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高次脳機能障害における常時介護と随時介護の違い

1 介護には、どんな種類があるか

介護には一般的に、身体介護として、食事介助、排泄介助、衣類の脱着介助、身体整容、入浴介助・清拭、洗面、 体位交換、移乗・移動介助、通院・外出介助、就寝・起床介助、生活援助として、掃除、洗濯、衣類の整理・補修、一般的な調理、 配膳・下膳、買い物、薬の受け取りなどがあります。

高次脳機能障害者に、同時に身体の麻痺等が場合には、 その障害の程度に応じて上記一般的な介護が必要となることもあります。

しかし、上記介護以外にも、看視、 声掛けのような従来の介護とは異なった態様の介護も必要となっています。

2 介護の要否と後遺障害等級

自賠責保険の後遺障害等級については、 第3級までの高次脳機能障害の等級認定は以下のような基準に従って判断されます。




【別表第1第1級1号】
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、 生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの




【別表第1第2級1号】
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。

身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、 家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの



【別表第2第3級3号】
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。

また声掛けや、 介助なしでも日常の動作を行える。

しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、 円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、 困難なもの




別表第2第3級3号が、「終身労務に服することができないもの」とされているように、上記3つのいずれの等級も、労働能力喪失率は100%とされています。ところが、保険金額は、別表第1第1級1号が4000万円、別表第1第2級1号が3000万円、別表第2第3級3号が2219万円と異なった金額となっています。

従来、自賠責保険では、後遺障害者に対する介護に要する費用が保険金支払いの対象外とされていました。そのため、たとえ介護が必要な後遺障害があっても、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」であれば、第1級3号として3000万円の保険金額、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」であれば、第2級3号として2590万円の保険金額が定められているのみでした。

しかし、平成12年6月28日の自賠責保険審議会答申において、「重度の後遺障害者の状況を踏まえれば、今後は介護に要する費用を保険金としても支払の対象とすべきである。」「また、その際には、介護を要する重度の後遺障害者に対し、逸失利益等については現行の保険金限度額を適用した上で、それとは別枠で介護に要する費用を支給することとし、それに係る限度額を設定すべきである。」などと指摘されていたことからも分かるように、遷延性意識障害のように介護が必要な障害が残存した場合には、従来の保険金額では到底自賠法の目的である「被害者の保護」を図ることができないと考えられるようになりました。


そこで、平成14年4月1日から施行された平成13年政令519号によって、介護を必要とする後遺障害に適用される別表1が新設され、後遺障害等級の表は、別表1と別表2の二つにわかれることとなりました。このように別表1が新設されたことによって、介護が必要な場合の自賠責保険金額を、常時介護の場合には4000万円、随時介護の場合には3000万円とそれぞれ引き上げられることとなったのです。

このように、高次脳機能障害において適用される別表第1第1級1号及び別表第1第2級1号と別表第2第3級3号との基本的な違いは、介護を要する後遺障害であるか否かということになります。


3 1級1号と2級1号の違い

上述のように、平成12年認定システムにおける報告書に示された「等級認定にあたっての考え方」によって、各等級の認定基準の補足説明はなされているものの、そもそも介護という言葉自体の曖昧さもあり、どのような介護態様によって第1級1号と第2級2号に分類されるかは慎重に検討されなければなりません。

ここで、重要な役割を果たすのは、自賠責保険が準拠する労災保険の基準ということになります。

平成15年8月8日基発第0808002号



【等級:第1級の3】
◯高次脳機能障害における障害等級認定の基準

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

・高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・ 更衣等に常時介護を要するもの
  又は
b 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、 常時監視を要するもの




【等級:第2級の2の2】
◯高次脳機能障害における障害等級認定の基準

・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

・高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの

a 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・ 更衣等に随時介護を要するもの
  又は
b 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、 頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
  又は
c 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、 外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの




上記のように、労災保険の基準によるとある程度詳細ないくつかの例示がなされている。

生命維持に必要な身のまわりの動作、ADL(Activities of Daily Life)である、食事・入浴・用便・ 更衣等に必要な介護が常時介護か随時介護かによって1級と2級が分かれることもあるし、高度の痴ほうや情意(感情と意志) が荒廃しており常時の監視が必要なのか、そこまでいかず障害にとどまるため随時の監視で足りるとして2級になることもある。 自宅内の日常生活動作が一応できれば常時介護は必要でないため1級とはならず、 1人での外出が困難で介護が必要となる場合には2級となることが分かる。

もっとも、このような常時介護と随時介護の違いはあくまで程度の問題であり、 明確に区別することはできない。

高次脳機能障害においては、身体の麻痺が併存することが多く、 そのような状態であれば介護の必要性がより増し、高い等級が認定される可能性が高くなることは当然であるが、結局、 精神症状等についての具体的所見や日常生活動作検査表、日常生活状況報告書、神経心理学的検査結果等を総合考慮して、 常時介護かあるいは随時介護で足りるのか判断することとなると思われる。


4 介護保険制度における要介護認定と自賠責等級との関係

介護保険制度においても、その介護状態に応じて以下のような仕組みで要介護度認定がなされます。

(介護保険制度における要介護認定の仕組み)


1 要介護認定とは

〇介護保険制度では、寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合や、 家事や身支度等の日常生活に支援が必要になった状態(要支援状態)になった場合に、介護サービスを受けることができる。

〇この要介護状態や要支援状態にあるかどうか、要介護状態にあるとすればどの程度かの判定を行うのが要介護認定であり、 保険者である市町村に設置される介護認定審査会で判定される。

〇要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める。


2 要介護認定の流れ(介護保険法27条)

〇介護認定審査会は、保険・医療・福祉の学識経験者より構成され、 高齢者の心身の状況調査及び主治医意見書に基づくコンピュータ判定の結果(一次判定) と主治医の意見書等に基づき審査判定を行う。


3 要介護認定基準について

要介護認定は、「介護の手間」を表す「ものさし」としての時間である「要介護認定等基準時間」を下記基準にあてはめ、さらに痴呆性高齢者の指標を加味して実施するもので、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年4月30日厚生省令第58号)」として定められている。


要介護認定等基準時間の分類

直接生活介助
入浴、排せつ、食事等の介護
間接生活介助
洗濯、掃除等の家事援助等
問題行動関連行為
徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
機能訓練関連行為
歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為
輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助


要介護認定等基準
要支援1
上記5分野の要介護認定等基準時間が25分以上32分未満 またはこれに相当する状態
要支援2
要支援状態の継続見込期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減または悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態、 またはこれに相当する状態
要介護1
上記5分野の要介護認定等基準時間が32分以上50分未満
またはこれに相当する状態(要支援2の状態を除く。)
要介護2
上記5分野の要介護認定等基準時間が50分以上70分未満
またはこれに相当する状態
要介護3
上記5分野の要介護認定等基準時間が70分以上90分未満
またはこれに相当する状態
要介護4
上記5分野の要介護認定等基準時間が90分以上110分未満
またはこれに相当する状態
要介護5
上記5分野の要介護認定等基準時間が110分
またはこれに相当する状態

介護保険制度は、年齢及び障害の原因によって給付対象者を制限しているため、 交通事故による後遺症によって上記基準に当てはまる要介護状態となった者が必ず要介護認定を受けられるわけではありません。

仮に交通事故の被害者が上記基準によって要介護認定を受けられる場合にも、 要介護度と自賠責等級との間には直接の関係はありません。

ただ、要介護度5と自賠1級とはだいたい対応し、また、要介護度5、4、3だと自賠責等級の1, 2級のどれかに当たる可能性はあります。

しかし、要介護度の2と1では、自賠法上の1, 2級とはなりにくいという意見があります(日本交通法学会編『交通法研究』第30号103頁)。

実際に、介護保険制度の要介護認定の申請がなされたが市町村の判断で非該当とされた事案において、 自賠責等級は1級の認定がなされ、裁判においても自賠法上の基準に則った損害賠償が認められた 。

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