交通事故被害者のために弁護士が慰謝料を増額

交通事故で高次脳機能障害になった時の後遺障害等級と示談方法

交通事故により、被害者が頭部に重大なケガをした場合、高次脳機能障害という後遺障害を負ってしまうことがあります。

高次脳機能とは、高レベルの脳の働きのことです。

人間は、過去の物事を記憶し、その記憶をもとに判断を下し、物事に注意を向けます。

また、人によってさまざまな人格がありますが、こうした行動や人格などを高レベルで作り出しているのが本来、人間が持っている脳の機能です。

この機能が失われた状態を高次脳機能障害といいます。

高次脳機能障害を負ってしまうと、記憶力や集中力が著しく低下したり、感情のコントロールができなくなってしまうために、以前とは別人のように人格そのものが大きく変わってしまうことがあります。

また、後遺障害が重篤な場合は、介護なしでは食事や入浴などの日常の生活ができなくなってしまいます。

今回は、高次脳機能障害の後遺障害等級の種類から、介護が必要な場合の項目、損害賠償請求での注意ポイントまでを解説します。

高次脳機能障害には6段階の後遺障害等級がある

「自動車損害賠償保障法施行令」により、高次脳機能障害はその程度に応じて、次のように6段階の後遺障害等級が認められています。


<別表第1、1級1号>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

1級1号に認定されるのは、次の2つの場合があります。

①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
②高次脳機能障害による高度の痴呆や情意の荒廃があるために、常時監視を要するもの


<別表第1、2級1号>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」

2級1号に認定されるのは、次の3つの場合があります。

①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
②高次脳機能障害による痴呆、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため、随時監視を必要とするもの
③重篤な高次脳機能障害のため、自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの


<別表第2、3級3号>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」

日常生活での動作を行なうことができ、自宅周辺を1人で外出できるものの、次のうちひとつ以上に該当し、一般就労できない場合です。

①職場で他の人と意思疎通を図ることがまったくできない
②課題を与えられても手順通りに仕事を進めることができず、働くことができない
③作業に取り組んでも、その作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない
④たいした理由もなく突然、感情を爆発させ、職場で働くことができない


<別表第2、5級2号>

「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

次のひとつ以上の能力の大部分が失われているか、ひとつ以上の能力の半分程度が失われていることにより、単純繰り返し作業などの軽易な労働しかできず、頻繁な助言等が必要となる場合です。

①職場で他の人と意思疎通を図る能力
②課題を与えられて、手順通りに仕事を進める能力
③作業に集中する能力
④感情をコントロールする能力


<別表第2、7級4号>

「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

一般就労は維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどの理由から、一般人とは同等の作業ができず、時々、助言などが必要となる状態です。

<別表第2、9級10号>

「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」

一般就労は維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるため、たまに助言などが必要となる状態です。

後遺障害等級についてはこちらも参考にしてください

「自賠責後遺障害等級とはどのようなものですか?<弁護士が解説>」



高次脳機能障害認定のポイントとは?

後遺障害等級認定の際、被害者に高次脳機能障害の疑いがある場合、調査事務所は「頭部外傷後の意識障害についての所見」や「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」という書類を医療機関に送付し、被害者の関係者には「日常生活状況報告表」を送付します。

これらの書類が返送され、審査の結果、被害者に高次脳機能障害の疑いが生じた場合、損保料率機構本部審査会、または地区本部審査会の「高次脳機能障害専門部会」が審査を担当することになります。

高次脳機能検査の審査では、次の3つの項目と、その後の症状の経過などが重要なポイントになります。

①意識障害の有無と程度

意識障害について検査するのは、臨床上、脳外傷による高次脳機能障害は頭部外傷による意識障害の後に出現しやすい、ということに基づいているからです。

交通事故で頭部に打撲などがなくても、回転性の力が加わることで脳が激しく揺れて、神経細胞の繊維が広範囲に断裂して機能を失ってしまう場合があります。
これを、びまん性脳損傷(びまん性軸索損傷)といいます。

一次性びまん性脳損傷の場合は、交通事故直後に意識障害が発生しますが、二次性びまん性脳損傷の場合は、交通事故後しばらくしてから意識障害が発生します。

なお、意識障害については次の2つの判定があります。

・「昏睡~半昏睡で、刺激による開眼をしない程度の意識障害」か、「健忘症~軽症意識障害」かの判定

・意識障害が何時間、あるいは何日間続いたのかという期間の判定


②急性期における脳内出血の有無(画像所見)

急性期において脳内出血が確認される場合は、次の2点が判定基準となります。

・相当適度の軸索損傷が発生していると推定されること

・くも膜下血腫が認められる場合は、びまん性軸索損傷が推定されること



③脳室拡大および萎縮の有無

①と②の後、脳室拡大および萎縮が認められる場合も高次脳機能障害が疑われます。
この場合には、経時的な画像比較が必要になるため、一定期間ごとに画像を撮影しておく必要があります。

治療の過程で、被害者にこれらの事情があった場合には高次脳機能障害を疑い、高次脳機能検査を受けておく必要があります。

介護に関わる5つの損害賠償項目

高次脳機能障害のために介護が必要になった場合、被害者やその親族は次の5つの項目について損害賠償請求することができます。


①将来介護費

重度の後遺障害が残り、他人の介護を受けなければ生活できない場合に認められる費用です。

将来介護費は、次の計算式で算出します。

将来介護費 = 基準となる額 × 生存可能期間に対するライプニッツ係数

基準となる額は、職業付添人の場合は実費全額、近親者付添人の場合は1日につき8000円が目安とされています。

なお、この額は目安であるため、具体的な事情によっては増減することがあります。

生存可能期間は、原則として平均余命年数に従います。
ライプニッツ係数とは、現時点のお金の価値と将来のお金の価値が違うことから、その差を調整するための数値です。

一般的に、植物状態などの重い後遺障害を負った被害者は感染症にかかりやすいなどの理由から、通常よりも生存可能期間が短いとされます。

そのため、平均余命年数未満の生存可能期間を用いた判例もありますが、実務では平均余命までの生存期間を用いることのほうが多数です。

示談交渉で、被害者側の任意保険会社が短い期間を主張してきた場合、被害者側は平均余命いっぱいの生存可能期間をしっかりと主張するべきです。

ただし、これらは専門家でなければ難しい部分なので、弁護士に相談することをお勧めします。


②将来雑費


紙おむつやタオル、手袋、カテーテル、防水シートなど重度後遺障害者の介護のために消費される物品の費用です。

将来雑費は、次の計算式で算出します。

将来雑費 = 雑費の年額 × 生存可能期間に対するライプニッツ係数


なお、訴訟になった場合、立証のために領収書が必要になるので、しっかり保存しておくことが大切です。


③装具・器具等購入費


義手、義足、歩行補助器具、車椅子、メガネ、盲導犬費用、介護支援ベッド、介護用浴槽など後遺障害者が日常生活を送るために必要となる物品の費用です。


④家屋・自動車等改造費

浴室やトイレ、出入口など自宅の改造費や自動車改造費など、後遺障害者が日常生活を送るために必要となる費用です。


⑤補助・保佐・成年後見開始の審判手続き費用


被害者本人が正常な判断ができなくなってしまった場合は、本人に代わって訴訟追行等の手続きを行なうため、法定代理人を選任する必要があります。

その際に成年後見人や保佐人、または補助人を選任するためにかかる費用です。
これらの審判手続きにかかる費用は、必要かつ相当な範囲で損害として認められています。


なお、上記の費用以外にも当然ですが、慰謝料や逸失利益、治療費、通院費なども請求することができます。

詳しい解説はこちら⇒
「交通事故の傷害慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料について解説」

「交通事故の治療費や入院費などは、どこまで損害賠償請求できるのか?」


「交通事故における逸失利益で被害者が損をしないための知識」



示談や裁判で必要な成年後見制度とは?


後遺障害等級が認定されると、被害者は加害者側の保険会社と示談交渉をしていくことになります。

しかし、高次脳機能障害で後遺障害等級1・2・3級が認定された時は、被害者に示談を締結する判断能力が欠けている場合があります。
そうなると、被害者自身が示談や裁判の当事者となることができなくなってしまいます。

こうした場合、原則として家庭裁判所に成年後見開始の審判手続きを行なう必要があります。
その結果、選任された成年後見人が本人に代わって示談や訴訟を行なうことになります。

成年後見制度は、被害者本人の判断能力の程度によって、次のように区分されます。

・後見(本人の判断能力がまったくない場合)
・保佐(本人の判断能力が特に不十分な場合)
・補助(本人の判断能力が不十分な場合)


成年後見とは、1人で日常生活を送ることができないなど、本人の判断能力がまったくない場合になされるものです。

後見開始の審判とともに、本人(成年被後見人)を援助する人として成年後見人が選任されます。
成年後見人は、本人を代理して示談や訴訟を行ないます。


保佐とは、本人の判断能力は失われていないものの、特に不十分な場合になされるものです。

保佐開始の審判とともに、本人(被保佐人)を援助する人として保佐人が選任されます。

保佐開始の審判を受けた本人は、一定の重要な行為、たとえば金銭の賃借、不動産および自動車などの売買、自宅の増改築などを保佐人の同意なしに単独で行なうことができなくなります。

交通事故の損害賠償については、保佐人に代理権が与えられる場合もありますが、本人の同意が必要です。


補助とは、本人の判断能力が不十分な場合になされるものです。

補助開始の審判とともに、本人(被補助人)を援助する人として補助人が選任されます。

補助人は、本人が望む一定の事項について同意、取消、代理をすることで本人を援助していきます。

交通事故の損害賠償では、補助人に代理権が付与されることがありますが、本人の同意が必要です。



成年後見の申立における注意点

高次脳機能障害では、後見、保佐、補助のうちどの申立をすればいいのかわからない場合があります。
その際は、主治医の意見を参考にして、とりあえず近い類型の申立をすることになります。

裁判所から、「類型が異なる」という指摘を受ける場合がありますが、その際は申立をやり直す必要はなく、「申立の趣旨」の変更手続きを取ることになります。

そのため、まずは感覚で申立を行ない、その後は裁判所の指示にしたがって変更などの手続きを取ればいいでしょう。

これらの手続きには主治医の鑑定書が必要になるので、事前に主治医に協力を依頼しておくとスムーズに進みます。
その際の費用は別途、「交通事故による損害金」として請求することが認められています。

なお自賠責保険では、「問題が生じた場合には一切の責任を負う」という内容の念書を提出したうえで、成年後見人ではない者、通常は親族が保険金を受け取ることができる場合があります。

それは、つねに成年後見手続きが必要とすると、手続きに長い期間がかかるため、それでは被害者保護に欠ける場合があるからです。


裁判では介護の実態を立証する必要がある

高次脳機能障害を負った被害者には、損傷した脳の部位によってさまざまな症状が現れます。

体を自由に動かすことはできても、話す、聞く、読む、書くといったことができなくなる人がいます。

一方、話はできても、ボタンをかけたり手袋はめたりすることができなくなる、人の顔を認識できなくなる、同じ話を何度もする、自宅でトイレに行くのに迷ってしまう、つねにボーっとしている、突然怒りだす、お金をあるだけ使ってしまう、といった症状が出る人もいるため幅広い介護が必要になります。

常時介護は必要なくても、つねに監視をしていなければいけない場合もあります。

高次脳機能障害のそれぞれの症状に応じて介護の内容も変わってくるため、損害賠償で裁判になった場合は具体的な介護の実態を立証しなければいけません。

立証する場合、医師や介護に携わっている人の意見書や報告書なども裁判で提出しますが、現在ではビデオ機器の性能が向上して誰でも動画を撮影することができるので、被害者の様子をビデオ撮影して、その動画を提出したほうがわかりやすいといった面もあるでしょう。


「当法律事務所の解決事例①」
4歳の男児が交通事故の被害にあい、外傷性脳損傷などのケガを負ってしまいました。

まだ幼かったため、長期間の治療が必要で、保険会社から治療費などの支払いを受けていましたが、13歳になって症状固定と診断され、高次脳機能障害9級10号が認定されました。

ご両親は、後遺障害の等級が正しいのか判断できず、当法律事務所に相談され、今後の示談交渉などすべてを依頼されました。

その後、弁護士と保険会社の交渉が決裂したため、訴訟を提起。

保険会社は、被害者の祖父の過失を主張しましたが、最終的には過失はゼロとの判断で、結果として5200万円で和解が成立しました。

詳しい解説はこちら⇒
【高次脳機能障害】4歳男子で5200万円獲得



「当法律事務所の解決事例②」
48歳の会社員男性がバイクを運転中、赤信号無視のトラックに追突され、外傷性脳損傷などのケガを負いました。

治療中、高次脳機能障害の症状が現れ、男性は後遺障害等級5級が認定されました。

保険会社との示談交渉にあたり、被害者が不安を感じたため、当事務所が依頼を受けて交渉を開始しましたが、保険会社が5級の後遺障害等級について争ってきたことで弁護士が提訴。

最終的には裁判所の和解勧告にしたがい、7935万円で解決しました。

詳しい解説はこちら⇒
【高次脳機能障害】5級で約7900万円獲得




以上、高次脳機能障害の被害者と親族が知っておくべき後遺障害等級や損害賠償について解説しました。

高次脳機能障害は、その判断が難しく、また介護の問題も大変な負担になる場合があります。

加害者側の保険会社との示談交渉が起きた場合は、ひとりで悩まず弁護士に相談することをお勧めします。


  • 【交通事故の無料相談について】
    クリックすると動画再生します
  • 出張相談
  • 交通事故問題はお一人で悩まず弁護士へご相談ください
交通事故の弁護士相談はお気軽に
部位別・等級別解決実績 お客様の声
ムービー
  • 動画1
  • 動画2
最新解決実績 マスメディア実績
シミュレーション
  • 後遺症
  • 死亡事故
死亡事故ご遺族の方 後遺症の方
出版実績
  • 実績
詳しくはこちら
メディア実績
  • 実績2
詳しくはこちら
バックアップ ブログ
  • 依頼者の声
  • 解決実績
  • ご相談フォーム
  • 解説動画
  • 後遺症 死亡事故