交通事故被害者のために弁護士が慰謝料を増額

交通事故の慰謝料の相場と慰謝料が増額される場合とは?

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(1)交通事故の慰謝料とは?

交通事故の損害賠償金は、「慰謝料」のことだと思っている方もいるかもしれませんが、交通事故の損害賠償金は、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、逸失利益、葬儀費用などさまざまな項目の合計金額となり、慰謝料はその一部です。

慰謝料とは、簡単にいうと、精神的な苦痛を被ったことに対する損害賠償金のことです。

交通事故に関する慰謝料には、死亡慰謝料、後遺症慰謝料、傷害慰謝料があります。

慰謝料の額については、本来は、被害者が被った精神的損害についてそれぞれの事故ごとの事情を考慮して決めていくべきなのですが、毎回慰謝料をいくらにするのかをゼロから考えていくのでは時間がかかりすぎます。また精神的な苦痛は人それぞれで客観的にわからないものであるから裁判官の判断も難しく、裁判官によって金額に大きな差がでてしまうようなことがあっては、被害者のためにもなりません。

そこで、これまでの交通事故の裁判で認定された慰謝料額の総計などから、似たような事案ではだいたいいくらくらいの慰謝料を認めているのか、という慰謝料の相場が定められているのです。

これが裁判基準です。

裁判基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行している「損害賠償額算定基準」という本に記載されています。

この本は、表紙が赤いため通称「赤い本」と呼ばれていて、交通事故を扱う裁判官や弁護士等が必ず持っていて、参考にする本です。

内容は法律関係者向けの専門的なものですが、一般の方でも日弁連交通事故相談センター東京支部で購入することができます。

ただし、赤い本に記載されている裁判基準は、あくまで目安であって、必ずその金額にしなければならないというものではありません。

最終的には、具体的な事故の事情によって認定されることになるので、基準よりも少ない金額になる場合もあります。

同時に、保険会社が提示してくる慰謝料額は、裁判基準よりも少ない金額で提示してくる場合がほとんどなので注意が必要です。

また、裁判となった場合でも、日本の裁判の方法は弁論主義といって、当事者が主張したことしか判決の基礎にならない点に注意しなければなりません。

つまり、相場より多い額の慰謝料が認められる可能性がある事案であったとしても、被害者側の主張が相場の金額であった場合、裁判官が「この場合は相場よりも高額な慰謝料が認められますよ」とは言ってはくれないということです。

したがって被害者側が弁護士に依頼した場合、その弁護士が請求した慰謝料額が基礎となり、その請求額以上の判決はでません。

仮に、慰謝料が相場よりも多く認められる可能性がある事案の場合には、被害者側でその旨を積極的に主張していかないと、もらえたはずの慰謝料額がもらえないという場合もでてきてしまうのです。

そのようなことがないように、今回は、裁判基準での相場と、どのような場合に慰謝料が増額される可能性があるかをご説明したいと思います。

(2)慰謝料の相場

①死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料は、被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。

死亡事故の場合、被害者は死亡していて損害賠償金を受け取ることができないため、被害者の相続人が受け取ることになります。

裁判基準で定められている死亡慰謝料の相場は、以下のようになっています。

被害者が一家の支柱の場合   2800万円
被害者が母親、配偶者の場合  2500万円
被害者がその他の場合     2000万~2500万円

これを見ると、被害者の家庭での立場によって金額に差がつけられていることがわかります。

被害者が一家の支柱の場合とは、その被害者の家庭が、主に被害者の収入によって生活している場合をいいます。

被害者が母親、配偶者の場合とは、その被害者が子育てを行っていたり、家族のためにその家庭の家事全般を行っていたりする場合をいいます。

被害者がその他の場合とは、被害者が独身の男女、子供、幼児等である場合をいいます。

また、死亡事故の場合は、被害者の近親者も、被害者を亡くしたことにより精神的な苦痛を被ることが考えられますので、近親者固有の慰謝料も認められていますが、上記の基準額は、原則としてこの近親者慰謝料も含んだ金額となっています。

②後遺症慰謝料の相場

後遺症慰謝料は、後遺障害を負ったことによる精神的、肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

裁判基準で定められている後遺症慰謝料の相場は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のようになっています。

後遺障害等級1級の場合  2800万円
後遺障害等級2級の場合  2370万円
後遺障害等級3級の場合  1990万円
後遺障害等級4級の場合  1670万円
後遺障害等級5級の場合  1400万円
後遺障害等級6級の場合  1180万円
後遺障害等級7級の場合  1000万円
後遺障害等級8級の場合   830万円
後遺障害等級9級の場合   690万円
後遺障害等級10級の場合  550万円
後遺障害等級11級の場合  420万円
後遺障害等級12級の場合  290万円
後遺障害等級13級の場合  180万円
後遺障害等級14級の場合  110万円

③傷害慰謝料の相場

傷害慰謝料は、入通院慰謝料ともいい、交通事故でケガをして入院や通院を余儀なくされたことで被った精神的、肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

赤い本では、入通院慰謝料表が記載されていて、入院期間と通院期間が交差する部分の金額を目安としています。

(3)慰謝料が増額される場合

ご説明したとおり、裁判基準はあくまでも相場ですので、必ずこの金額になるというわけではなく、相場よりも高額な慰謝料が認められる場合もあります。

相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性のある事案は、大きくわけると、次の3つが挙げられます。

①被害者の精神的苦痛がより大きいと思えるような場合
②被害者側に特別な事情がある場合
③その他の損害賠償の項目を補完するような場合


①被害者側の精神的苦痛がより大きいと思われる場合

被害者の精神的苦痛が通常の事故に比べて大きいと思われる場合には、慰謝料が相場よりも増額される可能性があります。

具体例としては、事故が加害者の無免許、飲酒運転、著しいスピード違反、赤信号無視などの悪質な行為を原因としたものだったり、事故後に被害者を助けることなくひき逃げをしたり、事故後遺族に暴言を吐いたり、反省の態度がまったく見えないなどの事情があったりするような場合が挙げられます。

また、後遺症の場合は、障害の程度が重度で、被害者本人や、介護する親族の精神的負担が大きいと思われるような場合に、増額される傾向にあります。

裁判例には、以下のものがあります。

<死亡慰謝料の裁判例>
【裁判例①】大阪地方裁判所 平成25年3月25日判決
・死亡慰謝料額 4000万円(相場は2800万円)

・概要
被害者が30歳男性会社員の事案。

加害者は無免許で飲酒運転であったうえ、事故後逃走し、約2.9㎞も故意に被害者を引きずって死亡させていて、通常の交通事犯の範疇を超えて殺人罪に該当する極めて悪質かつ残酷なものであること、引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと、まだ30歳にして養育すべき妻、子を残して突然、命を奪われた無念さは察するに余りあること等の事情を考慮し、本人分3500万円、妻子各250万円、合計4000万円の死亡慰謝料を認めた。

【裁判例②】大阪地方裁判所 平成18年2月16日判決
・死亡慰謝料額 3900万円(相場は2000万円~2500万円)

・概要
被害者が17歳・男子高校生の事案。

加害者が免許停止処分後、長期間無免許状態で運転していたこと、飲酒運転が常態化し事故時も酩酊状態だったこと、同乗者の制止を無視して赤信号で交差点に進入したこと、衝突後、頭から大量の血を流して倒れている被害者に対して「危ないやないか」と怒鳴りつけ、持ち上げてゆすり、投げ捨てるように元に戻したこと等の事情を考慮し、本人分3000万円、父母各300万円、妹300万円、合計3900万円の死亡慰謝料を認めた。


【裁判例③】東京地方裁判所 平成15年7月24日判決
・死亡慰謝料額 3400万円(相場は2000万円~2500万円)

・概要
被害者が3歳と1歳の姉妹の事案。

加害者が飲酒運転で縁石にぶつかりながら蛇行するなどして、高速道路の料金所の職員から注意されても無視して運転を続け、サービスエリアで飲酒。

さらに、渋滞のために減速した被害車両に追突して炎上させ、車両に閉じ込められた姉妹を焼死させた等の事情を考慮し、本人分2600万円、父母各400万円、合計各3400万円の死亡慰謝料を認めた。


<後遺症慰謝料の裁判例>
【裁判例①】東京地方裁判所 平成15年8月28日判決
・後遺症慰謝料額 4000万円(後遺障害等級1級の相場は2800万円)

・概要
被害者は21歳の女性。

高次脳機能障害(1級3号)と1眼摘出(8級1号)により後遺障害等級併合1級の事案で、生死の境をさまよい6回の大手術を受けたこと、若くして重大な障害を負ったこと、外貌にも著しい醜状が残ったこと、両親の介護の精神的負担も重いこと等の事情を考慮し、本人分3200万円、父母各400万円の計4000万円の後遺症慰謝料を認めた。

【裁判例②】千葉地方裁判所佐倉支部 平成18年9月27日判決
・後遺症慰謝料額 3140万円(後遺障害等級1級の相場は2800万円)

・概要
被害者は37歳男性。

遷延性意識障害により後遺障害等級1級3号の事案で、症状が重篤であること、加害者が酒気帯びでスピード違反であったなど事故態様が悪質であったこと等の事情を考慮し、本人分3200万円、父母各300万円、合計3800万円の後遺症慰謝料を認めた。

【裁判例③】福岡地方裁判所 平成22年7月15日判決
・後遺症慰謝料額 3140万円(後遺障害等級2級の相場は2370万円)

・概要
被害者は19歳男子高校生。

高次脳機能障害により後遺障害等級2級1号の事案で、将来にわたり食事や入浴等の介護や、外出時等の監視や声かけを必要とすること等の事情を考慮し、本人分2500万円、父母各200万円、3人兄弟各80万円、合計3140万円の後遺症慰謝料を認めた。


②被害者側に特別な事情がある場合

被害者側に特別な事情があり、通常の事故に比べて精神的苦痛がより大きいと思われる場合、慰謝料が相場よりも増額される可能性があります。

具体例としては、被害者が女性で、事故による傷害のために人工妊娠中絶を余儀なくされたり、外貌醜状などの傷害によって婚約破棄されたり、将来の夢をあきらめざるをえなかったり、仕事を続けることができなくなったりした場合などがあります。

また、被害者の死亡や傷害によって、被害者の親族が精神疾患になってしまった場合なども慰謝料が増額される場合があります。

裁判例には、以下のものがあります。


【裁判例①】仙台地方裁判所 平成20年3月26日判決

・後遺症謝料額 1400万円(後遺障害等級6級の相場は1180万円)

・概要
被害者は早期退職して非常勤嘱託職員に転職した直後の55歳の男性。

高次脳機能障害(7級4号)、左鎖骨の変形傷害(12級5号)、左耳難聴(12級相当)、後遺障害等級併合6級の事案で、本格的に再就職することや、単身赴任のため別居していた家族との同居生活、趣味など、勤務先退職時の希望をほとんどすべてかなえられなくなったこと等の事情を考慮し、本人分1300万円、妻100万円、合計1400万円の後遺症慰謝料を認めた。

【裁判例②】大阪地方裁判所 平成17年1月31日判決
・後遺症慰謝料額 1200万円(後遺障害等級8級の相場は830万円)

・概要
被害者は19歳のアルバイトの女性。

人工肛門、骨盤骨変形等で後遺障害等級併合8級の事案で、女性でありながら生涯にわたり人工肛門を装着しなければならないこと、骨盤骨の変形により通常分娩が困難であること、腹部等に複数の醜状痕を残していること等の事情を考慮し、1200万円の後遺症慰謝料を認めた。

【裁判例③】名古屋地方裁判所 平成14年12月3日判決
・死亡謝料額 3000万円(死亡慰謝料の相場は2000万円~2500万円)

・概要
被害者が生後6ヵ月の男児の死亡事故。

被害者が不妊治療を受けてようやく生まれた子であること、ベビーカーに乗った子供が飛ばされて道路に投げ出される光景を目撃した母親がPTSDと診断され今後も治療を継続する必要があること等の事情を考慮し、本人分2100万円、父300万円、母600万円、合計3000万円の死亡慰謝料を認めた。

その他の損害賠償の項目を補完するような場合


その他の損害賠償の項目では、算定が困難なものを補完する意味合いで、慰謝料を増額することがあります。

たとえば、女優が顔に傷を負い、醜状障害で後遺障害等級が認定されたけれども後遺症逸失利益の算定が難しいような場合や、後遺障害等級は認められないけれども労働に影響がでると思われるケガをしている場合、また、将来手術を行う可能性があるが、現時点ではいつ行うのか、手術費用がいくらなのか等を算定できない場合や、その際の休業損害や逸失利益が算定できないような場合などに、逸失利益や休業損害等を認めない代わりに慰謝料を増額して、損害賠償額全体のバランスをとるような場合です。


以上、ご説明したように、相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性のある場合については、大まかなパターンはありますが、はっきりと類型化されているわけではなく、実際には具体的な事案ごとに判断されることになります。

ご自身や親族が被害者となったとき、慰謝料が増額される可能性が少しでもあるのであれば、たとえ最終的に認められる可能性が低いと思われたとしても、予備的にでも増額した金額を請求しておくことが大切です。

その際、ご自身の事情で慰謝料が増額される可能性があるのかどうかの判断はなかなか難しいと思いますので、ぜひ交通事故に詳しい弁護士等の専門家に相談してみてください。


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