節等機能障害の程度は、区々であり、骨萎縮や関節拘縮が認められ、 その結果としての4肢の機能障害が認められるものにあっては、 さらに、重い等級に該当する余地はあるとみるべき」    ※  立証資料としてDVD

 

 

  <自賠12級で14% より高い喪失率を認定した裁判例>

56%   東地H19.7.23

症状固定後も週最低3回、 多いときで45回の治療、 1回の治療で5箇所の局所麻酔が必要な事案

 

 ・50%   札地H18.1.24

主婦兼美容師で、美容業部分を50 (後遺症により閉店)と認定 (主婦は14% )。

 

27%   東地H20.3.18

IASP基準に該当しなくても訴訟上はこれに拘束されないと判断

 

<自賠14級で5% より高い喪失率を認定した裁判例>

 ・30 (15年間)  京都H17.1.20

右上肢疼痛等につき、RSDであるとの確定的診断は困難としつつ、腫脹等から因果関係を認め上記認定(もっとも、 素因減額35 )

 

() 喪失期間

自賠責9級以上の場合は、 67歳までが通常と考えられる。

それ以外(非該当~12級)は、 10年で制限される例、20年も逓減方式の例も見受けられる。

 

() 素因減額

ア 一般論

・遺伝的な素因…交感神経活動が活発な体質(発汗亢進、 手足の冷えや血流傷害、赤面、失神や偏頭痛)

・心因的素因…依存的正確、情緒不安定、精神的傷病

・ほとんどの裁判例で何らかの素因減額がされています。減額される減額率は1割~8割と様々ですが、 2~3割が比較的多いようです。

 

イ 裁判例

 

<5割>

東地H19.11.7 

・事故前のRSDの既往のため、感受性高い

・事故の衝撃は軽微

・完璧主義、ストレス貯め易い、乖離傷害、幼少時代の虐待、自傷行為、

 

名地H18.9.29

・事故以前から頚肩腕症候群と診断、鎮痛薬の局部注射の経験

・脊柱管狭窄+心的素因

 

<3割5分>

前掲京都H17.1.20

・統合失調症

 

   <2割>

京都H16.3.24

・糖尿病

 

 ウ 心因的要素について

・心因的要素による素因減額を安易に認めるべきではないという考えも

(前掲横浜H20.6.13はこの旨を明示して素因減額否定)

・心的素因を否定した重要な判例として、名地H16.7.28は必ず参照すべきと思われます。

交通事故の被害者は、 治療が長期化し、その補償交渉が進展しない場合には、 精神的に不安定な状態に至ることはよく知られていること、これに、 RSDに対し有効な治療法がないこと (証拠略)を併せて考慮すれば、通常人が原告と同じ立場に置かれた場合には、 原告と同程度の精神的に不安定な状態になることは容易に推認され、原告のこの時期の言動を捉えて、 原告のRSDの発症が原告の精神的素因に起因すると認めることは到底できない

 

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