死亡慰謝料3750万円(大阪地裁平成18年7月26日判決)

被害者  19歳男子
慰謝料額 本人分  3,000万円
     近親者分   750万円 

大阪地裁 平成18年7月26日判決
交民集39巻4号1057頁

(主   文)
 1 被告B2、同C1、同D、同E1、同E2、同F1、同F2、同G1、同H1
及び同I1は、連帯して、原告A2に対し、2,673万2,338円及びうち2,
157万7,338円に対する平成15年3月16日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
 2 被告B2、同C1、同D、同E1、同E2、同F1、同F2、同G1、同H1
及び同I1は、連帯して、原告A3に対し、2,673万2,338円及びうち2,
157万7,338円に対する平成15年3月16日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
 3 被告B2、同C1、同D、同E1、同E2、同F1、同F2、同G1、同H1
及び同I1は、連帯して、原告A4に対し、150万円を支払え。
 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 5 訴訟費用は、これを16分し、その1を被告B2の、その1を同C1の、その
1を同Dの、その1を同E1の、その1を同E2の、その1を同F1の、その1を同
F2の、その1を同G1の、その1を同H1の、その1を同I1の各負担とし、その
余を原告らの負担とする。
 6 この判決は、第1項ないし第3項に限り、仮に執行することができる。

(事実及び理由)
第1 請求
 1 被告らは、連帯して、原告A2に対し、4,908万5,353円及びうち3,
658万5,353円に対する平成15年3月16日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
 2 被告らは、連帯して、原告A3に対し、4,908万5,353円及びうち3,
658万5,353円に対する平成15年3月16日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
 3 被告らは、連帯して、原告A4に対し、500万円を支払え。
第2 事案の概要
 1 本件は、B1、被告C1、同E1、同F1、同G1及び同H1(いずれも当時
未成年)の危険運転行為によって被害者A1(当時19歳)の命が奪われたと主張す
る同人の遺族が原告となって、前記の被告少年ら、その親権者である被告B2、同C
2、同C3、同E2、同F2、同G2、同G3、同H2及び同H3並びに関係車両の
所有者である被告D及び同I1を被告として、被告少年らに対しては民法709条、
同法719条1項前段、同条2項及び自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。
)3条に基づき、被告少年らの親権者らに対しては民法709条に基づき、関係車両
の所有者らに対しては自賠法3条に基づき、それぞれ損害賠償(原告A2及び同A3
については、各人がA1から相続する損害賠償請求権の損害額から弁護士費用相当額
を控除した部分に対する遅延損害金の請求を含む。)を求めた事案である。
 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)
 (1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(甲1、3、4)
 以下のとおり、本件事故が発生した。
   ア 日時 平成15年3月16日午前5時10分ころ
   イ 場所 大阪府守口市松月町1-18先路上(以下「本件事故現場」という。

   ウ 関係車両
    ① 自家用普通乗用自動車(以下「本件クラウン」という。)
      所有者 被告D(登録上の名義「D’」)
      運転者 B1
      同乗者 被告C1
    ② 自家用小型貨物自動車(以下「本件ハイエース」という。)
      所有者 被告I1
      運転者 被告E1
      同乗者 被告F1
      同乗者 被告G1
      同乗者 被告H1
    ③ 原動機付自転車(以下「本件被害原付」という。)
      運転者 A1(以下「本件被害者」という。)
   エ 態様 本件クラウンは、本件ハイエースの後方から本件事故現場付近の片
側1車線の道路を走行し、対向車線を進行してきた本件被害原付に急接近し、その後
急制動の措置を講じるなどしたが間に合わず、本件クラウン右前部が本件被害原付前
部に衝突し、本件被害者を本件被害原付もろとも路上に転倒させて本件クラウンの底
部に巻き込み、一旦停止したが、そのまま発進して同人を引きずったまま約212.
3㍍走行し、さらに同人の身体を後輪で轢過した。
 (2) 本件被害者の死亡(甲2、3)
 本件被害者(昭和58年9月1日生)は、本件事故当時19歳であったが、本件事
故により、その翌日である平成15年3月17日午前5時7分ころ、救急搬送された
大阪大学医学部附属病院において、右大腿上部轢過創に係る失血により死亡した。
 (3) 本件被害者と原告らとの関係等
   ア 原告A2は本件被害者の親権者母、原告A3は本件被害者の親権者父、原
告A4は本件被害者の兄である。
   イ 原告A2及び同A3は本件被害者の相続人であり、それぞれ2分の1ずつ
の割合で本件被害者を相続した。
 (4) 被告らについて
   ア 被告B2関係
 B1(昭和61年2月13日生)は、本件事故当時17歳であり、平成18年2月
13日に成人した。B1については、適式の呼出しを受けながら本件第1回口頭弁論
期日に欠席し、答弁書等も提出しなかったので、弁論を分離した上で、欠席判決が言
い渡され、同判決は確定した。
 被告B2は、本件事故当時、本件クラウンの運転者であったB1の親権者父であっ
た。
   イ 被告C1関係
 被告C1(昭和61年3月31日生)は、本件事故当時16歳であり、平成18年
3月31日に成人した。
 被告C2及び同C3は、本件事故当時、同C1の親権者父及び親権者母であった。
   ウ 被告D
 被告Dは、本件事故当時、本件クラウンの所有者であった。
   エ 被告E1関係
 被告E1(昭和60年6月27日生)は、本件事故当時17歳であり、平成17年
6月27日に成人した。
 被告E2は、本件事故当時、同E1の親権者父であった。
   オ 被告F1関係
 被告F1(昭和60年9月8日生)は、本件事故当時17歳であり、平成17年9
月8日に成人した。
 被告F2は、本件事故当時、同F1の親権者母であった。
   カ 被告G1関係
 被告G1(昭和60年7月11日生)は、本件事故当時17歳であり、平成17年
7月11日に成人した。
 被告G2及び同G3は、本件事故当時、同G1の親権者父及び親権者母であった。
   キ 被告H1関係
 被告H1(昭和60年6月6日生)は、本件事故当時17歳であり、平成17年6
月6日に成人した。
 被告H2及び同H3は、本件事故当時、同H1の親権者父及び親権者母であった。
   ク 被告I1
 被告I1は、本件事故当時、本件ハイエースの所有者であり、本件事故当時のB1
の勤務先の代表者であった。
   ケ 被告らの記載
 以上の被告らのうち、本件事故当時未成年であった被告C1、同E1、同F1、同
G1及び同H1をまとめて指すときは、以下「被告少年ら」と記す。
 B1及び被告少年らの親権者である被告B2、同C2、同C3、同E2、同F2、
同G2、同G3、同H2及び同H3をまとめて指すときは、以下「被告親権者ら」と
記す。
 本件クラウンの所有者である被告D及び本件ハイエースの所有者である同I1をま
とめて指すときは、以下「被告関係車両所有者ら」と記載する。
 (5) B1の刑事処分(甲3、弁論の全趣旨)
 B1は、本件事故後、業務上過失致死の被疑事実で逮捕され、大阪家庭裁判所に送
致され、その後、被疑事実が道路交通法違反、殺人に変更された上で大阪地方裁判所
に起訴され(逆送致)、平成16年1月9日、懲役5年以上8年以下の不定期刑が言
い渡され、その後、B1は、同判決について大阪高等裁判所へ控訴したが、却下され、
最高裁判所へ上告した。
 現在、B1は、刑が確定し、服役中である。
 3 争点
 (1) 被告少年らの責任の有無
   ア 被告C1の責任の有無
   イ 被告E1の責任の有無
   ウ 被告F1の責任の有無
   エ 被告G1の責任の有無
   オ 被告H1の責任の有無
 (2) 被告親権者らの責任の有無
   ア 被告B2の責任の有無
   イ 被告C2及び同C3の責任の有無
   ウ 被告E2の責任の有無
   エ 被告F2の責任の有無
   オ 被告G2及び同G3の責任の有無
   カ 被告H2及び同H3の責任の有無
 (3) 被告関係車両所有者らの責任の有無
   ア 被告Dの責任の有無
   イ 被告I1の責任の有無
 (4) 損害額
 4 被告少年らの責任の有無についての当事者の主張
 (1) 本件事故に至る経緯、被告少年らの共謀、運行供用者責任についての原告
らの主張
 B1と被告少年らの6名は不良少年グループであり、本件事故が起きた際には、お
やじ狩り(通行中の中年男性を襲って金銭を奪う行為)やひったくり、「やから」と
呼ばれる行為(バイクなどに自動車を急接近させて怖がらせておもしろがる行為。以
下かっこ付きで「やから」という。)をして遊ぶために深夜に集まっており、共謀の
上、「本件クラウンと本件ハイエースの2台の自動車に分乗して、そのような行為を
繰り返し行っていた。
 本件被害者が運転していた本件被害原付に衝突して本件事故を引き起こした本件ク
ラウンは、「やから」をした結果、交通の危険を生じさせたもので、これを直接運転
していたのはB1であったものの、本件被害者が本件クラウンとの衝突を回避できな
かったのは、その直前に被告E1が無免許で運転する本件ハイエースが先に本件被害
者に対して強引な「やから」をした結果、驚いた本件被害者が本件ハイエースに気を
とられて後ろを向いてしまい、本件クラウンが急接近してくることに気付くのが遅れ
たことが大きな原因となっていることが明らかである。
 一方、本件クラウン及び本件ハイエースに同乗していた被告C1、同F1、同G1
及び同H1は本件事故当時、自ら運転はしていなかったものの、乗車している全員が
普通自動車の免許を有していないことを相互に知りながら、口々に「やかれ」と言う
などして、B1や被告E1が「やから」をするのを積極的に認容、支持していた。
 したがって、B1と被告少年らは、共同して危険な行為を行い、本件事故を引き起
こしたものとみるべきであり、全員が本件事故の法的責任を負うべきである。
 また、本件クラウンは、その所有者である被告Dが被告F1の父親のF3にスペア
キーを貸していたことを奇貨として、被告F1が、それが無保険かつ無車検であるこ
とを知りながら、無断で持ち出したものであり、本件ハイエースは、B1が、同人の
勤務先であるI工務店の仕事の必要上、たまたま渡されていた本件ハイエースのスペ
アキーを返さずにそのまま持っていたことを奇貨として無断で持ち出したものである。
 これらの事実を前提とすると、B1及び被告少年らは、共謀の上、互いの走行を利
用し、共同して、極めて悪質な道路交通法違反、危険運転行為をしていたものとして、
6名全員が2台の自動車に対して運行支配及び運行利益を有していたものと解され、
本件事故により生じた本件被害者死亡の結果にかかる損害について、それぞれが運行
供用者責任を負うものと解すべきである。
 (2) 被告C1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告C1は、本件事故時に本件クラウンに同乗していた者である。
 被告C1は、B1が繰り返す道路交通法違反行為、危険運転行為を制止すべきであ
るのにそれをしなかったばかりか、少なくとも本件事故が発生するときまでは、B1
が「やから」をするのを容認、支持し、本件事故の際には、本件被害者が本件クラウ
ンの下部に巻き込まれており、死亡するかもしれないことを予見していながら、逃亡
することを優先して考え、B1に対し、運転を中止するようには言わなかった。
 したがって、被告C1は、人を死に至らしめる危険性を予見、認容しながら結果を
回避させるための措置を執らず、むしろ結果発生を助長したものとして、B1と共に、
共同不法行為者または幇助行為者として不法行為責任を負う。
   イ 被告C1の主張
 被告C1は不良グループの一員ではない。
 被告C1は高校3年間レスリング部の部活動に励んでいた。部活動は、毎週月曜日
から土曜日に練習があり、練習時間は、月曜日から金曜日は16時20分から18時
ないし19時までで、土曜日は昼から夕方までであった。そして、新人戦、インター
ハイ、国体等及びそれらの地方予選があり、試合があるときは、土日も休みがないと
いう状況であった。
 学業においては、高校1、2年の時には皆勤賞を受け、平成16年3月には高校を
無事卒業をしている。
 被告F1に誘われるまでは、夜間外出したことは一度もなく、不良グループとは縁
遠い状況であった。
 本件事故の発生日の前日に被告少年らと外出したときには、おやじ狩りに行くとい
うことは聞いていたが、おやじ狩りには参加せず、ドライブをするつもりで乗ってい
たものである。
 本件クラウンの運転手であるB1が「やから」をしたときには、「危ないぞ」と注
意したが「大丈夫だ」と言って無視された。自分から「やれやれ」などと言ったこと
は一度もない。
 本件クラウンが本件被害原付に衝突した直後には、B1に対し、「やばい、人や人
や」と言い、止めさせようとしたが、無視された。
 被告C1は、単に本件クラウンに同乗していただけであり、共同不法行為者とも幇
助者ともならない。
 (3) 被告E1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告E1は、本件ハイエースを運転していた者である。
 前記のとおり、本件被害者が本件クラウンとの衝突を回避できなかった原因の一つ
がその直前の本件ハイエースによる本件被害原付に対する「やから」であったのであ
るから、被告E1は、人を死に至らしめる危険性を予見、認容しながら結果を回避さ
せるための措置を執らず、むしろ結果発生を助長したものとして、B1と共に、共同
不法行為者または幇助行為者として不法行為責任を負う。
   イ 被告E1の主張
 被告E1が無免許運転を行った事実、B1も無免許であることを知っていた事実は
認めるが危険運転行為を助長したとの事実は否認し、共に被害者に対する生命侵害行
為を行った共犯者であるとの主張は争う。
 (4) 被告F1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告F1は、単に被告少年らのうちの一人というだけではなく、B1とは中学時代
からの親しい不良仲間で、お互いに他人所有の自動車を無断で持ち出しては「やか
ら」やおやじ狩りなどの悪質な違法行為を繰り返してきており、被告少年らの中では、
まとめ役、リーダー役の人物であった。本件事故の当日も、本件クラウンをB1に貸
与する一方、途中で被告E1に交代するまでは本件ハイエースを運転していた。
 以上の事実を前提とすると、リーダー役であった被告F1は、人を死に至らしめる
危険性を予見、認容しながら結果を回避させるための措置を執らず、むしろ結果発生
を助長したものとして、Bと共に、共同不法行為者または幇助行為者として不法行為
責任を負う。
   イ 被告F1の主張
 被告F1の父親が他人から借用していた本件クラウンを無断で持ち出し、無免許で
運転したことは認めるが、本件に至る経緯については、皆で計画など一切立てていな
い。行き当たりばったりで本件ハイエースと本件クラウンの2台であちらこちらを時
々運転を代わりながら走っていた。走り方は、運転している者の勝手なやり方で走っ
ていた。本件事故当時、前を走っていた本件ハイエースの助手席に乗っていたが、事
件の起こる数十分前から眠くなったので、シートを少し斜めに倒して半分眠っていた。
本件ハイエースが蛇行運転をしていたのは知っていたが、本件事故の時は本件ハイエ
ースと本件クラウンの間に他の自動車がいたので、本件クラウンがどのような走り方
をしていたのか全く知らない。まして、本件クラウンが事故を起こしたことなど全然
知らなかった。
 被告F1は、他の被告少年らとおやじ狩りや「やから」をしていたが、父親が借り
ている車を無断で持ち出しているため、運転をする者に対しては、「借りた車だから、
事故だけはおこさないように」とことあるごとに注意を喚起していた。本件事故は、
この注意を守らなかったB1の不注意であり、被告F1は、B1の共同不法行為者又
は幇助者には当たらない。
 暴走族に誘われて2、3回一緒に走ったことはあるが、所属はしていない。また、
B1とは「暴走族仲間」ではなく、ただの「悪仲間」である。
 (5) 被告G1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告G1は、他の被告少年らと同様、著しく非行化した少年であり、被告少年らの
一員として進んでおやじ狩りやひったくりを共に行ったほか、2台の自動車により
「やから」を繰り返すことを容認、支持していた。
 したがって、被告G1は、人を死に至らしめる危険性を予見、認容しながら結果を
回避させるための措置を執らず、むしろ結果発生を助長したものとして、B1と共に、
共同不法行為者または幇助行為者として不法行為責任を負う。
   イ 被告G1の主張
 被告G1は不良少年グループの一員ではない。「やかれ」などといったこともなく、
B1及び被告E1の「やから」を積極的に容認、支持したことはない。
 被告G1は、本件事故当時、高校生であり、学校にも真面目に通っていたし、バス
ケット部に所属して部活動にも熱心に励んでいた。
 被告G1は、自らのことを「おやじ狩りのプロ」と発言したことはあるが、このよ
うな発言は、他の少年との関係で、思春期特有の自分を強く見せよう、ことさらに非
行度が進んでいるように見せようとする意識から生まれた虚言にすぎない。友人に誘
われて一度だけおやじ狩りに参加したことがあるが、それも未遂に終わっている。
 被告G1は、本件事故の直前、被告E1が危険運転行為を行おうとしていることす
ら認識していなかったのであり、別車両のB1はもちろん、本件ハイエースを運転し
ていた被告E1との関係でも、共同して危険な行為を行っていたとはいえない。
 (6) 被告H1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告H1は、他の被告少年らと同様、著しく非行化した少年であり、被告少年らの
一員として進んでおやじ狩りやひったくりを共に行ったほか、2台の自動車により
「やから」を繰り返すことを容認、支持していた。
 したがって、被告H1は、人を死に至らしめる危険性を予見、認容しながら結果を
回避させるための措置を執らず、むしろ結果発生を助長したものとして、B1と共に、
共同不法行為者または幇助行為者として不法行為責任を負う。
   イ 被告H1の主張
 被告H1は不良少年グループではない。「やかれ」などといったことはなく、B1
及び被告E1の「やから」を積極的に容認、支持したこともない。
 被告H1は、本件事故当時高校生であり、学校にも真面目に通っており、成績も良
好であった。高校卒業後は、理系の大学に入学し、現在研究に励んでいる。
 被告H1は、本件事故の直前、被告E1が危険運転行為を行おうとしていることす
ら認識していなかったのであり、別車両の本件クラウンを運転していたB1とはもち
ろん、本件ハイエースを運転していた被告E1との関係でも、共同して危険な行為を
行っていたとはいえない。
 5 被告親権者らの責任の有無についての当事者の主張
 (1) 被告B2の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告B2は、本件事故当時、B1の親権者であり、同人を監督する義務を負ってい
た。
 B1は、被告F1とは中学の同級生で、「悪仲間」、「暴走族仲間」であった。
 B1には、以下のような前歴がある。
 平成13年10月1日 無免許運転
 平成14年3月14日 原動機付自転車(以下「原付」という。)免許取得
 平成14年5月5日 定員外乗車
 そして、平成14年9月5日 窃盗・占有離脱物横領、道交法違反(無免許運転)
の非行事実で保護観察(一般短期)に付されたにもかかわらず、途中から保護司と接
触をしなくなった。
 B1は、平成14年1月から被告I1の経営する工務店で勤務するようになったが、
同年10月ころ、同工務店で自動車の運転を覚え、平成15年2月初旬ころ、たまた
ま本件ハイエースのスペアキーを手渡されたことを奇貨としてそのまま所持し続け、
そのころから、被告F1らと共に、被告F1の家のダイハツムーブ、本件クラウン、
本件ハイエースを夜中に無断で持ち出して無免許運転をしては、おやじ狩りやひった
くりなどの非行のほか、「やから」などの危険行為を繰り返し、本件事故に至った。
 以上の事実からすると、B1は、原付や自動車の運転について非常な興味や関心を
抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身体、財産の尊
重等についての道徳観念や規範意識は極めて希薄であり、これを監督せず放任してい
ては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非常に高いこと
は容易にわかったはずであるから、親権者として、B1の運転、夜間外出及び非行少
年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、これらの行為を中止させるとか、
繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説いて厳重な注意を促すなどする
ことにより、交通事故の発生を防止するための必要かつ十分な措置を講ずるべきであ
ったし、そうしていれば、本件事故を回避することが可能であった。
 しかるに、被告B2は、いまだ保護観察中であったB1を漫然と放任し、何ら有効
な措置を執らなかった結果、B1の極めて悪質な不法行為により本件事故を発生させ
て本件被害者を死に至らしめてしまったのであるから、被告B2の親権者としての監
督義務違反とBの不法行為によって生じた本件事故による本件被害者の死の結果との
間には相当因果関係を認めることができる。
 したがって、被告B2は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告B2の主張
 被告B2は、本件事故発生まで、被告F1のことも、B1が自動車を運転していた
ことも知らなかった。被告B2は、息子であるB1が、本件被害者を死に至らしめた
ことにつき非常に申し訳なく思っている。
 ただ、被告B2には、本件事故による本件被害者の死亡との間に相当因果関係を認
め得るような監督義務違反はない。
 被告B2は、原付の窃盗や無免許運転をB1が行ったときには、厳しく叱って指導
をしていた。
 また、常日頃から自動車の危険性を説き、自動車を運転しないように言い聞かせて
きた。
 被告B2は、B1が自動車を無免許運転していることを知らなかった。B1の触法
歴は、①原付の窃盗及び占有離脱物横領という財産犯、②原付免許を取得するまでの
期間の原付の無免許運転、③定員外乗車(2人乗り)というものであり、自動車の無
免許運転、対向車線にはみ出して対向車の走行を妨害するという危険運転行為や被害
者の死亡という結果との間には連続性が到底認められず、親権者において予測不可能
であった。
 (2) 被告C2及び同C3の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告C2及び同C3は、いずれも、本件事故当時、被告C1の親権者であり、同人
を監督する義務を負っていた。
 被告C1は、被告E1及び同F1とは同じ高校に通う友人同士であった。
 被告C1は、平成15年3月初旬ころから、被告F2所有のダイハツムーブ、本件
クラウン、本件ハイエースを夜中に無断で持ち出して、B1や被告F1らと共に無免
許運転をしては、おやじ狩りやひったくりなどの非行のほか、「やから」などの危険
運転行為を繰り返し、本件事故に至っている。
 被告C1は、本件事故の約半月後の平成15年3月31日に原付免許を取得してい
る。
 以上の事実からすると、被告C1は、原付や自動車の運転について非常な興味や関
心を抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身体、財産
の尊重等についての道徳観念や規範意識が極めて希薄であって、これを監督せず放任
していては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非常に高
いことは容易にわかったはずであるから、親権者として、被告C1の運転、夜間外出
及び非行少年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、これらの行為を中止さ
せるとか、繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説いて厳重な注意を促
すなどすることにより、交通事故の発生を防止するための必要かつ十分な措置を講ず
るべきであったし、そうしていれば、本件事故を回避することが可能であった。
 しかるに、被告C2及び同C3は、漫然と被告C1を放任し、何ら有効な措置を執
らなかった結果、被告C1を含む被告少年らによる共同不法行為により本件事故を発
生させて被害者を死に至らしめてしまったのであるから、被告C2及び同C3が被告
C1に対して親権者としての監督義務を尽くしていなかったことが本件事故の一因と
なったということができ、被告C2及び同C3の監督義務違反と被告C1の不法行為
によって生じた本件事故による本件被害者の死の結果との間には相当因果関係を認め
ることができる。
 したがって、被告C2及び同C3は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告C2及び同C3の主張
 被告C1が原告主張のようなおやじ狩り、「ひったくり」、「やから」行為をした
ことは全くない。したがって、容認、黙認していたとか放任していたとかいうことは
ない。
 原告の主張は前提を欠き、失当である。
 (3) 被告E2の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告E2は、本件事故当時、被告E1の親権者であり、同人を監督する義務を負っ
ていた。
 被告E1は、被告C1及び同F1とは同じ高校に通う友人同士で、被告H1とはア
ルバイト先の友人同士であった。
 被告E1は、平成13年12月21日に原付免許を取得した後、平成14年に5回
も交通違反で検挙されている。
 被告E1は、中学3年生か高校1年生のときに、被告E2から自動車の運転を教え
られたが、平成15年3月初旬ころから、被告F2所有のダイハツムーブ、本件クラ
ウン、本件ハイエースを夜中に無断で持ち出して無免許運転をしては、おやじ狩りや
ひったくりなどの非行のほか、「やから」などの危険運転行為を繰り返し、本件事故
に至った。
 そして、以上の事実からすると、被告E1は、原付や自動車の運転について非常な
興味や関心を抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身
体、財産の尊重等についての道徳観念や規範意識は極めて希薄であり、これを監督せ
ず放任していては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非
常に高いことは容易にわかったはずであるから、親権者として、被告E1の運転、夜
間外出及び非行少年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、これらの行為を
中止させるとか、繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説いて厳重な注
意を促すなどすることにより、交通事故の発生を防止するための必要かつ十分な措置
を講ずるべきであったし、そうしていれば、本件事故を回避することが可能であった。
 しかるに、被告E2は、免許を取得できる年齢に達していない被告E1に自動車の
運転を教える一方、漫然と被告E1を放任し、何ら有効な措置を執らなかった結果、
被告E1を含む被告少年らによる共同不法行為により本件事故を発生させて被害者を
死に至らしめてしまったのであるから、被告E2の親権者としての監督義務違反と被
告E1の不法行為によって生じた本件事故による本件被害者の死の結果との間には相
当因果関係を認めることができる。
 したがって、被告E2は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告E2の主張
 被告E1が未成年で無免許であったことを知っていたことは認めるが、その余は否
認する。被告E2は、被告E1が無免許運転をしていたことを全く知らなかった。
 (4) 被告F2の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告F2は、本件事故当時、被告F1の親権者であり、同人を監督する義務を負っ
ていた。
 被告F1は、暴走族「ムキシバ」に所属していたことがあったが、B1とは中学の
同級生で、「悪仲間」「暴走族仲間」であり、被告C1及び同E1とは同じ高校に通
う友人同士であった。
 被告F1は、平成13年9月13日に原付免許を取得した後、平成14年5月にヘ
ルメット着用義務違反で2回検挙されている。
 被告F1は、中学2年のとき、父の友人の息子から自動車の運転を教えられたが、
平成14年6月ころ、アルバイト先の従業員の自動車を盗んで無免許運転をして交通
事故を起こし、逮捕されている。
 被告F1の自宅の玄関の下駄箱のフックには、被告F2が所有するダイハツムーブ
のキーがかけられていたが、平成14年夏ころからは、本件クラウンのスペアキーが
かけられており、自由に持ち出せる状態であった。
 平成15年2月初旬ころから、被告F1は、B1らと共に、被告F2所有のダイハ
ツムーブ、本件クラウン、本件ハイエースを夜中に無断で持ち出して無免許運転をし
ては、おやじ狩りやひったくりなどの非行のほか、「やから」などの危険行為を繰り
返し、本件事故に至った。
 被告F2は、平成15年3月初旬ころ、被告F1が無断でダイハツムーブの無免許
運転をしているのではないかと疑っていた。
 そして、以上の事実からすると、被告F1は、原付や自動車の運転について非常な
興味や関心を抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身
体、財産の尊重等についての道徳観念や規範意識は極めて希薄であり、これを監督せ
ず放任していては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非
常に高いことは容易にわかったはずであるから、親権者としては、自宅においてある
ダイハツムーブのキーや本件クラウンのスペアキーを厳重に管理すると共に、被告F
1の運転、夜間外出及び非行少年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、こ
れらの行為を中止させるとか、繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説
いて厳重な注意を促すなどすることにより、交通事故の発生を防止するための必要か
つ十分な措置を講ずるべきであったし、そうしていれば、本件事故を回避することが
可能であった。
 しかるに、被告F2は、漫然と被告F1を放任し、何ら有効な措置を執らなかった
結果、被告F1を含む被告少年らよる共同不法行為により本件事故を発生させて被害
者を死に至らしめてしまったのであるから、被告F2の親権者としての監督義務違反
と被告F1の不法行為によって生じた本件事故による本件被害者の死の結果との間に
は相当因果関係を認めることができる。
 したがって、被告F2は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告F2の主張
 被告F2の子である被告F1の行動は、被告F2が夜寝てから、明け方にかけての
行動で全く気が付かなかった。朝はいつも時間どおりに被告F1を起こして最寄の四
条畷駅まで車で送って行き、学校には適切に通わせていた。被告F1が無免許運転を
したり、他人の車へ同乗して遊んでいたとは、全くわからなかった。このようなこと
がわかっていたら監視の目を厳しくし、体を張ってでも力づくでも止めていたはずで
ある。
 被告F1は生まれつき心臓が悪く、身体障害者手帳(1級)を持っていて、現在、
手術を控えている体であって、普段から被告F1の行動は気にかけていた。
 被告F2は、平成15年2月ころ、ダイハツムーブの座席の位置が通常と異なって
いるような印象を受けたことから、被告F1がダイハツムーブを使っているのではな
いかという疑念が生じ、被告F1に対し、同車を使用していないか確認したところ、
被告F1は使用していない旨返事したものの、なお不審に思い、同車のキーはバック
へ納め、手元に置くようにした。被告F2は、その以降は同車の座席の位置や設定に
ついて違和感は感じていない。
 本件クラウンのキーについては、本件事故当時夫であったF3がすべて管理してい
た。
 このように、被告F2は、被告F1の監督につき、執れる処置は執ってきたのであ
り、母親だけが監督責任を問われるのは不当である。
 本件クラウンについて管理していたF3の監督責任を不問にするならば、被告F2
も同様にすべきである。
 (5) 被告G2及び同G3の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告G2及び同G3は、本件事故当時、被告G1の親権者であり、同人を監督する
義務を負っていた。
 被告G1は、被告H1とは中学のときに野球を通じて知り合い、友人同士であった。
 被告G1は、いわゆるおやじ狩りの常習者であり、自他共に「おやじ狩りのプロ」
と認めていた。
 平成15年3月初旬ころ、被告G1は、被告H1から、B1や被告F1らと共に、
夜中に自動車の無免許運転をしては、おやじ狩りや「やから」などを行ったことを聞
きつけ、被告H1に対し、「今度やるとき連れて行って。」と頼むなどし、本件事故
に至った。なお、被告G1は平成15年11月27日に原付免許を取得している。
 以上の事実からすると、被告G1は、原付や自動車の運転について非常な興味や関
心を抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身体、財産
の尊重等についての道徳観念や規範意識は極めて希薄であり、これを監督せず放任し
ていては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非常に高い
ことは容易にわかったはずであるから、親権者としては、被告G1の運転、夜間外出
及び非行少年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、これらの行為を中止さ
せるとか、繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説いて厳重な注意を促
すなどすることにより、交通事故の発生を防止するための必要かつ十分な措置を講ず
るべきであったし、そうしていれば、本件事故を回避することが可能であった。
 しかるに、被告G2及び同G3は、漫然と被告G1を放任し、何ら有効な措置を執
らなかった結果、被告G1を含む被告少年らよる共同不法行為により本件事故を発生
させて被害者を死に至らしめてしまったのであるから、被告G2及び同G3の親権者
としての監督義務違反と被告G1の不法行為によって生じた本件事故による本件被害
者の死の結果との間には相当因果関係を認めることができる。
 したがって、被告G2及び同G3は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告G2及び同G3の主張
 被告G1は、本件事故当時、原付免許も取得しておらず、自動車の運転について非
常な興味関心を抱いていた事実はない。不良少年グループの一員ではなく、非行少年
と交友を続けていた事実はない。
 被告G2及び同G3は、被告G1の帰りが遅くなると必ず注意をしていたし、夜間
に外出する場合は、行き先を確認しなければ許していなかった。さらに、外泊を希望
する場合は、月に1度程度に限って許容しており、無断外泊などはいっさい許容して
いなかった。
 本件事故当日は、被告G1が被告H1の自宅に宿泊すると申告したため、よく知っ
ていることもあって、送り出した。
 このように、被告G1及び同G3は監督義務を尽くしていた。
 また、被告G1は、本件事故を惹起したB1及び被告E1の危険運転行為について、
予見可能性も結果回避可能性もなかったのであり、不法行為責任を負わない。
 従って、被告G2及び同G3の監督と本件事故の間には、相当因果関係はもちろん、
条件関係すら認められない。
 (6) 被告H2及び同H3の責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告H2及び同H3は、本件事故当時、被告H1の親権者であり、同人を監督する
義務を負っていた。
 被告H1は、被告E1とは同じアルバイト先につとめる友人同士であり、被告G1
とは中学の時に野球を通じて知り合った友人同士であった。
 被告H1は、平成13年12月21日、原付免許を取得した後、平成14年に2回
交通違反で検挙されている。
 平成15年3月初旬ころから、被告H1は、B1らと共に、被告F2所有のダイハ
ツムーブ、本件クラウン、本件ハイエースを夜中に無断で持ち出して無免許運転をし
ては、おやじ狩りやひったくりなどの非行のほか、「やから」などの危険行為を繰り
返し、本件事故に至った。
 そして、以上の事実からすると、被告H1は、原付や自動車の運転について非常な
興味や関心を抱いている反面、非行少年らと交友を続け、交通安全、他者の生命、身
体、財産の尊重等についての道徳観念や規範意識は極めて希薄であり、これを監督せ
ず放任していては、交通事故などを容易に発生させ他者の権利を侵害する蓋然性が非
常に高いことは容易にわかったはずであるから、親権者としては、被告H1の運転、
夜間外出及び非行少年らとの交友等について絶えず重大な関心を払い、これらの行為
を中止させるとか、繰り返し交通事故の恐ろしさや安全運転の重要性を説いて厳重な
注意を促すなどすることにより、交通事故の発生を防止するための必要かつ十分な措
置を講ずるべきであったし、そうしていれば、本件事故を回避することが可能であっ
た。
 しかるに、被告H2及び同H3は、漫然と被告H1を放任し、何ら有効な措置を執
らなかった結果、被告H1を含む被告少年らよる共同不法行為により本件事故を発生
させて被害者を死に至らしめてしまったのであるから、被告H2及び同H3の親権者
としての監督義務違反と被告H1の不法行為によって生じた本件事故による本件被害
者の死の結果との間には相当因果関係を認めることができる。
 したがって、被告H2及び同H3は民法709条に基づく責任を負う。
   イ 被告H2及び同H3の主張
 被告H1は本件事故当時、原付免許も取得していたが、自動車の運転について非常
な興味関心を抱いていた事実はない。不良少年グループの一員ではなく、非行少年と
交友を続けていた事実はない。
 被告H2及び同H3は、被告H1の帰りが遅くなると携帯電話へ電話を掛けたり、
メールのやりとりなどで帰宅を促すなどして一定の監督を行っていた。
 このように、被告H2及び同H3は監督義務を尽くしていた。
 また、被告H1は、本件事故を惹起したB1及び被告E1の危険運転行為について、
予見可能性も結果回避可能性もなかったのであり、不法行為責任を負っていない。
 従って、被告H1及び同H3の監督と本件事故の間には、相当因果関係はもちろん、
条件関係すら認められない。
 6 被告関係車両所有者らの責任の有無についての当事者の主張
 (1) 被告Dの責任の有無
   ア 原告らの主張
 被告Dは、本件事故を引き起こした車両である本件クラウンの所有者として運行供
用者責任を負う。なお、以下の事実からして、所有者としての運行支配及び運行利益
は失われていない。
 被告Dは、本件クラウンが無保険かつ無車検であることを認識しながらあえて知人
であるF3にスペアキーを渡して自由に使用することを許諾していたところ、同人の
息子である被告F1が無断で持ち出して本件事故が発生したものである。
 被告Dは、その運行により生ずる危険を未然に防止すべき自動車の所有者としての
立場を十分自覚することなく、無責任にも、その管理を怠っていた。
   イ 被告Dの主張
 本件クラウンを被告Dが、被告F1の父であるF3に貸していたこと、本件クラウ
ンはいわゆる無保険、無車検であったことは認める。
 被告F1が車を運転できるとは思ってもみないことであり、本件クラウンを深夜乗
り回し、徘徊していたことは知らなかった。また、そうであったので、車を貸してい
たF3本件クラウンの鍵を厳重に保管するように告げることなどは思いもよらなかっ
た。
 (2) 被告I1の責任の有無
   ア 原告らの主張
 本件ハイエースは直接、本件被害原付と衝突したわけではないが、以下の事実から
して、被告I1は、本件ハイエースの運行供用者として、本件事故の責任を負うとい
うべきである。
 本件事故は、本件クラウン及び本件ハイエースの双方を利用したB1及び被告少年
ら全員による共同危険行為、共同不法行為である。
 本件ハイエースを運転していた被告E1と被告I1とは面識はないが、被告I1が
経営するI工務店では、その従業員がB1に自動車の運転を教えるなどしていたとこ
ろ、被告I1は本件ハイエースのスペアキーを厳重に管理することなく、従業員に預
けており、そのような状況下で、B1が本件ハイエースを無断で持ち出し、被告E1
に貸与することが可能となったのである。
 被告I1は、本件事故当時、「自動車の運行を事実上支配、管理することができ、
社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督しなければならない
立場」にあり、自分が本件ハイエースのスペアキーを預けた従業員からさらにスペア
キーを預かった無免許の従業員の少年であるB1が本件ハイエースを友人と共に勝手
に乗り回し、本件事故を発生させたことについて、運行供用者責任を負うべきである。
   イ 被告I1の主張
 被告I1は、本件ハイエースの鍵を、それを日頃仕事上使用する運転資格を有する
職人に預けていた。その管理方法に格別違法があるわけではない。B1が無断でこの
車両を持ち出すのは窃盗行為であり、それを防止する義務はない。本件事故を起こし
たのは本件クラウンであり、本件ハイエースの運行供用者責任はそこまで及ばない。
すなわち、危険運転行為が成立してもしなくても、本件のような事故防止の責任は本
件クラウンの運転者そのものに独自に存在するものであって、共同の危険運転行為が
成立することを根拠に事故を引き起こしていない車両の保有者にまで本件事故の損害
賠償責任を問うことは法的因果関係を超えるものである。
 7 損害額についての当事者の主張
 (1) 本件被害者自身の損害についての原告らの主張
   ア 死亡逸失利益 2,167万0,707円
 本件被害者が本件事故により死亡しなければ得られたはずの収入は、以下の要素に
よって算出すると2,167万0,707円である。
  (ア) 基礎収入 239万7,600円
 全年齢平均賃金月額19万9,800円の12倍である。
  (イ) 生活費控除率 50%
  (ウ) 就労可能年数 48年
  (エ) 対応ライプニッツ係数 18.077
 2,397,600×50%×18.077=21,670,707(円未満切捨
て。以下同じ。)
   イ 死亡慰謝料 5,000万円
 通常の死亡慰謝料は2,500万円とされているが、本件事故が極めて危険な行為
の結果であり、あまりにも身勝手かつ生命を軽んじる行為によるもので、著しく悪質
であることから、通常の死亡慰謝料の倍額が相当である。
   ウ 葬儀関係費用 150万円
   エ 弁護士費用 500万円
   オ 合計 7,817万0,707円
   カ 原告A2、原告A3の相続金額 各3,908万5,353円
 なお、本件事故日である平成15年3月16日からの民法所定年5分の遅延損害金
の元本は、上記弁護士費用を除いた、各3,658万5,353円とする。
 (2) 損害の填補についての被告らの主張
 原告らの損害に関しては、政府の自動車損害賠償保障事業により、2,991万円
の填補がされているので、この金額は損害額から控除されるべきである。
 (3) 原告ら固有の損害についての原告らの主張
 本件事故により原告らが受けた精神的苦痛は計り知れないものがあり、いかなる方
法によるも癒されないものではあるが、あえて慰謝するとすれば、以下の金額の慰謝
料によるべきである。
   ア 原告A2の固有の慰謝料 1,000万円
   イ 原告A3の固有の慰謝料 1,000万円
   ウ 原告A4の固有の慰謝料 500万円

第3 争点に対する判断
 1 被告少年らの責任の有無について
 (1) 本件事故以前の無免許運転行為等
 証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。
   ア B1は、平成15年2月初めころ、同人の勤務先のI工務店の従業員であ
ったJから、同工務店において業務に使用していた本件ハイエースのスペアキーを預
かり、その後、返却せずに所持し続け、同月中旬ころから、夜間に前記スペアキーを
使って被告I1に無断で本件ハイエースを無免許運転し、運転し終えると本件ハイエ
ースを元の駐車位置に戻すことを毎晩のように繰り返すようになった(甲16、17、
25)。
 被告F1は、平成15年2月ころ、両親が就寝した後、自宅玄関のフックにかけて
あった被告F2所有のダイハツムーブ(以下「ムーブ」という。)の鍵を持ち出し、
ムーブを両親に無断で無免許運転し、運転し終えるとムーブとその鍵を元の位置に戻
すことを繰り返すようになった(甲8、23)。
 被告F1は、中学校時代の同級生であったB1に対し、自動車を運転していること
を自慢し、B1も被告F1に対し、自分も同様に自動車を運転している旨述べ、この
ことがきっかけとなり、両名は夜間にそれぞれ自動車を持ち出し、一緒に無免許運転
をするようになった(甲16、23)。
   イ 被告F1は、当時同級生であった被告E1及び同C1に対して、無免許運
転のドライブに参加するよう誘い、被告C1は、同年2月中旬ころ、ムーブによるド
ライブに参加した(甲6、23)。
 その後、B1と被告F1は、数回、夜間に本件ハイエース及びムーブを無免許で運
転したが、同年3月初めころ、被告F1の両親が不審に思い、ムーブの鍵の保管場所
を変更したため、被告F1は、ムーブを運転することが困難になった(甲8、23)。
 本件クラウンは、被告Dが所有していたものであり、平成14年9月ころ、被告F
1の父親であるF3が被告Dから本件クラウンを借り受け、F宅の玄関においてその
鍵を保管し、同車両は、平成15年2月下旬までは、F宅先の路上に駐車していた
(甲13)。
 被告Dは、平成15年1月18日、本件クラウンを運転中に交通事故を起こし、そ
の後は、本件クラウンをF宅から徒歩2、3分のところにある駐車場で、被告Dの義
兄が賃借していたところに駐車するようになった(甲13、被告D)。
 被告F1は、前記の駐車場に本件クラウンが駐車されているのを発見し、その所在
を知るに至り、前記のとおり、鍵の保管場所が変更され、ムーブを運転することが困
難になった後は、本件クラウンを持ち出し、運転するようになった(被告D、甲2
3)。
 被告F1が本件クラウンを使用し始めた後、被告E1がドライブに参加するように
なったが、被告E1と同C1が参加した際、B1、被告F1、同E1及び同C1は、
原付の後方に本件ハイエースを近付けて原付の運転者を脅かし、その後間もなく本件
クラウンを同原付に近付けて脅かす方法による危険運転行為をしたことがあった(甲
6、10)。
 さらに、被告E1がアルバイト先の友人である被告H1を誘い、同年3月上旬ころ、
被告E1及び同H1がドライブに参加し、大阪市内でおやじ狩りをするなどした(甲
23)。
 被告H1は、中学校時代に野球の試合で知り合った被告G1に対し、B1らと共に
ドライブをし、おやじ狩りなどをして楽しんだことを話し、被告G1は、被告H1に
対し、次回は、自分も誘うように頼んだ(乙D6)。
 (2) 本件事故前日及び当日の行動
 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次のア及びイの各事実が認められる。
   ア 本件事故時までの行動
  (ア) 被告F1は、本件事故前日である平成15年3月15日午後9時ころ、
本件クラウンを運転してB1の自宅の近くまでB1を迎えに行き、B1を助手席に乗
車させた。両名は、本件クラウンに乗って本件ハイエースが駐車されていた南新田団
地に移動し、同所でB1は本件ハイエースのスペアキーを被告F1に渡し、被告F1
が本件ハイエースを、B1が本件クラウンをそれぞれ運転したが、被告Iが南新田団
地内の居酒屋にいることがわかったため、被告F1は、被告Iに本件ハイエースの無
断持出しが発覚することを恐れ、本件ハイエースを元の駐車位置に戻し、B1と被告
F1は、被告Iが南新田団地からいなくなり、同車両を持ち出せる状態になるまで時
間をつぶすことにし、同日午後10時ころ、枚方市出屋敷の被告H1及び同E1のア
ルバイト先の近くで被告H1及び同E1を本件クラウンに乗車させ、同日午後10時
30分ころ、京阪村野駅付近において被告G1を乗車させた(甲8、23、被告F
1)。
 その後、B1と被告F1は、再度、前記南新田団地に移動したが、まだ被告Iが同
団地内にいたため、さらに時間をつぶすことにし、守口市付近でおやじ狩りの対象と
なる人を探したり、石切霊園で肝試しをするなどした(甲17、23)。
 翌16日午前1時ころ、被告Iが南新田団地からいなくなり、本件ハイエースを持
ち出せる状態になったため、前記団地において、B1以外の4名(被告F1、同E1、
同H1、同G1)が本件ハイエースに移動し、被告F1が運転席、被告E1が助手席、
被告H1が右後部座席、被告G1が左後部座席にそれぞれ乗車し、被告F1が本件ハ
イエースを運転し、B1が引き続き本件クラウンを運転した(甲23)。
 B1と被告少年ら(被告C1を除く。)は、本件クラウン及び本件ハイエースで出
発した後、おやじ狩りの対象となる人を探し、原付の運転者に嫌がらせをするなどし
ながら香里園駅まで移動し、同日午前1時30分ころ、香里園駅の駐輪場で被告C1
が本件クラウンの助手席に乗車した(甲17、23)。
  (イ) その後、少年らは、おやじ狩りをするために、大阪市南部の中心街(い
わゆるミナミ)に向けて出発し、途中、本件クラウンと本件ハイエースで原付を追い
かけたり、追いかけた原付の運転者に被告E1と同G1が罵声を浴びせるなどした
(甲10、23)。
 B1と被告少年らは、ミナミに到着後、2人ずつ3組に分かれて引ったくりをする
こととし、そのうち、被告H1と同G1は通行中の女性から鞄をひったくった(甲1
1、12、23)。
 B1と被告少年らは、同日午前4時ころ、ミナミを出発し、その際、被告E1と同
F1は座席を交替し、それ以降、被告E1が本件ハイエースを運転した。B1と被告
少年らは、守口市駅周辺で中年男性に暴行を加えるなどしたが、金品を奪取するには
至らず、さらにおやじ狩りの対象となる人を探しながら、本件ハイエースが先行し、
本件クラウンがこれに続き、門真市駅、守口市駅等京阪電車沿線を走行し、その後、
本件ハイエースと本件クラウンが第三者が運転する別のクラウンを前後から挟む格好
で走行し、先行する本件ハイエースが蛇行運転をして後続の前記クラウンの走行を妨
害するなどし、本件ハイエースに同乗していた少年らは、その状況を見て楽しんでい
た(甲8、11、12、23、26)。
   イ 本件事故状況
 本件事故直前、本件ハイエースは、本件事故現場の交差点において信号待ちをして
おり、その際、本件ハイエースの対向車線では本件被害原付を含む2台の原付が並ん
で信号待ちをしていたところ、本件ハイエースに同乗していた少年ら(被告F1、同
G1、同H1)は前記2台の原付を発見し、本件ハイエース車内で、被告E1に対し、
「やかれ」「行け」などと言って前記2台の原付に対して危険運転行為をすることを
唆し、また、煽った。被告E1は、前記2台の原付のうち、道路中央線に近い方を走
行していた原付(本件被害原付)に対して危険運転行為(正面衝突する寸前まで接近
して急ハンドルで衝突をかわす行為)を行うことにし、対面信号の表示が青に変わる
と、対向車線の本件被害原付に向かって道路の進行方向に右斜め向きに加速しながら
本件ハイエースを走行させ、本件被害原付と正面衝突する寸前でハンドルを左方に切
って、原付の左方を通過し、本件ハイエースを元の走行車線に戻した(被告E1、被
告F1、甲8ないし10、12、23、26、27)。
 本件クラウンを運転するB1は、本件事故現場付近において、本件ハイエースの後
方を走行し、本件ハイエースが対向車線に進入するのを認識するとすぐに、本件ハイ
エースの後方約51.5㍍の地点において本件クラウンを対向車線に進入させ(被告
C1、甲5ないし7、14ないし19)、その後、対向車線を逆方向に走行してくる
本件被害原付を約39.8㍍先に認め、本件クラウンを本件被害原付に正面から急接
近させ、その後急制動の措置を講じるなどしたが間に合わず、本件クラウン右前部が
本件被害原付前部に衝突し、本件被害者を本件被害原付ごと路上に転倒させて本件ク
ラウンの底部に巻き込み、一旦停止したが、そのまま発進して同人を引きずったまま
約212.3㍍走行し、さらに

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